表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/3

第1話 運命のイタズラ

 



 いつも通りの朝。いつも通りの1日が始まるはずだった――


 あたしらは、学校に行こうと通学路(つうがくろ)を歩いていた。

 


陽菜(ヒナ)!」


 突如(とつじょ)として現れた黒い(ひず)み。妹の陽菜乃(ヒナノ)が飲み()まれた――あたしも咄嗟(とっさ)にその中へと飛び()む。


陽菜(ヒナ)ー!!」


 暗い空間。光もなくただ(やみ)が広がる中、彼女の名を(さけ)ぶ。

 無重力(むじゅうりょく)空間に放り出されたように彷徨(さまよ)って――――光が見えたと思ったらスゴい力で引き()せられる。


 木々の生える森の中、空中に現れたのだろう黒い(ひず)みから(ほお)り出された。


 (さいわ)い高さもなかった。あたしは普通(ふつう)に地面に着地する。


(そんなこと、どうでもいい……! 陽菜(ヒナ)は――!)


 あたしは自身に(そな)わった力で陽菜(ヒナ)気配(けはい)を探す。森の中。広い森の面積(めんせき)から(さら)にその外側(そとがわ)へ。


陽菜(ヒナ)――!)


 あたしは(がら)にもなく(あせ)る。近くどころか、範囲(はんい)を広げても見つからない。範囲を広げていて(わか)るのは、この場所が広大であることだけ。


 だからあたしは理解する。――ここは、ホントに断絶(だんぜつ)された世界『メソポタミア』なのだと。






 メソポタミア。なんでそう呼ばれているのか、それはさすがに知らない。


 けど、生きて帰ってきた人による情報によって、黒い(ひず)みの先には古代(こだい)文明が広がっていて、そここそ、上は宇宙(うちゅう)まで(つな)がる黒い空間に(おお)われて断絶(だんぜつ)された世界、メソポタミアだろうと()われていた。


 大昔から、上は宇宙(うちゅう)まで広がる黒い空間に(おお)われた場所があったと()う。その場所は、未だに中の見えない場所として存在しているらしい。変わらず、黒い空間に(おお)われながら。


 生きて帰れるかも(わか)らない世界、メソポタミア。だから、(けっ)して黒い(ひず)みに飲み()まれてはならない。それが世の中の当たり前の認識(にんしき)だった。


 ――知ってる。(みずか)ら黒い(ひず)みに飛び()んだあたしが異常(いじょう)だなんてことは。

 けど、後悔(こうかい)はない。きっと母さんも許してくれる。


 だって、(うしな)うなんて、あたしにとってあってはならないことなんだから。もう2度と。


(うしな)ったのは父さんだけで充分(じゅうぶん)


 そうだわ。もう2度と、家族を(うしな)わない。絶対、あたしが(まも)ってみせる。


 だから、異常(いじょう)だろうと関係ない。あたしは陽菜(ヒナ)を見つけて、彼女を危険(きけん)から(まも)る。そんなこと、考える間もなく心に決めていた。


(むすめ)――名は?」


 それは、日本語だった。この断絶(だんぜつ)された世界に、日本語が通じるヤツがいるとは思わなかった。


 (あせ)っていたあたしは、その言葉に答えることなく走り出そうとした――――けど、距離のあった気配(けはい)は一瞬で()()めていて。あたしの(うで)(つか)む。


空間(くうかん)魔法(まほう)――!)


 瞬間(しゅんかん)移動(いどう)かは判断(はんだん)できないけど、ソイツはたしかに空間魔法を使った。


 時空(じくう)魔法(まほう)(とき)魔法と空間魔法に分かれ、時空魔法は最上位(さいじょうい)魔法の1つとされていて。とうぜん、空間魔法も上位魔法だったんだ。


(はな)してもらえますか」

「ここがどこか、理解(りかい)していないようだな」


 あたしが(うで)を離すように口にすると、同時にそう返ってくる。男の()い赤色の双眸(そうぼう)があたしを(とら)えた。


「……この世界の住人、ですね。その格好(カッコウ)


「……そうさな。その言いよう、理解はしていたか」


 あたしが言葉を発すると、古風(こふう)(しゃべ)りでそう反応する男。

 

「して、(むすめ)。ここがどこか(わか)っているというならば、元の世に戻るのが至難(しなん)(わざ)であるのも理解できよう?」


 まるで古文に出そうな接続語(せつぞくご)で、男はそう口にする。


「もう1度言います。(うで)(はな)してもらえますか」


「話を()らすな」


「わたしは急いでいます。それを邪魔(ジャマ)するなら、いくら初対面(しょたいめん)と言えども(ゆる)さない」


 そう口にすれば、男の口角(くちかど)が上がる。

 

「ほう? 面白(おもしろ)いではないか。どうすると言うのだ」


 それは(あつ)だった。圧倒的(あっとうてき)な力を解放(かいほう)したオーラ。


 男から発せられる(あつ)があたしを(おそ)った。――けど、あたしの(のう)(あせ)るどころか()えていく。今のあたしは、いつもよりももっと、()めた目をしているだろう。


「ぬ!」


 あたしは自身に(そな)わった力を使って、女とは思えない力で男の指が外れるように(ひね)った。そしてそのまま男を投げ飛ばす――と同時にあたしは、常人(じょうじん)じゃない速さで走った――




 

()がしたか――まあ()い。元の世に戻るというなら、いずれ(まみ)える運命(うんめい)よ)


 そう。男の思惑(おもわく)なんて、あたしは知らないんだ――



 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