第2話 今の魔王
国葬後、母は私の部屋に来て、昨日言っていた魔王について詳しく聞かせてくれた。
父の遺体を入れた棺を街を通って運んでいた道中、1人の老婆に引き止められたらしい。彼女は自分を霊媒師だと名乗り、棺から強烈な呪いを感じるので調べさせてほしいと言ってきた。母の周りにいた人々は全く相手にしなかったが、気になった母が詳しく調べてみたところ魔王の魔力が確認されたらしい。
母はスノウ家に嫁いで入ってきた身だが魔法への関心が高く、魔力の強い村で生まれ育ったのでスノウ家と同等の魔法の知識がある。魔力の解析は間違えることなく簡単に行えるだろう。しかし……
「しかし、魔王は私の父方の祖父が討伐したはず。こうも早い段階で新たに生まれるなどありえないと思うのですが……」
祖父が魔王を倒したのは歴史に残る伝説だ。復活などはまずない。
「私達も詳しい事は分からないの。分かるのは今の魔王が強大な威力を持っていること。そして……」
ここで母は口をつぐんでしまった。ドレスのポケットから1枚の古ぼけた紙を取り出し、私の前に差し出した。
「お父様の部屋にあったの。魔王からの、手紙よ。……読んでみなさい。」
「魔王からの……手紙。」
私がそれを受け取ると、母は静かに部屋を出ていった。魔王からの手紙というそれは見た目に反して頑丈だ。そっと開くとそこにはこう書いてあった。
”私は決して許さない。スノウ家の統治する国はアキレア・スノウの代に滅びるであろう。それを防ぎたくば女王御自ら私に立ち向かえ。私は現魔王ハロス・ラ・ムエルテ。待っている。"
今にも高笑いが聞こえてきそうな文章。私にこの手紙を渡したとき母はどんな気持ちだったのだろう。
(ごめんなさい、お母様。せっかく私を危険にさらさないようにと考えてくださったのに。)
私は手紙を握りしめ、部屋を出た。
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