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【Under Ground Online】  作者: 桐月悠里
1:Under Ground(意訳――目に見えない仄暗い世界)
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第四十九話:ライン草群生地

 


第四十九話:ライン草群生地




 肺を冷たい空気が侵す。痺れるほどの夜気を吸いこんで、ゆっくりと吐く。それを繰り返して前を見れば、鬱蒼と茂るライン草群生地の全貌が見えてくる。

 映画で見たトウモロコシ畑に似ているだろうか。どこまで行っても先が見えない茂みの中で、頭上を見れば尖った葉先が月光を反射して銀に光る。

 どこを見ても緑、緑、緑。一面の緑は方向感覚を麻痺させて、自分が今どこに居るのかを全力で覆い隠す。


 辛うじて記憶していた方向に3歩だけ歩み、茂みから出れば既に見慣れた面子が出迎える。不安そうな顔のルーさんに、不機嫌そうなあんらくさん。にやにやしているニコさんに、無表情のアンナさん。予想より真剣な表情で辺りを見ているフベさんと、ゴーグル越しに表情が見えない雪花。全員の顔を確認して、これは無謀だと思わず頷く。


「無茶です、バラバラに入ったら絶ッッッ対にはぐれます」


「あ、やっぱり?」


 特にこの自由な気風がある面子ではその確率は跳ね上がると頷けば、外から見てても無理そうだと思ったとルーさんが言う。

 群生地の上空をフィニーちゃんと共に飛んでみたが、てんでどこにいるのか分からないという。ライン草の背丈が高すぎるというのも理由だが、それ以上に思うよりも風が強くて草の動きが上空からではわからないと。


 確かにだんだん風が強くなっているような気がする。冷たい北風が時折吹き抜け、秋の風というには薄ら寒い。

 何か不吉な色を孕んだ夜のライン草群生地は、生き物を寄せ付けない余所余所しさがあった。生き物の気配は薄く、不気味な吠え声が響くだけで姿形は窺い知れない。

 ひとたび中に入ればどこから襲ってくるのかもわからず、誰が襲われたのかも、何に襲われたのかもわからないだろう。


「……肝試しに近いんですけど、どうします?」


「いやでも……何でも良いワケじゃないって思い知らされちゃったから……」


「ああ、そうですよねぇ……」


「適当に引っこ抜いて帰れば良いと思ったんだけどねぇ」


 問題は手前の草を引っこ抜いて帰ればいいというものでもない、ということだ。実は、ライン草群生地はここ等にいくつか点在しており、街の人達の定義としてはここら一帯、全部纏めて『薬師の墓場』と呼んでいるのだとか。


 薬師の墓場と呼ばれる所以は、薬師が一人前どころか、まず弟子入りを認めてもらう際の試練こそが、かの軟膏作りだかららしい。

 『平原震え白蜂』を下して薬効成分も持つ蜜蝋を採り。幻覚作用がある為にエアリスでは栽培が禁止されている『フクラ茸』を採る為に、『陸鰐』や『グルア』が潜む湿地に潜り。『ライン草の根』を手に入れるべく、点在する群生地――即ち死地へと、足を踏み込む。


 その為、蜂の巣が点在する谷が多く、フクラ茸が自生する湿地を孕み、更に合間合間にライン草群生地がちらほらと見られる、ここら周囲10キロ程度は、街の人曰く『薬師の墓場』。

 一般人は頼まれても立ち入らない、危ないフィールドであるらしい。勿論、抜け道はきちんと存在し、滅多に危険に晒されない代わりに、素材などというものは欠片も手に入らない安全ルートはあるようだ。


 しかしまあ安全であるが故に道以外の意味も価値もなく、薬師として材料集めをしているのなら、そんな道通るより死を覚悟でけもの道を行け、と言われるらしいが。

 そういった様々な事情が前提としてあった上で、街の人達の薬師への共通認識は『自殺志願者』だの、『自己犠牲精神』だのという例えが多いらしい。

 そこに内包される意味は半分は尊敬で、半分は呆れなんだとか。


「薬師って大変なんですね……」


「試練が厳しいのも、薬師があまりいない理由だとか。まあ、自力で材料を集められないのなら、薬師なんてなれませんしね」


 当然の試練なのかもしれません、とフベさんがにこやかに笑うものの、状況的にはちっとも笑える状況ではない。

 何故なら現状、自分達は薬師ではないものの、その軟膏の為の材料目当てで此処にいるからだ。


「……そもそも、群生地が出来るってことは栄養が豊富ってことですよね」


「そうですね、養分とか。どうです、ルーさん」


「それにしては土の状態とかは、そんなでもない。何を糧に成長しているのかが分からないな……」


 園芸が趣味だというルーさんが土の状態を見るも、そこまで肥沃な土地というわけでもないらしい。こうして群生地が出来、群生地でだけ根っこが肥大化したライン草があるというのだから、何かしらの栄養は豊富な筈なのだが。


