第13話 白い人
~白い人~
花には最初、それが白い粘土の塊に見えた。
しかし、その白いモノはぐにゃぐにゃとうごめき、いびつな形で地面に転がっている。
花はその様子を見て、小さい頃に秋とテレビでみたクレイアニメのようだ、と思った。
直はその白い塊から視線を外さず、片手をあげ、花に「動くな」と無言で伝えた。
すると、その白い塊から四本の触手のようなものが生えた。それは次第に太く長くなっていき、徐々に手足のようになっていく。
「う、わわ…」と、思わず花が声をもらす。
白い塊は、首こそ無いものの、もはや人のような形になっていた。その白い人?は猫背の姿勢で両手をだらりとぶら下げている。ついには指もできてきた。
「な、な、なに…あれ…?」
花は直に小声で問いかける。
「わかんねえよ…」
ずっと黙っていた直がやっと言葉を発するが、明らかにこんらんしている。それもそうだろう。自分の視線の先には得体のまるで知れない白いものがぐにゃぐにゃ動いているのだ。この状況を頭の中でどう処理すればいいのかわからない。
首の無い白い人は、気づけば一心不乱に屈伸をしていた。
「え、え、ちょっと・・・何かしてるよ」
「うげぇ・・・あれ、何の意味があるんだよ」
二人がぼそぼそとささやき合っていると、次にその白い人は腕や肩のストレッチを始めた。
「わわ、なんでなんで…?」
「うおぉ・・・気持ちわりい。動きに人間味があるのが余計にきついぞ」
「あれ…今度はアキレス腱のばし始めたよ」
「あいつ、頭おかしいんじゃねえのか?」
「・・・・そ、その頭がないんだけど」
花がそう言った瞬間だった。まるでその言葉に反応したかのように、ぼこん、と白い人の肩の間から新しく丸い塊が生えてきた。それはちょうど頭の部分にあたる位置で、その塊はぐにぐにと次第に人の顔の形に整っていく。
「わわわわわ…」
「うえええええ?」
二人は予想外の事態にパニック状態になる。
白い人は新しく生えた首をごきごきと動かす。そして踊るかのように全身の関節部分を曲げたり、ゆらしたりし始めた。
「なおくん、はやく、にげよう」
花がロボットのような口調でつぶやいた。
「お、おう」
直もなんとか返事をした。
しかし、そうは言ったものの二人の足が全く動かない。まるで磁石でくっついてしまったかのように足が地面から離れないのだ。
すると、最初からこちらの存在に気づいていたかのように、白い人がゆっくりとこちらを見た。そして、花たちと思いきり目を合わせる。
とはいっても白い人には目が無く、眼球があるはずの場所には、ドクロのようなくぼみがあるだけだった。
「ま、ず、い」
直が小さくうめいた。
白い人は頭をぼりぼりとかく。
すると、それは唐突に、こちらに向かって猛スピードで走り出した。その瞬間、二人はあの白い人が、なぜストレッチをしていたかを理解した。
「うわあああああああ!!」
二人は同時に叫び声を上げた。それがきっかけで、二人の足が地面から離れた。
花たちは急いで降りたばかりの中央階段をまた駆け上がる。
なんだかよくわからないけど、あれに捕まったら絶対にまずい気がする。きっと100人に聞いたら100人がそう答えるはず。
花の体はふわふわとして、走っている実感がない。まるで雲の上を走っているかのように、地面を蹴って進んでいる感触がないのだ。まるで夢の中にいるような気分だった。もちろん悪夢だけど。
しかし、花は激しく混乱していても、自分が息を切らしている呼吸音だけはなぜか鮮明に聞こえていた。とにかく、今は直の背中を必死に追うしかない。
――もう、どうなってるの!
次回は本日23時に更新です。夜更かしさんは読んでください。




