王3
それから寸秒も経たない後に、バタバタと何やら不気味な音が聞こえた。
「ん‥‥‥‥?何か聞こえないか?」
「何かって?」
「なんか……足音のような」
「確かに、何かが近づいてきているような……」
バタバタと微かに聞こえた奇妙な音は、数分、数秒ごとに音が大きくなっていった。それどころか、住民の一人が言っていたように近づいてきているようだった。
「逃げたほうが良くない?」
「馬鹿!逃げるって、俺たちこれから死ぬんだぞ!」
動揺は動揺を誘い、波打つように連鎖を始める。多くの者が困惑し訝る中、アルベールは一人何かを待っていた。
「さて、彼らにはどう映るだろうか。自分たちがどれほどの存在で、世界は何でできているのかを。誰しもが人生の主役?そんなくだらない話ではない。今宵紡がれる新たな歴史の1ページには、一体誰の名が紡がれるのだろうか?さあ信じようじゃないか。彼らが信じるヒーローとやらを」
小さく呟いた言葉にニヤリとし、王の背中に氷塊を滑らせる感覚する。そんな時、一人の兵士が慌てた様子で王の元へ駆けつける。
「報告!モンスターです!モンスターの群れが多数迫ってきています!」
血相を変え、息が上がっていることを忘れ饒舌に話す。
「な、なんだと!?」
"ヤバイ!兵達はここに集まっている。門に待機している程度で抑えるのは不可能だ"王は急速に思考を巡らせる。
巡回中の者を向かわせれば多少の足止めはできるか!?いや、それは流石に無理だろう。その前に、なぜここに向かってきている?
そんなことは今はどうでもいい!種族だ!モンスターの種族はなんだ!?
「バカモノ!種族だ!モンスターの種族を正確に報告しろ!」
王が切諌するとほぼ同時に、唸り声とともに亜人に鳥人に爬虫類とありとあらゆる形をしたモンスターが押し寄せてきた。
「グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォ!!」
「「うわあああぁぁぁあぁぁあぁぁあぁぁあぁぁあぁぁあぁぁあぁぁあぁぁあぁぁあぁぁあぁぁあぁぁあぁぁあぁぁあぁぁあぁぁあぁぁあぁぁあぁぁあぁぁあぁぁあぁぁあぁぁあぁぁあぁぁあぁぁあぁぁあぁぁ!!!」」
王都でぬくぬくと暮らしていた者たちにとっては、想像を絶するほどの恐怖だったことだろう。
もしかすると、この地から一歩も外へ出たことがなかった者たちからすれば、モンスターなどおとぎ話くらいに考えていたのかもしれない。
そんな状況の中、アルベールは一人冷静に鷹揚としていた。
「慌てることはない。君たちは神々の力を信じてこの国に住み、自らも生贄になる道を選んだのだろう?なら大丈夫。今日も神々が、我々を守ってくれるさ」
アルベールがそう言い放って数分、アルベールの予測は見事に外れる。
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