初めは誰でもできるって勘違いする
神座が笑いながら「じゃあな〜」と食堂を去って行った後、卓が食堂にやって来た。
そして二人と合流した卓の突発的な提案により、誰がカレーを奢るかジャンケンになった。
カレーは一人前三百スズであり、三人前で九百スズだ。
「くっそぉ…」
天明は泣く泣く金を払った。一番自信ありげだったのにもかかわらず、一人負けである。
そんなカレーを飲み物のような速さで食べ終わった天明は、卓のカレーに手を出していた。
それを受けて卓はXのカレーに手を出している。Xだけが得をしないサイクルの出来上がりだ。
(こいつら、失礼にも程があるな…)
「X、ちゃんと食べないと力出ないだあよ」
(お前のせいだよ)
Xは脳内でそう突っ込みながらも、「そういえば」とスプーンを皿の端に置いた。
「神座って奴、卓も知っているか?すごい良い奴で俺に協力してくれる…」
「か、神座!?」
卓はカレーを喉に詰まらせてゴホゴホと噎せ始めた。
「おい、卓どうしたんだよそんな焦って」
天明は卓に水を差し出すと、卓はそれを飲み干した。
そして口から水を垂らしたままXの肩を掴んだ。
「神座は、駄目だあよ!!
…神座は男も堕とすクズ男なんだあよ!!」
天明は「確かにあいつは俺に勝てないし…」と意味不明なことを呟き出し、卓はそこじゃない、という冷たい視線を送った。
「え?」
Xはキョトンとしたまま卓に口を拭けとティッシュを渡す。しかし卓は自分の服の袖でゴシゴシと口を拭った。まだ全て拭けていないが。
「Xは馬鹿狸二号なところがあるから、天明に惚れて…成人向けコースになっちゃうだあよ!」
いやらしい妄想が三人の頭上に現れる。
天明は「きもいな」と一言放ち、Xは顔を赤らめて「なんだこれ!」と叫んだ。
「あれ、Xと卓ちゃんだ〜」
「え、なんで…だあよ…」
卓がギギギと音を立てて振り返ると、黒い笑顔を浮かべた神座がいた。先程食堂を出たはずなのに…、と卓が言う前に、卓の目の前に拳が振り下ろされた。
°・*:.。.☆°・*:.。.☆°・*:.。.☆
「……そこまでしなくても、良かったんじゃ…」
Xは気まずそうに笑いながら卓の顔を見た。
卓はまんじゅうのような腫れた顔で残りのカレーを咀嚼している。
X、卓、天明の順番で並んでいるが、Xの隣には神座が座ってニコニコと痛そうにカレーを頬張る卓を見つめている。
天明は遠くから神座に「勝負勝負」と吠えている。
「卓ちゃん、君にはその腫れた顔がお似合いだよ」
卓が神座を睨んで無視を貫く。そうすれば天明は「酷いじゃないか♡」と言いながら長い指で卓の腫れた赤い部分をつついた。
「ぎゃぁーーー!!!痛い!痛いだあよ!!」
神座はXにニコニコと微笑みかけた。
「X、明日は俺が基本天術を教えてあげるよ」
「え、でも卓が…」
Xが横目で卓を見ると、神座は卓に「良いよね?」と黒い笑みを浮かべた。
卓は真顔で感情もクソも無い顔でコクコクと頷く。
「はい文句ないですXをどうぞよろしくお願いします」
「卓??」
Xが卓を見ると、卓はなんとも言えない顔で笑っていた。
「X、GOOD LUCK」
Xは知らない。自分がどんな可能性を秘めているかということに。




