婚約者が浮気をしたので即別れることにしたら、溺愛されることになりました。
――――パアァァァン!!
軽やかな音楽が流れる夜会の会場に、平手打ちの良い音が響き渡った。
「……え」
先日、婚約したばかりのニール・イーデンは、いきなり頬を叩かれたことに呆然として、表情をなくしていた。
「信じられないわ!! 私のことを、好きだと言ったくせに……!! もう金輪際、話し掛けて来ないで!」
「っ……」
談笑していた私の婚約者の頬をいきなり張った金髪碧眼のご令嬢は、ふんっと鼻息も高らかにくるりと振り返って出口へと去って行った。
あら。
あの彼女は私には見覚えのない方だわ……どちらの家の方なのかしら。
幼い頃から貴族同士で交流していて、顔を覚えている私にも見覚えがないなんて。
いえ……彼女のことなど、どうでも良いのだわ。
私にとって大事なのは、今ここにある光景よ。
「ニール。あの方って、どちらの家の方なの?」
「しっ……知らない……」
私は腰に置かれていたニールの手を、さりげなく外した。その後、触れていた場所をぽんぽんと払うような仕草をしたら、彼の目には傷ついた光。
あら……まあ。もしかして、ニールは私のことが、まだ好き……ということかしら。
では、どうして、あのご令嬢に『好き』なんて言ったの?
「まあ。ニール……もしかして、名前も知らない方に、好きだと仰ったの?」
私は婚約者であるニールの顔を見た。その時、彼は非常に焦った表情が浮かんでいて、その頬にはくっきりした赤い手形がある。
ニールは黒髪に凜々しい顔立ち、爽やかな水色の目も素敵で……彼と婚約出来た時には、とても嬉しかった。
……ええ。嬉しかったわ。
「言っていない……ジェマ。本当だ。信じてくれ」
『どうか信じてくれ』と言わんばかりの表情を浮かべた整った顔。先ほどの彼女が赤い手形を付けた左頬とは違う右頬に、私はペチンと手を置いた。
「私は二人同時に愛せるような方と、一緒になるつもりなどありません。私たちは婚約したばかりですが、今は公示されたばかり。お父様に言って、取り消すことにしましょう。今なら傷が浅く済みますわ」
「ジェマ」
名前を呼んだ切なそうな顔を見て、私は絆されそうになった。
だって、ついさっきまで、彼と結婚すると思っていたのよ……いいえ。結婚したいと思って婚約したわ。
……駄目よ。ジェマ。
女好きで浮気性の嘘つき男に、人生を台無しにされて、不幸に堕ちたお母様のようになりたいの。
「ニール。ごめんなさい……貴方は本当に素敵な方だから、私ではない人と幸せになって」
私はにっこり微笑んで、最後の挨拶にカーテシーをした。
彼の姿を確認することなく、くるりと振り返って歩き出した。
男性の浮気は、許すべきなのか?
許すべきではないのか?
