カレーは絶対2日目!
天明と勝負のゴール地点である食堂はかなり広く、数十個の円卓やテーブルが置かれている。
多くの戦士が座って食を楽しんでいたり、スマホを充電しながら作業をしているようだ。あちらこちらから食器がぶつかり合う音と笑い声がよく響いている。
「おっす天明―と新人?」
突然知らない男が天明の前にヌルリと現れた。
メガネをかけて黒髪を三つ編み。唐装とよく似た服を着ており、手足がスっと長く伸びている。
(胡散臭い顔…)
Xは失礼ながらにそう思った。
「神座こいつは新人で新人じゃねえよ」
天明はXの首に腕を巻いてニッと笑った。その顔はどこかしてやったりという怪しげな笑みが浮かんでいる。
神座はメガネを上げて「ほう?」と納得しきれない困惑した表情を浮かべると、天明はでかい声で言った。
「こいつはXだぜ!しかも俺のチームメイト!」
・・・。
「はあ?」
神座は片眉を釣り上げて鼻で笑った。
「あり得ないな。お前ついに頭イカれたんじゃないのか?
なあ、新人。お前がXなわけないよな」
神座は腰に手を当てて親指で天明を指した。
馬鹿にするような笑い方に、天明は青筋を浮かべ、小声で「この野郎…」と呟いている。
「俺は…Xだけど」
Xがそう言うと、食堂全体が静かに染まった。
「え?X?」
「八十年間目覚めなかったあの?なんで急に」
「やだかっこいいじゃない…!」
「チームってどういうこと?あと一人は…」
食堂にいる戦士全員が途端にざわつき始めた。
様々なところから食器やスプーンを落とす音があちらこちらで聞こえる。
反対に、天明は俯いて乾いた笑みを浮かべたあと、神座の胸板辺りをとんっと人差し指でつついた。
「悪ぃな。先にチームを組んだのは俺だったみてぇだ」
神座がピキっと顔に青筋を浮かべた。
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後に卓から聞いたが、神座と天明は犬猿の仲らしく、どちらが先にチームを組めるかと競っていたらしい。
そしてその勝負は天明の勝利となった。
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神座に喧嘩を売り満足した天明は「カレー食おうぜ」とXの腕を引き、神座を追い越した。
すれ違いざまに見えた三つ編みは綺麗に腰あたりまで編まれていて、神座の器用さをXは感じた。
神座は「Xねぇ…」と口に手を当てて呟いたあと、喉で小さく笑いをあげた。
ガバッ。
「わっ」
「なー、俺ら仲良くなろうぜ」
神座は突然Xの腕を掴んでいた天明の手を叩き落とした。そしてXが困惑する時間も与えず、一方的に肩を組んだ。
「俺、神座。教えてやれるもんはなぁんでも教えてやるぜ」
Xより背の高い神座は、Xを見下ろした。Xが神座を見上げると、歪に上がった口角とメガネの内側にある眼球が綺麗に見えた。
「ほ、本当に…!?」
Xは顔を明るくして笑った。
神座はそんなXを見た。
その瞳には、何とも言えないドロリとした膜が張っている。しかし神座は、それを隠すように目を思い切り細めた。
上がった口の端から鋭い八重歯が見え隠れしている。
「ホントホント〜!!」
神座は鼻と鼻がぶつかりそうな距離まで近づいて言った。
Xはそんなこと気にせず、ただ(この人赤ちゃんみたいな良い匂いするな…)と頭の隅で考えた。
「で、何に困ってんの?天明じゃなくて俺に相談してよ〜!」
「あ…お、俺さ、三週間後に基本天術を四条までマスターして、さらに専用天術会得をしなくちゃいけなくて…」
Xが困ったように眉を下げて目を逸らすと、神座は無理やり顔をずらしてXと目線を合わせた。
「なぁんだ、簡単だぜそんなの!俺に任せとけ、な!」
「本当に!?ありがとう神座」
Xは心底感謝したように歯を見せて笑った。
「イイよイイよ」と神座は猫のように目を細めたあと、Xの後ろにいる天明を見た。
神座はXの肩を組む力を強めて、組んでいる方の手で天明に中指を立てた。




