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『億り人だった私、老後資金が底をつく前に異世界を救います』 〜今日も散財して召喚しまくってます〜  作者: talina
第三章

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第24話 魔王、降臨と女子会?

 草原の風が、ひかりたちの濡れた髪をやさしく揺らしていた。


 ――そしてもうひとつ、はためいているものがあった。


 バスタオルである。


 それも、非常に心もとない感じで。


 目の前には小さな角の生えた女魔王。

 髪から少しだけ出たそれが、美しさと可愛らしさを際立たせていた。


 そして、容姿からは想像もつかない圧倒的な魔力と威圧感。


「……随分とハレンチな格好をしておるの」


「好きでしてるわけじゃありません!!」


 ひかりが顔を真っ赤にして答える。


「処刑されるところだったんですけど!? 人権どこ!?」


「お主は魔王に対しても敬意と畏怖がないのう」


「魔王ならもっと早く助けなさいよ! このヘタレ!!」


 ぴしっ、と空気が凍った。


 つむぎが「あ」と小さく声を漏らす。


 魔王のこめかみに青筋が浮いた。


「へ、ヘタ……?」


 低い声。


「許さん」


 ぱちん、と指が鳴る。


 次の瞬間。


 ひかりとつむぎのバスタオルが、すっ…と消えた。


「きゃあああっ!?」


「なにするの!?」


 二人は同時にしゃがみ込む。


 魔王は腕を組み、ふんと鼻を鳴らした。


「魔王を愚弄するなと言ったのじゃ。その布切れは処刑場に戻してやった」


 ――その頃、処刑場。


「な、なんだこのタオル!?」


「あいつらが巻いてたやつじゃないか!?」


「……いい匂いがする……」


「バカ!!悪魔に支配されるぞ!!」


 年配の清掃人が後輩の後頭部をはたく。


 処刑執行者たちは軽くパニックになっていたが、それはさておき。


 再び草原。


「次はお前たちを、裸のままあの場に戻してやろう。辱めを受けながら業火で焼かれて死ぬがよい」


 魔王の背後に、赤黒い魔法陣が浮かぶ。


 ひかりは光の速さで大地に両手をついた。


「ごめんなさい魔王さま!!! 私が悪かったです!!!!」


 地面に額をこすりつける勢いである。


「お主は学習能力がないのう……毎回謝れば許されると思ったら大間違いじゃ!」


「今回は本気の謝罪です!! 誠意見せますから!!」


「誠意とは」


 ひかりは、ちらっとつむぎを見る。


 つむぎは、こくんと頷く。


「魔王さま!」


「なんじゃ」


「いちご大福、みんなで食べませんか?」


 魔王の魔法陣がピタッと止まった。


「……ほう?」


 つむぎが両手を広げる。


 空間がゆらぎ、ぽんっとログハウスが出現した。


 草原ど真ん中にログハウス。


「……寒いよ。服、出すね」


 つむぎが追加で衣類を取り出す。


 ひかりは光速で着替えた。


「ありがとう……!」


 ログハウスの中。


 木のテーブル。

 湯気の立つ急須。

 そして皿の上には――


「ほほう……」


 魔王が椅子に座り、真顔で見つめている。


「相変わらず美味そうじゃの」


「和菓子綾瀬(あやせ)のいちご大福です」


 つむぎがお茶を注ぐ。


 ふわりと緑茶の香りが広がる。


 魔王はそっと大福を持ち上げ、一口。


 もぐ。


 止まる。


 数秒の沈黙。


「……うまい」


 ぽつり。


「うまいのじゃ……!」


 目がキラキラし始めた。


「甘味と酸味の調和! この柔らかな餅! この緑茶とやらともよく合うではないか!?」


「最高の組み合わせです」


 つむぎも一口食べた。


「うわぁ、確かに美味しい!」


「他のお店のとは、全然違いますね!上品な味なのに…しっかり美味しい!ほのかに甘い香りが鼻腔をくすぐります!」


 大絶賛。


「もう一個よいか」


「どうぞどうぞ!」


 魔王は二個目を大事そうに食べ、緑茶を啜り、ふぅっと、満足げに息を吐いた。


「……許す」


「やったあああ!!」


「ちょろいな魔王!?」


「聞こえておるぞ」


 ひかりは慌てて口を押さえる。


 魔王はふっと表情を緩めた。


「……まったく。調子が狂うわ」


「助けてくれたんですよね?」


「うむ。あの処刑魔法、威力だけは本物じゃからな」


 魔王の目が少しだけ真剣になる。


「……世界の均衡が崩れ始めておる」


「急にシリアス?」


「甘味の後は真面目な話と決まっておる」


 そんな決まりはない。


「お主らが巻き込まれたのは偶然ではない」


 魔王はひかりを見る。


 静かに、優しく。


「ルーメリアを消滅させたのは……わらわではない……お主も関わりのある人物じゃ」


「?」


「今はまだ言えぬ」


 魔王は最後の一口を食べ、湯のみを置いた。


「じゃが、いずれ世界の在り方が大きく変わる」


 ひかりはため息をついた。


「処刑からの魔王からの世界の命運って、人生ハードモードすぎません?」


「安心せい」


 魔王はにやりと笑う。


「いちご大福を献上する限り、わらわは味方じゃ」


「和菓子外交!!」


 つむぎは嬉しそうに笑った。


「魔王さま、またいらして下さいね」


「うむ!」


「女子会みたいで楽しかったです!」


 つむぎが笑顔全開で言った。


「女子会とな?」


「女の子だけで集まって、食事やお茶をしながら会話を楽しむことです!」


「ふむ。よかろう。また、女子会に来てやろう」


 こうして。


 女魔王リリアス・ヴェルキューレとの世界の命運を左右するかもしれない重大な同盟が、いちご大福二個で締結されたのだった。


———


 ピロリン。


【talina銀行アプリ】


 前回残高

 12,830,900円


 今回使用額

 3,000円


 現在残高

 12,827,900円


〈使用内訳〉

・和菓子綾瀬(あやせ)のいちご大福

 500円 ×6個=3,000円


 わずか3,000円の和菓子外交、たぶん……歴史書には載らない。

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