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虚言

「ガンガンガン」


 低く、国中に響き渡る冷たい金属音、アルベールからすれば気に求めぬ些細な出来事だったが、住民達にとっては驚天動地の出来事だった。


住民達の中で迸っていた熱は金属の波の衝撃とともにスッと抜け、氷点下にまでテンションを突き落とした。


「なんだ?」


 状況を掴めないアルベールが戸惑っていると、住民達は一斉に中央広場の方へ向かった。


「迎えが来たのね」


 戸惑うアルベールの背後から、冷めたような口調でレナが言い放つ。


「なんのだ?」


 アルベールはあえて気づかないフリした。住民達の顔、店主が言っていた言葉、そして一一今のレナの一言。そのすべてがアルベールの脳裏にちらつく。


「まだわからないの?……生贄として捧げられるのよ。外から来たものは10年。ここで産まれ育った者は20年。数年の安寧の時の代わりに、自らも平和の礎になることを強いられる。どお?まだ笑っていられるかしら?」


 レナが先程まで浮かべた可愛らしい少女の顔はなく、冷たく諦めに満ちた顔があった。

だが、アルベールの中でまだ解けない疑問が一つ残る。


「レナ、商業通りにいた彼らの違いはなんだ?」


 おそらく、今のアルベールの問いだけでは何が何だかわからなかっただろう。だが、一度でも商業通りを歩いてしまえばこの問いの意味は理解できた。


それほどまでにあの明暗がハッキリ分けられた住民たちが混在する空間は異様であった。


「彼らは特権階級を買ったのよ。この国に王族や貴族階級にいた者達が移住しに来るのは知っているでしょ?彼らは巨額の富と引き換えに永住権を得るのよ。」


 レナは先ほどより一段と暗い顔をした。そして、今この場を去った者たちがレナが挙げた者達でないことは明白であり、生贄に捧げられる者達は貧しい者達であることもまた明白であった。


「この国に来るまでに貴族たちと高騰していく荷馬車の競売を制し、さらに永住権を得るのは町人達にはむずかしだろうね。運よくこの国にたどり着いたとしてもたった十年………。」


 レナは固まるアルベールに続ける。


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