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終点
男はマユリがもうこちらに来らないことを確認し、車内でユカを探した。
ユカはすぐ後ろで影に守られていたが、男がユカに近づくと、影は左右に分かれユカまでの道を男に譲った。
男はユカの頭を撫で、優しく、一緒に帰ろう。と声をかけた。
その時、電車は駅へと到着し、ホームには見覚えのある、子供たちが退屈そうな顔をして並ばされていた。
その中のひとりが、ユカを見つける。
「あ!見つけた!ユカどこに行ってたの?遅いよ!」
と、ユカに声をかけた。
男とユカは子供たちの輪に入り、駅の改札へと向かった。
男が駅員に切符を見せ、改札を通った時、手に握っていた人形がボロボロと崩れ落ち、中から1枚のメモが出てきた。
そのメモには「ユカが幸せになりますように。」と書かれていた。
男はそのメモを折りたたみ、カードケースの中に入れ、ユカに渡した。すると、ユカはとても大切なものを扱うように、カードケースをカバンにしまい、
「お母さん。いつもありがとう。」
と、つぶやき、子どもたちのほうに走り去っていった。