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『億り人だった私、老後資金が底をつく前に異世界を救います』 〜今日も散財して召喚しまくってます〜  作者: talina
第三章

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第二十三話 国家反逆者

 王城地下牢の廊下に、重たい足音が響いていた。


「やれやれ……嫌な仕事だぜ」


 年配の男が鼻をつまみながらぼやく。


「もう(ひと)月だろ? そりゃあ凄いことになってるはずだ」


 後ろを歩く若い清掃人が青ざめた顔で頷いた。


「先輩……僕、こういうの初めてで……トラウマになりそうです」


「慣れだ慣れ。高い金もらってんだ、文句言うな」


 鉄扉の前に立つ。


【国家反逆者】の文字が木製のプレートに刻まれ扉に打ち込まれている。

 その下に但し書きがあった。

【危険思想者につき何人も近寄るべからず】


 若い清掃人はそれを読み、身震いした。

「先輩……国家反逆者って、どんな奴なんでしょうね」

 

「醜い奴に決まっている。さっさと死体を片付けて、今日は酒を飲むぞ!」


 鍵が回る。

 重たい扉が軋みながら開いた。


 二人は――固まった。


「……は?」


 異臭がない。


 どころか、ほんのりと石鹸の匂いがする。


 牢の奥では、湯気がゆらゆらと立ちのぼっていた。


 そこにあったのは、場違いなほど清潔なユニットバス。


 湯船から顔を出したひかりが、目を丸くする。


「え?」


 次の瞬間、状況を理解して真っ赤になった。


「ちょ、ちょっと待って待って待って!!!」


 ばしゃっとお湯の音。


 慌てて肩まで沈み、腕で前を隠す。


 床に置いてあったタオルを取ろうとして滑り、しゃがみ込む。


「み、見られた……」


 湯気の向こうで、つむぎは首をかしげていた。


「どうしたの?」


 きょとん、と。


 清掃人の若者がぽつりと呟く。


「……きれいだ……」


 だが次の瞬間、二人の表情が恐怖に凍りついた。


「……なんで生きてる?」


 (ひと)月だ。

 水も食事も与えられていないはず。


 なのに肌は健康的で、やつれもない。


 異臭も、汚れも、死臭もない。


「悪魔だ……」


 後輩が震える。


「人間じゃない……」


「逃げるぞ!!」


 二人は扉を開け放ったまま、悲鳴を上げて廊下を駆けていった。


 静寂が戻る。


 湯船の中でひかりは顔を両手で覆った。


「終わった……社会的に終わった……」


「?」


 つむぎはのんびり湯をすくっている。


「お風呂、気持ちいいね」


「そういう問題じゃなぁい!」



■ 十分後


 完全武装の兵士たちが地下牢を包囲していた。


「出てこい!! 悪魔ども!!」


「いやいやいや誤解!!」


 バスタオル姿のひかりが両手を上げる。


 つむぎも同じくタオルにくるまっていた。


「処刑だ!!」


「話し合おう!?」


 問答無用で連行された。



■ 王都・処刑場


 四方を高い石壁に囲まれた公開処刑場。


 中央の柱に、ひかりとつむぎはバスタオル姿のまま縛りつけられていた。


 魔法兵団が円陣を組む。


「最期に言い残すことはあるか」


 冷たい声。


 ひかりは苦笑する。


「あるけど、聞いてくれないでしょ?」


 返事はない。


 詠唱が始まる。


 空気が震え、魔力が集束していく。


 その時だった。


「待て!!」


 場内に響いた怒声。


 ヴァルド将軍だった。


 視線は、つむぎに向いている。


「その娘は……」


 言葉が詰まる。


 だが遅かった。


「放て!!」


 閃光が爆ぜた。


 轟音。


 光が二人を包み込む。


 次の瞬間――


 そこには、何も残っていなかった。


「……消えた?」


 兵士たちがざわめく。


 ヴァルドは唇を震わせ、呟いた。


「ミリア……」



■ 見知らぬ草原


 風が草を揺らしている。


「……あれ?」


 ひかりはゆっくり目を開けた。


「ここ……天国?」


 隣でつむぎも起き上がる。


「痛くない」


 空は青く、空気は暖かい。


 処刑場の気配はどこにもない。


「死んだのかな、私たち」


「そうではないぞ」


 低く、よく通る声。


 二人が顔を上げる。


 逆光の中、腕を組んで仁王立ちする女がいた。


 長い黒髪。

 角。

 圧倒的な魔力の気配。


 堂々たる存在感。


「久しいの、レバベアの娘」


 不敵な笑み。


「わらわの顔を忘れたか?」


 ひかりはぽかんと口を開けた。


「……どちら様?」


 女はこめかみに青筋を浮かべた。


「魔王じゃ!!」


 草原に、ツッコミの声が響いた。

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