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一話目

4限目の授業が終わり、登校途中で買った菓子パンを持って、俺は屋上へ向かった。

屋上には誰もいない。

ついさっきまでの喧騒が嘘のように収まって、ようやく俺は息を吐いた。

壁に背中を預けて座り込んで、菓子パンの袋を開けたところで、扉が開く音がした。

開くとともに、中の騒がしい声達の塊が押し寄せて、すぐにまた収まった。

扉を開けた主はやはり今日も息を切らして、お弁当を抱えていた。

「やっほ。来ましたよー、先輩」

凛としていてよく通る声は、聴き心地のいい高いAA()の音がした。

さっきまでいなかった風が彼女のスカートを揺らした。

「こんなところに来ないでクラスメイトと仲良くお昼を過ごしたほうがいいと思うぞ」

n回目の言葉。

社交辞令だと思われているようだが、本心だ。

毎回毎回心を込めて結構本気で言っている。

「あはは、もう遅いですよ。この時期になるとグループがある程度できちゃってますから」

「そうならないために、ずっと忠告していたんだけどな」

「まぁまぁ。もう過ぎてしまったことは仕方ありませんし、これからは心置きなくここに来れますよ」

そんな釈然としないことを言って、俺の隣に影一個ぶんの隙間を空けて座った。

「先輩、今日も菓子パンですか?よければ私の分けてあげましょうか?」

そう言いながら、お弁当箱を開いた。

彩り豊かなその中身は、出来立てでないにも関わらず生き生きとしていてとても美味しそうで、絵に描いたような理想のお弁当だった。

もう少しで頷くところだった。

「いや、遠慮しておくよ。そもそも、大してお腹が減っていない」

これもn回目の言葉。

しかし、日に日に勢いが弱くなってきている気がする。

ご飯の上に寄りかかるように座ったたこさんウィンナーは血色のいい赤色で、今にも動き出しそうだ。

「ま、そうですよね」

そう言って、俺の視線を知ってか知らでか、たこさんウィンナーを摘まんで口に放り込んだ。

残された片割れは相変わらず呑気な顔をしている。

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