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『億り人だった私、老後資金が底をつく前に異世界を救います』 〜今日も散財して召喚しまくってます〜  作者: talina
第五章

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第46話 交錯する思惑

 フロストリアの最深部。


 氷の柱が林立する神殿跡。


 凍てついた床に、淡い光が走る。


 その中心に立つ男。


 黒崎。


 ――いや。


 この世界での名は、黒騎士アークレイン。



「揺らぎ始めました」


 背後から声がする。


 白衣の女術者。


 氷の魔法陣を維持している。


 宙に浮かぶ水鏡には、ひかりの記憶が映っていた。


 黒崎の姿。

 老婦人。

 いちご農園。


 黒騎士アークレインは静かにそれを見つめる。


「礼を言う」


 声は穏やか。


「ですが、完全に固定できていません。違和感を抱いてます――」


「問題ない」


「彼女は自分で結論を選ぶ」


 その表情からは、いかなる感情も読みとれなかった。



「タリナ王国へ向かった者たちが帰還します」


 術者が魔法陣を解いて言う。


「早いな」


 黒騎士アークレインは呟く。


 そして――


「頃合いだ。戻るぞ」


 水鏡に、ひかりの姿。


 氷の地で膝をつき、頭を押さえている。


 葛藤。迷い。違和感。


 それこそが鍵。


「彼女は守る側を選ぶと言った……」


 黒騎士アークレインは静かに姿を消した。



 氷の神殿に別の気配が現れる。


「……計算外だな」


 白い仮面の男は小さく呟く。

  

 だがすぐに、微笑へ変わる。


「いや。むしろ好都合か」


 守ろうとする者。


 守られた記憶。


 守ると誓った女。


 守りたい対象が増えるほど、失う痛みは強くなる。


 白い仮面の男は、静かな瞳で魔法陣の跡を見る。


 仮面の奥の目が冷たく光る。


「未来の地球は、争いを止めようとして滅んだ」


「抑圧は爆発を生む。ならば、制御された争いを与える」


 そのための、異世界召喚。


 そのための、ひかり。



 水鏡の中。


 ひかりが立ち上がる。


 小さな炎を灯す。


 守る側になると誓った炎。


 神谷はそれを見つめていた。


「そうだ、円城寺さん」


 懐かしい呼び方。


「君は正しい」


 優しい声。


「だが正しさは、必ず誰かを傷つける」



 氷の塔の上で、新たな氷の魔法陣が強く輝いた。


 フロストリアの空に黒い亀裂が走る。


「もうすぐだ」


 神谷が呟く。


「彼女は正しい選択をする」



 一方。


「……ひかりさん、戻ってきて」


 ひよりの必死の声。


 その声が、わずかに届く。


 水鏡の中で、神谷の目が細くなる。


「邪魔が入るか」


 だが焦りはない。


 計画は進んでいる。


 黒騎士アークレイン、白い仮面の男、そして神谷。


 三人のそれぞれの思惑が交錯し始めた。

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