……いいえ。
私の答えは……こんな事があったのだから、今すぐに離れるべき。
一度裏切った男は、延々裏切り続けるさまを、私は見続けていたのだから。
◇◆◇
「はーあっ……」
婚約者に別れを告げた私は、城中にある塔の上で、夜空を見上げていた。
馬車に向かうよりも先に、とにかく、早くひと気のない場所に行きたかった。
けれど……すぐに邸へと帰るべきだったのかもしれない。
星空を見ていた視界が歪んだと思ったら、涙が止まらなくなってしまった。
「うっ……ううっ……ニールっ……ひどいわ……」
ニールと初めて会った時、本当に素敵な人だと思った。
目立つ整った顔立ちに撫で付けた黒髪は、同年代の男性たちより数段大人っぽく見えた。
けれど、彼はイーデン伯爵家跡継ぎの嫡男。いまだ婚約者の居ない貴族令嬢たちにも人気の男性で、周りを囲まれていて、なかなか話掛ける機会もなかった。
これでは話は出来ないだろうと諦めて、私が帰ろうとした時、不意に声を掛けられたのだ。
「失礼。僕はニール・イーデン。良ければ、お名前をお聞きしても……?」
「あ。私はジェマ……ジェマ・オルセンです。イーデン様……」
先ほど位置を確認した時は、かなり距離が離れていたはずなのに、彼は長い足を使い素早く近くまで来ていたようだった。
「ここで見送れば、二度と会えなくなってしまうかもしれないと思い……突然、すみません」
「いえ! ……いいえ。イーデン様」
……そんな訳はなかった。
本来なら結婚適齢期の私は、なかなか良き求婚者が現れず、少しでも結婚出来る確率を増やそうと出会いを求めて夜会に来ていた。
私のお父様オルセン男爵は、女癖の悪い放蕩者として知られ、お母様はいつも泣いていた。
だから、そんな両親を持つ私も、配偶者選びには異常に慎重になってしまっていた。
少しでも悪い部分が見えてしまうと、どうしても我慢出来ずに誘いを断ってしまうからだ。
こうして出会った時には、王子様のように素敵に見えたニールだって、きっと、そうなるかもしれないと恐れていた……けれど、婚約するまでそうならなかった。
――――だから、私は間違えてしまった。
◇◆◇
「はーあ……男なんて……男なんて、皆同じよ。皆お父様と同じような、クズ男ばかり……守れない約束ならば、最初からしなければ良いのに」
ひとしきり泣いた後に、私は投げやりな気分になっていた。
私は女癖の悪い、クズなお父様を見て育った。
お父様の浮気をした言い訳は、立派なものだ。お酒に負けてしまった、つい魔が差してしまった、確かに一夜は過ごしたが、愛しているのはお前だけだ。
嘘ばっかり……もし、お母様を心から愛しているのならば、浮気なんて絶対にしないはずよ。
だから、私はニールの言い訳なんて、聞きたくもなかった。
その女性を愛しているのならば、浮気なんてするはずもない。私は幼い頃から、そう思って生きて来たのだから。
……ああ。会場で配られていたお酒を、もっともっと飲めば良かったかもしれない。
婚約者に裏切られたのよ。とても正気でなんて居られない。
ニールのことを、好きだった。
……確かに、好きだったけど、結婚前に浮気する男なんかと結婚したくない。
これは、私の嘘偽りのない気持ちだった。
もう一度求婚者を探したりという面倒はあったとしても、これだけは絶対に引き下がりたくない。
私は……一度でも浮気した人となんて、結婚したり、しない。
これは、ニールにも婚約する前に宣言したことだ。
引き下がらない……絶対によ。
不意にひゅうと吹いた夜風を受けて、塀の隙間から見下ろせば、そこには痴話喧嘩をしているように言い合う男女が二人。
男性側がどうにか手を引いても、女性はなにやら違う方向に行きたがっているようだ。
しかし、様子は親しげで女性の拒絶も激しいものではなく、近くに立って居る護衛騎士を呼ぼうとはしていない。そういう関係だろうと護衛騎士だって知らんぷりをしているようだ。
つまりは、特に犯罪などの可能性がない、恋人関係にある男女の言い争いということだろう。
私はそんな光景をまじまじと見て、目を疑ってしまった。
よくよく見てみると、男性側はさっき私が別れを告げたはずのニールだった。そして、女性はなんと……会場で彼に平手打ちをした、あの女性ではない。
では、あの女性は……一体、誰だというの?
……待って。嘘でしょう。
ついさっきまで婚約者だったニール・イーデンは、なんと、二人だけでなく、三人の女性を同時進行していたらしい。
ニールと……婚約したのは、私だった。
ということは、本命の女性は私だったということ?
それを、有り難がれということ……なの?
