放課後③
「この本、捨てちゃうんですか?」兄ちゃんが本山先生に尋ねた。
「うん、見ての通りところどころ敗れてしまっているし、ページも落ちそうだからね。」
「確かに見づらい部分はあるけど、まだ結構読めるし面白そうなのに。」紬が本をめくりながら言う。
「内容的にもね…」本山先生が珍しくお茶を濁すようにつぶやいた。
「え?…安倍晴明が道真を封印した…のかな?それは事実じゃないんですか?」僕は思わず尋ねた。
「まさか。道真様が清明に敗れるわけないよ。君たちも知ってのとおり道真様は学問の神様としてもあがめられるくらい賢く学問に精通した御方で、死後もその力は衰えることなくむしろ増していっているんだ。それを清明ごときが封印できるだなんて書かれては…」いつになく饒舌に話していた本山先生が、慌てて口をつぐんだ。普段の落ち着いた様子とは打って変わって興奮する本山先生にぎょっとして目を見張る俺たち3人の様子が、やっと目に入ったという様子だった。
本山先生は、誤魔化すようにうつむき加減でメガネを押し上げると、いつもの微笑みを取り戻して言った。
「失礼、最近その辺のことについて調べていたからつい興奮してしまってね。勉強の邪魔をして申し訳なかった。奥のいつもの席は空いているよ。3人とも、結人さん塾、頑張って。ああ、そうだ結人君、もし勉強の間に少し時間が空くようだったら、資料室に来て手伝ってほしいんだけどどう?さっきのみたいな片づけたい本がいくつかあってね。」
「わかりました。こいつらに教えるところがひと段落したら手伝いに行きます。」
「助かるよ。僕は先に行っているからね。」
「先生、私たちもお手伝いしましょうか?」紬がカウンター内で作業をしている先生に声をかけた。
「高橋さんは、まずは中間を乗り越えるために全力を尽くしましょうね。去年の学年末試験、ちょっとまずかったんでしょ?」
先生に穏やかに微笑まれ、はーい、と紬はばつが悪そうに返事をした。