「……栄養、あ、そういえば雪花、あれなんだっけ。魔術大全の前書きとか何とか言ってた」


「ああ、聞きます?」


「もっかいお願い、確か簡単にメモったけど純因子とか、因子とか……」


「“植物は因子のエネルギーを糧に、草食動物は植物が内包する純因子のエネルギーを糧に、肉食動物は草食動物が内包する純因子のエネルギーを糧にして生きている”」


 つらつらと、暗記しているらしい前書きとやらを諳んじる雪花に視線が集中する。雪花の言う所の意味を把握しようとそれぞれがメモを片手に、特にニコさんは空中に皆が見れるような巨大な図を作成する。


「『魔術大全』ですね。見習い研究者の“チアノーゼ”さんが掲示板で分かりやすく解説をしていた筈です、私個人で描いた図と共に抜粋します」


 そう言いながら空中に浮かぶ巨大なスクリーンに手を振れば、見る間にそこに文字と図が浮かび上がり、5、6年くらい前に発売された立体映像セットを思い出した。

 分かりやすく抜粋された掲示板の一連の流れが表示され、魔術大全とは一体何なのかを示し始める。






【情報掲示板:魔法系関連情報編】 (ご自由にお書きください)




 :ところで、誰か『魔術大全』読んで理解できた人いない? あれちょっと意味が分からないんだけど


 :あれは理系の人に任せるべき……なんだけど、でも魔術極めるなら読破&完全理解が必要っぽい。統括ギルドのお姉さんが言ってた


 :『魔術大全』って理系色なの? 自分魔法使いだから『魔法大全』はちまちまと読み進めてるけど、そんなでもないよ


 :言うほど理系ではない、が、素養は必要かも。アルクトッド通信で理科省いた奴は概念の理解が厳しい


 :何年生くらいのが必要?


 :中学か高校か……とりま物理とか計算とか出来なくても良いから、エネルギー系の基礎知識と、元素とかの基本が理解出来てると大分楽


 :結論、誰かわかりやすく教えて下さい


 :『魔法大全』は?


 :『魔法大全』は内容としては基本理論。魔法は魔術をパッケージングして、威力が下がったものの汎用性が増し、初心者でも難なく扱えることから戦争の時に便利だったとか、色々


 :意外と重要なこと書いてあるな


 :ほいほーい、『魔術大全』、で良いのかな? 『見習い研究者』のアタシ、“チアノーゼ”が解説すっるよーん


 :来た! 救世主!


 :“チアノーゼ”さん、こんばんは


 :こんばんはー、さて今回の講義は『魔術大全』! とりあえず今のところ、統括ギルドで1プレイヤーに1回限り、配布してもらえる系の書籍だよー


 :え、そうなの?


 :重いから、保管場所が無い内はチーム内で貰いに行く奴を決めるべき


 :分厚いんだよ……大全系書籍……


 解説中:はい、今回は内容を分かりやすくということで、まずはどの魔法系アビリティ持ちにも知っておいてもらいたい魔力の構造を、ざざっと解説しまーす


 :魔力の構造……だと?


 :魔力とはMPの事である、でしょ?


 :魔力ってもやみたいなあれでしょ? ファンタジーにおけるこう、目に見えない系の物質……


 :まさか魔法顕微鏡とかで覗いたら何か見えるとか……? まさかぁ……


 :これ、【あなたの知らない恐怖の毒達:追及スレ】の流れで見た


 :言うなよそういう事……


 解説中:はいはいただいまー。まずは魔力とは分子や原子のように構造を持ったエネルギー内包物質であることを理解しましょー。つまり、エネルギーが入った小さな袋が塊になっているイメージで、最初はオッケーです


 :……ん?


 お手伝い:補足で図をup


【画像データ:DNAの二重螺旋に酷似した、1魔力の拡大写真】


 :……何これ


 :どう見てもDNAです


 :うっ……拒否反応が……! 理系を呼べぇ!


 お手伝い:これが1魔力の拡大図。これで1セット、ステータス上の1魔力らしい


 解説中:いぇーす、そうそう。それが1魔力。図をよく見てねー、二重螺旋の中心に連なる球体が純因子、便宜上青く色を塗ってあるやつ。図は簡略図なので正確な純因子の数はわからないけれど、図だとまあ7個くらい? 複数あると考えてok


 お手伝い:真っ白だと分かりにくいと思って……(照)


 :わかりやすい、わかりやすい


 :図が無いとさっぱわからん


 :図があっても脳が拒否するんだけど


 解説中:んで、外側ね。実際に二重螺旋状に繋がっている球体が因子。これは白いやつね。それと、因子と純因子を繋いでいる一番ちっちゃい球体群が魔素。ここまではオッケーかな? 重要な単語は「魔素」・「因子」・「純因子」! この単語だけだったら、契約モンスターや街の人達から聞いてる人もいるんじゃないかなー


