棒付きの飴の方が特別感あるよな
カァカァとカラスが頭上で鳴き、チーム片喰はそれぞれの浮き出た木の幹に腰を下ろしていた。
ジリジリと照りついていた太陽も、もう沈み始めていて三人の顔に影を差している。
「三週間後…って何日後だあよ?天明」
卓は頬杖をつきながら天明に問いかけた。視線はどこか真っすぐ遠くを見つめているが、天明は卓のその声をキャッチした。
「二十一日後だな」
そう言ってしばらく、空白すら息をしない時間が続いた。
聞こえるのはカラスの声と、風で木が揺れる音だけ。
「はあああ」
風が止んで無音になった時、三人は打ち合わせでもしていたかのように一斉にため息をついて俯いた。
蟻が列を作って歩く様子を三人は見つめ、たまに木の枝でちょっかいをかける。
「基本天術を四条マスターするのに、私は二年近くかかっただあよ」
「俺は専用天術作ったの三年前だぜ、三週間の猶予で作れるもんじゃない」
二人は「ちら」とXを見た。
「…言っとくけど、それを同時にマスターする俺の方がハードだからな」
二人のじっとりとした視線を浴び、Xは一言主張した。
(そもそも、二人が俺のことをどう思っているのか知らないが、クリームブリュレとやらを餌にまんまと引っかかった二人が悪い)…とXは考え、たらりと汗を垂らした。
二人は夕暮れのオレンジ色の空を見上げてヨダレを垂らしている。こいつら、目の焦点すら定まっていない。
「っ、こんなことずっとやってたって仕方ないだろ!」
Xは立ち上がり、見上げる二人の手を無理やり掴んで持ち上げた。「うがあ」とか「うぇぇ」という呻き声が聞こえるが、お構いなしだ。勝手に呻いとけ。
「俺らはチームなんだから、協力し合わないといけないんだぞ、自覚もてよ自覚!」
その言葉に、卓は顔を上げてXを見た。
(確かに、Xの言うことに一理あるだあよ。生まれたてのバブがいきなり天術だとか色々言われても分からないことだらけなはず…)
卓は途端に自分の行動が恥ずかしくなった。
「確かにそうだあね。お前の言う通り、あんな態度取って悪かっただあよ」
卓は眉を下げて微笑んだ。
「確かにな。俺も悪かった、ごめん」
Xは思わずたじろいだ。そこまでやれとは言っていない。
謝罪なんてむず痒いことしないでくれよ、と思ったが、Xは謝罪を素直に受け取ることにした。
「別に、分かればいい」とXが言うと、卓は子供を見るような慈愛に満ちた表情になった。そして「うん」と頷く。
「私がXに教えるのは『基本天術』だあよ」
「急に説明始めるじゃん…。まあいいけど、基本天術って何なんだよ」
「基本天術とは、専用天術と違って戦士全員が使える全部で十九条の天術だあよ」
卓は指で四の数を示し、それをXに向ける。
「専用天術は基本天術を四条マスターしないと会得できないんだあよ」
そういうことか、とXは納得すると共に三週間という短い期間に酷ささえ感じた。
自分の体力と二人の教育が全てということだろう。
卓は拾った木の棒で地面に文字を書き始めた。
・まずは天術を四条までマスターする。
・専用天術を会得する。
「この二つを三週間徹底的にやるんだあよ。
そのためには、まず食事、睡眠、娯楽の三つをバランスよくしっかり摂る」
その時、ふんわりとカレーライスの匂いが漂ってきた。
ぐぅ、とXは思わずお腹を鳴らす。
「ここは本部の裏側だからな。近い換気扇から飯の匂いがするんだろ。よし、X食堂まで勝負だ!」
勝負だ、と言い終わらないうちに天明は走り出した。
空は暗くなり、虫がそろそろ鳴き始めるだろう。
(こういうのも、悪くないだあよ)
卓は手を後ろに組んで子供っぽく、しかし無意識に手遊びをした。




