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悪霊①

身を切る寒さがすっかり影を潜め、春の穏やかな暖かさもすっかり馴染んだ静かな夜。


東京都某所にある大学の警備員室。夜勤の警備員の男が、自然に開きそうになる口元をこらえながら見回りの準備をしていた。警棒を腰に携え、帽子を被り、懐中電灯を手に取る。


昨年入職したばかりの男だが、ほとんど事件や事故がない、せいぜい夜中に騒いだり、構内に入ろうとしたりする大学生を注意する程度だと日々喜びとともに実感していた。

風雨にさらされながら外に立たねばならない辛さや、ほとんど防寒設備のない警備室での真冬の警備時間の厳しさにさえ慣れてしまえば、本当に楽な仕事である。


「さて…」


準備を整えた警備員がふと窓から空を見上げたその瞬間、視界の端を白い何かがすばやく通ったような感覚を覚えた。

直後、警備員は気付いた。通過したのではない。光ったのだ。


これまで経験にないほど近くに、大きな落雷が光ったことを頭で理解するやいなや、轟音が響き渡った。体を震わせる衝撃とともに。明らかに雷のそれだった。


「雷…?雨も降っていないのに…」


警備員は雷が落ちたと思しき方向へ急いだ。


「この辺だったと思うけど…」


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