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構内2
男は、3階に上がってから、ずっと感じていた息苦しさが階段を上がるごとにだんだんと強くなっていることに気がついた。
別に疲れているわけではない。ただ、居心地が悪い。周囲の人間はこちらを見ていないのに何故か見られているような気配を感じる。その時、
「着いた!」
マユリが声を上げた。どうやら4階まで上りきったらしい。
エスカレーターを使えば楽なのに…
男はそう思いながら顔を上げた。
そして、言葉を失った。
目の前は、電車に乗る前に見たあのホームだった。
後ろを振り返る。
階段が無くなっている。
そして何よりも男が不気味に思ったのはそこにいる人間たちだった。
マユリとユカと男を除き、全員が顔に笑顔の仮面をつけていた。
そして全員が男に顔を向けていた。