 :とりあえずなんとかわかる


 :名前的に「純因子」>「因子」>「魔素」かな? 位があるなら


 :まあ、最近のRPGでは出てきたりするよな、単語としては。……単語としては


 解説中:半分あってるよー。本当はもっと色々あるんだけど、簡単にそれぞれの物質の役割を説明しまーす。まずは「因子」から! 小難しく書いてある部分を、これでも噛み砕いて書き直しまーす。




 ・因子……因子とは「色」を持つエネルギーを内包した袋状の物質とされる。そのエネルギーは「原色」と呼ばれる色に変化することによって性質を変え、魔法現象として世界に顕現する。




 :先生! 何もかもわかりません!


 :もっと粉々に噛み砕いて説明して!


 :なんとなくわかるけど……うーん


 解説中:うんと……要するにぃ、この世界の魔法は自然現象ではなく、自然現象に限りなくよく似た魔力(因子)の塊、っていう風に言えば、とりあえずはわかる?


 :わかんな……ん? うん、まあわかるか


 :まあ、なるほど……


 :あー、【ファイア】で出てくる火は、本当の火ではなく、火の性質に限りなくよく似た状態の魔力、ってことですよね?


 解説中:とりあえずそれであってる。今日の目的は簡単な解説だから、これ以上掘り下げるとわかんない人出てきちゃうし。んで次に、この世界の魔法のポイントは「色」! これが少し難しいけど、皆は初めて魔法系スキルを発動したとき、【魔力可視化:Ⅰ】を取得してるよね?


 :したした。うっすい青


 :え、俺は緑だった


 :私は赤だったよ?


 :えっ、あれ色違うの?


 解説中:そう。それがヒント。「因子」とは様々な色を持つエネルギー。個人個人で魔力の色――まあ正確には因子の色なんだけど――は異なっていて、魔法系スキルはこの「色」を変えることで望む効果を得る力。

 属性はそれぞれ「原色」と呼ばれ、ある一定の決まった色(原色)に変換することで、アタシ達の魔力は自然現象のような性質を持つ――ok?


 :属性が「原色」ねぇ


 :これでも若干わかりにくいのに、もっと小難しく書いてあるんだろうなぁ『魔術大全』


 :フランクな口調で語りかけてくる本とか嫌だけどな


 解説中:因子はこれくらいで、次に「純因子」。少しだけ噛み砕いた文が以下。ほぼ原文。




 ・純因子……純因子とは高次のエネルギーを内包する袋状の物質とされる。高次のエネルギーそのものを純因子と呼び、その外側の部分を外殻と呼ぶ。

 純因子自体は色を持たず、変えもしない。「無色透明」のエネルギー体であるとされ、「色」の中で最も格が高い「色」である。

 純因子の内部エネルギーはその濃度ゆえに外部に漏れ出せば細胞を傷つける。魔術や魔法に威力があるのはこの為であり、自然界の物質に限りなくよく似た状態に変化する性質がある因子に、攻撃としての威力を持たせている。

 勿論、火の色の因子は火としての攻撃力は持つが、魔法的攻撃力は全てこの純因子の溶け込んでいる総量に依存する。




 :目がちかちかしてきた。噛み砕きよろ


 解説中:つまり、因子より濃いエネルギー。後、無色透明。結論:強い


 :わかりやすい


 :ばっちりです


 :次!


 解説中:はい次「魔素」! これは普通に読んでもわかると思うから、原文そのまま抜粋!




 ・魔素……魔素とは内部が空洞状の極小物体であり、結合枝けつごうしと呼ばれる突起を持ち、因子や純因子、魔素同士での結合が確認されている。構造は球体をしていて、6つの結合枝を持つ。

 特別な性質としては高い伝達性を持ち、因子や純因子が持つエネルギーを外に漏らさずに伝達する繋ぎとなる。

 魔素自身は何らエネルギーを持たない物体であり、完全なるエネルギー伝達物質である。




 :あ、これは分かるわ。つまりはただのチューブ的な?


 :なんとなく理解。後は自分で読んでみる


 :お疲れ様でしたー


 :でしたー


 :また何かあったら呼んでねー!






