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始まり
ある男がいた、歳は25歳、家族との関係はあまり良くないが、その他の人間とは良好な関係を築いている、よくいる外面の良い人間だ。
男はふと、小さい頃に参加した電車旅行のチケットのことを思い出した。
旅行といっても、子どもたちで集まって引率の大人と2つ隣の町まで電車で行くだけの、よくある子供会のイベントのようなものだった。
「懐かしいな。」
そう言って男は、ケットを手に取った。不思議なもので、手に取るといろいろな思い出が蘇ってきた。
仲の良い友達と馬鹿話をしながら胸を躍らせていた事。そっと抜け出して夜の街を探検し、引率の大人に見つかって怒られたこと。そして誰とも話さずずっと隅にいた、その旅行で行方不明になった女の子のこと。
そうこうしているうちに、だんだんと眠くなってきた男はチケットを握りしめたままいつの間にかソファで眠りについていた。