朝②
「お邪魔しまーす!楽人、結人さん!おはよ!」という大声のあいさつとともに、幼馴染の紬がリビングの入口に立っていた。
俺と変わらない背丈に、俺と兄ちゃんと同じ、紺のシャツを着てチェックのリボンを付けている。シャツと同色系のリボンと同じのスカートは校則通り膝丈に揃えられており、更に濃い濃紺のソックスが見えている。
つややかな黒髪はポニーテールにまとめられ、制服と同じ青のリボンが飾られている。
「紬 、おはよ…てか、勝手に入るなよ…」と思わず僕が言うと、紬は
「いいじゃん、せっかく3人とも幼馴染で学校も同じで、私と楽人は同じ“結人さん塾”の生徒なんだから。一緒に行こうよ。ね、結人さん。」と紬は兄ちゃんのほうを見て言った。
紬も俺と同じく兄ちゃんに勉強を教えてもらっている。(紬曰く、“結人さん塾”だ。)
兄ちゃんは紬の畳み掛けるような勢いに苦笑した。
「そうそう、ってことでそろそろ支度しな、楽人。」
はーい、と言いかけながら目を背けた先のテレビから、臨時ニュースを知らせるチャイムが鳴った。
「速報です。昨夜未明、帝都大学構内に不審な落雷があったと近隣住民から通報がありました。近くでは二人の死亡が確認されており、警察は落雷との関係性を含めて事件の真相を追っています…」
アナウンサーの声とともに映し出されたのは有名大学と思しき構内の、地面一帯に広がる焼け焦げた跡。
「なんだこれ、ひどいな…」兄ちゃんがつぶやく。
でも、なんだか見覚えのあるような…なんだ、この感覚。
「ほら、遅刻するぞ。」キッチンから兄ちゃんの声がかかってはっと我に返る。
「待ってったら。…と、ごちそうさま。」
食器に手を合わせて、支度を急いですませている間に、いつの間にかリビングのソファへ移動した紬が兄ちゃんの右手の包帯を変えていた。
「けが、なかなか治らないね。半年くらい経たない?」と紬が包帯を変えながら兄ちゃんに質問した。
「もうそのくらいになるか。まあ病院行くのも面倒だし、バスケにも支障はないし、徐々に治まってきてはいるから。紬は優しいな。」と紬の頭を撫でた。紬は顔を真っ赤にする。
僕はため息をつきながら立ったまま、リビングとつづく和室に置いてある母さんの仏壇に前で手を合わせて、行ってきます、といつものようにつぶやいた。そして、
「ほら、二人とも、遅刻しちゃうんでしょ、早く行こう。」と声をかけて玄関を出た。