 自動でスクロールしていた動きが止まり、ふっと空気に溶けるようにスクリーンが消えていく。全員で何となく理解したような顔を見合わせてから、誰からともなく口を開いた。


「……つまり?」


「ライン草は、その因子……? を糧にって事だから……」


「ええと、つまりはその因子が豊富な土地ってわけで……」


「因子って空気中に浮かんでるの? 雪花」


 微妙に疑問符を浮かべながらのゆっくりとした会話をまとめ、雪花に必要な情報を聞こうと視線を向ければ、にっこりと笑みを浮かべながら頷く雪花。


「あるある。ついでに、ボスがいた竜脈には「因子」も「魔素」も、もっとたくさんあった筈」


「竜脈? ギリー、確か竜脈の魔素溜まりの上に、セーフティエリアが出来上がるって言ってたよね? 魔素が全然無いから踏み込めないとか」


「ほう、興味深いですね、それは」


『言ったが、私たちモンスターが言う魔素とは、先程の3つを複合したものだ。つまりは、セーフティーエリアの中には、本当にそれらのエネルギーが何も無いのだ』


「……うん? うーん……じゃあ質問を変えよう。土地や空気に「因子」が増える外的要因は何がある?」


『竜脈から漏れ出している分が多い、それだけだろう』


「竜脈から漏れ出している分が多い?」


 ギリーの言っていることを皆に伝えれば、ニコさんが少し考えた後にまた違う資料を表示する。

 スクリーンには三王についての、街の人の言。それぞれ、竜は生死を、獣は祝福を、精霊は創造を司る、と書かれている。


「これは、三王の役割についての言及です。街の人達によれば、この世界は精霊王が「因子」を生み出し、獣王が自ら生み出した「純因子」と結合、分解、それらの因子や純因子を、竜王が竜脈を使い世界に巡らせているとあります」


 ニコさんの解説に頷きながらフベさんが空中のスクリーンに手を伸ばし、解説を引き取りながら指先で図を指し示す。


「文献によれば、世界はこれにより安定して成り立っている、とある。このエネルギーの本命は、世界そのものの維持かもしれませんが、お零れくらいはあるでしょう。つまりは、これらのエネルギーを竜脈から植物が何かしらの方法で吸い上げ、それを元に食物連鎖が起きているようですね」


「へー……ていうことは、此処は何かしらの理由で、竜脈からの因子の供給量が多い土地、なんですかね」


「そうなると、探すべきは竜脈から漏れている大元か。たぶんその周辺に生えているライン草だけが、根っこの肥大化が起きているんだろうし」


 元々、因子が豊富な土地で、更に豊富なところとなればそれしかないだろう。竜脈から漏れ出している源泉が存在するのだ。それさえ見つけられれば、闇雲にライン草を引き抜いていく労力をかけずに済む。


「でも何を目印に……竜脈はだいぶ彷徨いましたけど、穴は開いてませんでしたよ?」


「そう? うーん、他に何か目印……泉が湧き出してるとか、何か大岩でもあるとか……」


 とりあえず、平地をいくら漁ってもダメな気はしない? というルーさんに、皆も唸りながら同意する。

 何かしら目印があるのならばそれを指針にすべきだし、何も無いなら虱潰しに引き抜いていくしかないだろう。


「……俺は、目印あると思うぜ。試練なんだろ? 試練っつーのは、越えられるから試練っていうんじゃねぇの?」


「ひっひっ、一理ありますねぇ。きっと目印はある筈です。草丈が高すぎて見えないだけで、恐らくは……」


 試練というからには越えられるものである筈だというあんらくさんに、ニコさんも同意する。問題はニコさんも言う通り草の背丈だ。最大で3メートル越えという大きさを誇るライン草は、大量の栄養を受けてすくすくと育ったらしい。

 見事に草丈は3メートルに迫り、目印なんて見せねーよとばかりにとんがった葉先を銀色に光らせている。


 ああ、いっそ半分まで刈り取ってしまえば……という考えが脳裏をよぎり、そうしてはたと思いつく。

 そういえば、自分は魔術師ではないか。別に草刈り鎌片手に、刈り取り作業をする必要なんて欠片も無い――


「――燃やしましょうか」


「え?」


「んん?」


「……」


 ぼそりと呟いた言葉に皆が顔を上げ、こちらを注視する視線を感じてから自分の発言の問題にはたと気が付く。


「間違えました――刈りましょう」


「あ、ああ……」


「わぁ、良いですねそれ」


「出来るんですかぁ?」


「上7割くらい、雪花と一緒に刈り取るんで、その上で何も無かったら根元まで燃やしましょう」


「狛ちゃん……躊躇が無くなってきてない?」


「ルーさん、目的の為には手段は選んでいられませんよ?」


「……いいや、刈ろう。そうだね、刃物でも刈れるしね!」


 プチ、自棄になっているらしいルーさんが剣を引き抜き、あんらくさんもそれに倣う。雪花に目配せをすれば雪花も無言で剣を引き抜き、刀身に手を当てながら風の魔術の詠唱を開始する。

 自分もまたライン草の茂みに向き直り、詠唱文を表示する。ざわざわとざわめく草地。どこかから獣の声が響き、やけに冷たい風が頬を掠めて吹き去っていく。

 静かに、詠唱を開始した。





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