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厄災のアイテム鑑定士  作者: 色々大佐


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第四話 ギフテッド

 スキル。人間の持っている能力がある段階を超えると到達出来る一種の異能。

 訓練や経験によってそれらスキルを手に入れる人間もいれば、生まれつき持っている人間もいる。そして、ギフテッドとは前者である。生まれつきのスキルを持ちの人間達の事をギフテッドと呼んだ。


「ギフテッド?」

「はいそうです」

「ふーん、聞いたことはあるけど見るのは初めてだわ」


 リーンがじろじろとテオルドを見ている。


「で、鑑定とか言ったけどあんた何が出来んのよ。それがわからないと今後も付き合うかどうか決められないんだけど」


 リーンは頭を切り替えていた。細かいことは置いとくとして、探索者として商売上付き合えるかを判断する。


「まず、呪具の類の解呪に、探索で見つけたアイテムの用途の解明。あとは探索で見つけたアイテム以外でも鑑定してほしい物があれば受け付けますよ」

「で、それらを頼むとして、お金はどれくらい払えばいいの」

「時価です」


 時価、店主の気まぐれで決める物から素材の価値の変動の幅の大きさで決める物まで、多種多様な理由で求められるそれは、珍しい物ではあるが、必ずしも道理から外れているわけではない。変動の幅が大きい品物に対してはどうしても時価にしなければならないのだ。では、テオルドの場合はどうか? 完全に店主の気分である。


「例えば、ある少女が親の遺品を鑑定してくれと言って来たことがあります。なけなしのお小遣いを手に、これが自分の全財産だからと、泣き顔でそう言ってきました。ただ問題なのはちょうどその日、コーヒーを自分の服にこぼしてしまって機嫌が悪かったので、十万ゴールド程掛かるから、それでは全然足りないと帰らせたことがあります」

「道理ね」


 子供だろうが何だろうが可愛さや悲惨さ程度で同情など買えると思うな。野生の世界では猛獣はまず、動けない赤子や未熟な子供から狙うものだ。わざわざ他人に弱みを見せるその子供の未熟さと無謀さにリーンが怒りを覚える。


「ですが逆に、八時間ほどぐっすり熟睡して気分よく散歩してご機嫌な時に同じ少女から同じように再び依頼された時は、特別に無料で鑑定してあげました。秋晴れの中でとても気分よかったです」

「下種が……」


 そこで冷たく突き放し、子供に他人とは情の介在せぬ冷たいやり取りが基本だと教えるべきだった。社会を生き抜くために必要となるだろう基礎の部分を無暗に壊すとは、まともな大人のやる事ではない。


「というわけで、私は基本的にその時の気分で値段を変えます。払えないと思ったら日を改めれば安かったりするかもしれませんよ」

「ふん、大体わかったわ」


 要は道理も弁えぬクズが、その日の気分で全て決めているという事か。リーンのテオルドに対する評価が著しく下がった。


「まあいいわ、性格は最低だけど能力はありそうだし、これから知らないアイテムを見つけたら持ってきてあげる」

「ではよろしくおねがいします。ああそれと今後の付き合いも兼ねて一つだけサービスしますとリーンさん、あなたの付けているその緑色の指輪なんですが、その指輪に向かってデルタと呟いてください。二十四時間に一度だけですが回復魔法が発動します」


 迷宮で見つけたこの指輪は、真ん中に小さな緑色の宝石が嵌められた指輪だ。奇麗だから身に着けていただけなのだが、そんな利用価値なんて本当にあるのかとリーンは思う。


「……デルタ」


 物は試しにとそう呟くと、指輪から小さな光が発してリーンの体を包み込んだ。そうすると、体にあった小さな切り傷や擦り傷達が無くなっていくのがわかった。


「へえ……」


 なるほど、利用価値は確かにありそうだ。テオルドという札は切り札にもなりえる。リーンは頭の中で冷たく計算機を弾いた。


「それでどうしますか、お金さえ払ってくれるなら今日は遅いですし部屋の一つでも貸しますが」


 テオルドに背を向けながらリーンは言った。

「いやいらない、隠れ家もなくなったし、ついでに新しい住処の一つでも見つけてくる。じゃあこれからも良い取引が出来ることを祈ってるわ」


 そう言ってリーンは店から出て行った。

 テオルドとしても、まあ今日は色々あったが新しい取引先もできたし金も儲けたしと気分よくその日を終えた。


 そうして、二日、三日と経過して一週間ほどたったある日のことだ。

 今日も適当に客のいない店の中でテオルド暇つぶしをしてると、店の扉が勢いよく開かれた。


 そこにいたのはリーンだった。彼女はあることを頼む為にここへとやってきた。

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