……信じられない。
お前と結婚するのだから浮気を許せなんて、まっぴらごめんよ。お金があろうが容姿が良かろうが、そんな男は、こちらからごめんだわ。
心の奥底から煮えたぎるような熱い怒りが、ふつふつとこみ上げて来た。
さっきは突然のことで、ニールに別れを告げて去った。
あんな人が大勢居る場所で言い合いになるなんて避けたかったし、そしてなにより突然過ぎて、事態の大きさを把握出来ていなかったというのが大きかった。
けれど……二人目ならまだしも、三人目ですって? あまりにもふざけているわ。ニール・イーデン。
すっくと立ち上がった私はドレスの裾を持ち、塔の階段を降り始めた。
ここまで来たら、面と向かって言ってやるわ。周囲から見てみっともないなんて、今の私にはどうでも良いもの。
――――最低男、二度と私に近寄らないで! って。
づかづかと歩いていた私は塔を降りて、二人が言い合っている場所まで来た。
二人は未だ手を繋いでいて、行く方向に揉めているらしい……どこの休憩室でお楽しみになるのか、悩んでいらっしゃるのかしら……?
……最低。
「ニール!」
覚悟を決めて彼の名を呼んだ私を、ニールは驚きの表情で見た。
美しい青い瞳は驚き、見開いていた。
その時、私の胸にズキンと鋭い痛みが走った。
……この人はもう、私の婚約者ではない。
もう、この人は別れてしまった後の人なんだって、そういう胸を突き刺す長い針のような事実が痛すぎて。
「ジェマ! ああ。帰っていなかったのか。良かった!」
え……良かった?
その時、私はこの場面で聞くはずのない言葉を聞いて、眉を寄せてしまった。
なんですって? どういうこと?
まるで、ここで私に会うことを望んで居たように思えたけれど……修羅場になるしかないというのに、一体これはどういうことなの?
それに、二人が手を繋いでいるように見えたというのは、単なる見間違いだったようでニールは彼女の手首を持っている。
まるで無理矢理、連行されるかのような……どう考えても、仲良くしているようには見えない。
何かしら? これって、どういう状況なの……?
「もうっ……! 離しなさいよ! ニール!」
そして、ここに居る栗色の巻き毛をした令嬢は、大きく身体を動かしてニールが掴んで居た手を振り払った。
「メアリー。お前……今回ばかりは、絶対に許さないからな。お前がジェマとジェマの両親に説明するんだ。どうしてあんなことをしたんだ」
ニールが怒鳴った時、少々、背筋に寒いものが通り抜けてしまった。穏やかなはずの彼の本気の怒りを、そこに感じてしまったからだ。
私がこれまでに一度も聞いたことのない、ドスの利いたニールの低い声。
「もう! ニール! いい加減にしてよ。あの人と駄目になったのなら、私と結婚してって、言ったでしょう?」
「それは絶対にしないと言っただろう。だからと言って、僕と関係のありそうな女性を仕込んで、ジェマとの仲を裂こうなんて、何を考えたらそんなことになるんだ。あまりにも酷すぎる」
……え?
「だって! 私の知らないところで、ニールが結婚するなんて、絶対に許せないわ!」
「僕はお前の所有物ではない。何回同じことを言ったらわかるんだ。メアリー……だから、そういう訳なんだ。ジェマ。この子は僕の幼馴染みで、僕と結婚すると言って聞かなかったんだが……僕はジェマと結婚したいんだ。先ほどの女性はメアリーが仕込んだ女性で、僕は本当に話したこともない知らない女性だった」
必死で言いつのるニール。その右頬には、くっきりとした赤い手の痕。
「あの……ごめんなさい。混乱して……その」
ニールの言葉が、うまく理解出来ない。
……あの時、ニールは『あの女性のことは知らない』と言った。
それを、ろくろくに聞かずに、どうせ嘘だろうと決めつけたのは……他ならぬ、私だった。
「ニール!」
「わかるよ……ごめん。僕も君に早くこのメアリーのことを、話さないといけないとわかりつつも、怖がらせたくなくて言えなかったんだ」
近付いて来たニールは私の顔を覗き込んで、説明してくれていた。
……うそ。ここで私は謝らないといけないのに、彼は悪くないってわかったのに。
もう、なんだか、胸がいっぱいで、言葉にならない……。
あれって、嘘だったのね。仕掛けられていた罠だったんだわ!
