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駅前1
飛び込んだ扉の先は夜の街だった駅の前には大きなロータリーがあり、高架下の屋台には様々な飲食店が並んでいた。
「何か食べますか?」
突然後ろから声をかけられ、男が振り返るとそこには小さな女の子とマユリが手をつないで立っていた。
マユリは続けて言った、
「この子がユカです。可愛いでしょ?自慢の娘なんですよ。」
そう言って、挨拶をさせようとするが、女の子は口を開かなかった。
「ほんとに可愛らしい子ですね。」
男はそう言ったが内心、地味で暗く、挨拶もしない子供に良い印象は持っていなかった。
「取り敢えず駅に入りましょうか。」
マユリは男の言葉に満足そうな顔をしつつ、ユカの手を引いて、駅の中へと入っていった。