観覧車のゴンドラの扉が開かない
仕事で知り合ったアラブの王様の一族の1人に、できたばかりの海沿いの遊園地の観覧車に乗ってみないかと誘われた。
此の国の近くの国が造った世界最大と言われていた観覧車に対抗して造られた、高さ400メートルの大観覧車。
当然2つ返事を返す。
此の観覧車ができるまで世界一だった観覧車のゴンドラと同じくシースルーゴンドラだけど、乗車人数が違う。
元世界一が1台のゴンドラの乗車人数が30人以上なのに対し、現世界一の此方の観覧車のゴンドラの乗車人数は10人、その代わりゴンドラの数が多い。
当然だけどゴンドラの扉は地上で係員が開けてくれない限り開けられない。
仕事の関係者たちとゴンドラに乗り400メートルの高みを目指す。
乗ったゴンドラが地上を離れて少ししたとき身体が揺れた。
地震か? って思ったけど、私以外の人たちは何も感じなかったのか風で揺れたと思ったのか、涼しい顔をしている。
時計と反対回りの観覧車のゴンドラが90度付近を過ぎた時、地平線の先の海を見ていた人が「なんだアレは?」と騒ぐ。
彼が見ている方に目を向けると、大きな津波が遊園地がある此の地に向けて押し寄せて来ていた。
津波の高さは推定だけど150メートル以上はありそうだ。
津波はゴンドラが天辺付近に着いた時に海岸に到達。
直ぐ津波は海岸を越え遊園地に押し寄せる。
逃げ惑う沢山の人と遊園地のアトラクションが津波に飲み込まれた。
観覧車にも津波は押し寄せて来てぶち当たる。
倒壊するか? と思ったが観覧車は踏ん張ってくれた。
観覧車は倒壊する事も無く立ち続けている。
でも……遊園地っていうより地上は押し寄せて来た水が引かず、観覧車の下半分が水に浸かっていた。
水が引かず観覧車の下半分が水に浸かったままなのは良い、問題なのは観覧車が動き続けているって事。
私か乗るゴンドラの前のゴンドラが助けを求め悲鳴を上げ必死に扉を壊そうとしている乗客を乗せたまま、水の中に入って行く。
それに続いて悲鳴を上げ扉をこじ開けようとしている私が乗るゴンドラも同じように、静々と水の中に入って行くのだった。