「怖がるって、何よ……しっつれいね」
メアリーさんはニールの右腕を引っ張りながら、私のことを睨み付けていた。
「メアリー。もう僕に二度と構わないでくれ。僕はジェマと結婚する。何をしても無駄だ」
「嫌よ!」
まったく引き下がる様子のない彼女の金切り声が聞こえてきた時、私の中にあった何かが切れた。
――――パァン!
「っ……いったい。何すんのよ!」
「……ジェマ?」
メアリーはいきなり私の平手打ちを受けて痛みに目を見開いたし、ニールは驚いて私の名前を呼んだ。
私はメアリーの顔をじっと見つめたまま、彼女に言葉を返した。
「お返ししたの。ニールの頬を知らない女性に張らせたでしょう? こんな……幼稚な手で、ニールが貴女と結婚したくなるなんて、どうしても思えないけど」
「なんですって!」
「ニールのことをそれほどまでに好きなことは、私にもわかったわ。けれど、こんなことをしていて、彼に好かれるとでも? ……残念ながら、ニールは私と結婚するの。私と彼の仲を裂こうとしてももう無理よ! 私が貴女の存在を知ったもの……二度と誤解なんてしないわ。残念でした」
「なっ……」
メアリーはここで私が反撃するなんて、思わなかったのかもしれない。呆気に取られた顔をしていた。
「……その通りだ。メアリー。もう僕に近寄らないでくれ。迷惑だ」
ニールはうんざりした様子で言い、彼女は悲しそうに顔を歪ませた後、身を翻し去って行った。
「ニール……ごめんなさい。貴方は彼女のことを知らないって言ったのに」
あの時、私がニールの話を聞いていたら、これはすぐに解決出来た話だったのだ。
……なのに私はすぐ、別れると告げた。ニールの言葉だって、聞くこともなく。
どうしても女癖の悪いお父様のことが頭によぎってしまって、我慢出来なかった……ニールは私のことを大事にしてくれていたし、疑われるようなことを今まで一度もしなかったのに。
私が……ニールを信じて、彼の話をちゃんと聞いていれば……。
「良いんだ。本当にごめん。ジェマ。君からはご両親の話を聞いていたから、誤解してしまっても無理はない。それに、あの時は僕も何が起こったかわからなかったんだ」
ニールは私の頬に手を伸ばしたので、私は彼の赤くなった頬に手を伸ばした。
……信じられない。
ニールは何も悪くないわ。私と婚約しただけで、こんな目に遭ってしまうなんて。
「……そうよね。いきなり見知らぬ女性から頬を張られたら、そう思ってしまうと思うわ」
私が彼の言葉に頷けば、ニールははあと大きなため息をついた。
「それで、とにかく落ちついて、よくよく考えたんだ。ジェマの家庭環境については……正直、知っている者も多い。そんな君の前で、あのように僕の浮気を匂わせるような何かを仕掛けて来る人間……それで、得する人間を考えたんだ」
「……それが、メアリー?」
それで、ニールは夜会会場に居た仕掛け人メアリーを探し出し、私の前に連れて行こうとしていたのね。
彼と彼女がもみ合っていた事情を知り、私はため息をついた。
ニールがこれまでに彼女に、どれだけ迷惑を掛けられていたのかも。
「そうだ。彼女は僕と結婚したいと言い続けていて……嫌だと言っても、聞いてくれなくて。本当にうんざりしていた」
「……今まで、大変だったわね」
私はニールの赤くなった頬を指でなぞった。夜目でもわかるくらいに赤い。
叩かれた時、相当痛かったと思う。
あのご令嬢は、おそらく貴族ではなくメアリーの雇った役者だったから、私も知らない顔だったのね……なんだか、もう本当に信じられない。
「ジェマ。ごめん。君はこういう修羅場が、苦手だろう。これもメアリーを抑え切れなかった、僕の責任だ」
「いいえ……ニールは何も悪くないわ。悪くないのに……痛かったでしょう」
赤くなっている。ここまで赤くなるなんて、信じられない。
