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ホーム1
気がつくと、男は駅のホームに立っていた、どこか全体的に古びている、世界全体がセピア色の不思議な空間だった。
そのホームは、両端に2つ、中央に1つ乗り場があり、4両の電車が一度に行き交う、田舎の少し大きな駅といった印象だった。
「ここは、」
男にはその駅がひと目で女の子が行方不明になった駅だとわかった。
人が一人もいないその駅を少し歩いてみると、ホームの端で、ゴミ箱に人形のようなものが突っ込まれているのが見えた。
茶色く汚れたそれを手に取ると、どこからともなく声が聞こえた。
「お母さん…ごめんなさい…」
あたりを見渡すが、誰もいない。男はそっと人形を胸にしまい、もう少し駅を見て回ろうと後ろを向いたとき、駅のホームに人が入ってくる気配がした。