「これは……まったく、痛くない」
「え?」
「君に軽く叩かれた右頬の方が、よほど痛かった……痛すぎて、別れましょうと言われた時に、何も言えなかった。それに、今夜を逃せばすぐに婚約は解消されてしまい、会えなくなると思って焦ったよ。だから、犯人のメアリーを連れて、オルセン男爵邸へ行こうと思って居たんだ。誤解を解くには今夜しかないと」
「ニール」
私は何も言えなくなった。
ニールと別れなければならないと思った時、私は本当に辛かった。けれど、浮気者と一緒に居れば、それが一生続くのだ。
お母様のようには、絶対になりたくなかったから。
「ジェマ。君を愛している」
「ニール。私もよ」
私たちはぎゅうっと強い力で、抱き合った。唇を合わせてから、もう一度抱き合った。
ああ……あの時、すぐに帰らなくて良かった。
それに、メアリーの存在も、まったく知らなかった。知らなかったのよ……いえ。
「……あの、ニール」
「何?」
「少しだけ、気になったのだけどメアリーのこと以外、私に隠して居ることはない?」
私はニールの青色の瞳を、じっと見つめた。
これは、なんとなく、聞いて見ただけで……確証なんて、ある訳なくて。
女の勘が働いたというのが、正しいのかもしれない。
ニールははあっと、大きくため息をついた。
「実は、メアリーには双子の妹たちが居て、その子たちも僕と結婚したいと言っている。こんなこと、君に言いたくなかった。結婚するには、面倒な男だと思われるかと」
やっぱり……そうよね。
ニールは本当に素敵だもの。共に育ってきた女性が彼を好きになってしまうことは、容易に想像ができるわ。
「面倒だなんて、思わないわ……それ以外には?」
ここできっちり二人の間に隠し事はなしにしようと思い、彼に確認するとニールは困った顔をして微笑んだ。
「実はメアリー以外にも、僕のことを病的に好きな何人かは思いつくけれど……僕が好きなのは、君だけだから。どうか、安心して欲しい」
「まあ……それって、浮気男が良く言う言葉よ」
それは、お父様が良くお母様に言っていた。
思わず大きく息を吐いて、渋い表情を浮かべた私にニールは困った顔になった。
「ごめん。僕も女性ならこんな男は、嫌だと思う。けど、浮気なんて絶対にしたこともないよ。ジェマ以外に好きだと言ったこともないから」
ニールみたいに素敵な男性と付き合えば、こうなってしまうことはわかっていたのに、それを選んだのは私なのだ。
こうなることを選んだのは、私。選択肢はいくつもあったはずなのに、ニールを選んだのは私よ。
そうね。私がついつい彼を疑ってしまう気持ちを収めれば……彼とは上手く連れ添っていけるなら、譲歩するべきなのよ。
ニールの浮気現場を見た訳ではないもの。
母は父を愛していた。何度も何度も浮気をされて泣いても許していた。
結婚後、豹変したのかというと、そうでもなくて、わかっていて結婚したのよ。
それって、父を愛していないと出来ないことなのよ。
そういう意味で、私はニールがたくさんの女性に病的に愛されていても、彼と結婚したいって思うわ。
「信じるわ。ニール……これからは、ちゃんと貴方の言い訳も聞く事にする。話す前から別れるなんて、もう言わないわ」
「ありがとう。ジェマ。僕は実はメアリーたちのことを知られてしまうのが、怖かった」
……確かに、メアリーはニールに並々ならぬ執着を持っているようだった。
けれど、確実に、これだけは言えるわ。
世界で一番にニール・イーデンを愛しているし、彼のことを幸せに出来るのも私だもの。
彼のことは、誰にも、絶対に渡さないわよ。
Fin
お読み頂きまして、ありがとうございました。
もし良かったら、最後に評価していただけましたら幸いです。
また、別の作品でもお会いできたら嬉しいです。
待鳥園子