第1話 本当の死因
「アキレア?」
聞き覚えのある声で目が覚めた。
「お母様……」
昨日はあのまま寝てしまったらしい。まぶたが重いのはずっと泣いていたからだろうか。鏡には腫れぼったい目をした自分が写っていた。
「ひどい顔よ。今日はゆっくりしたほうが良いわ。」
母だって辛いはずなのに、私が甘えてしまってはだめだろう。
「しかし、私が休んでしまっては女王として面目が立ちません。国葬の準備もありますし……」
「アキレア、私は大丈夫よ。今日はお父様の死をいたわりなさい。準備は私と侍女たちでやるわ。」
尚も反論しようとする私を制し、母は部屋を出ていった。緊張感がほぐれ、また私は眠りについた。
私が次に目を覚ましたのは夕方だった。部屋の外が何やら騒がしい。
「それは本当なのか!」
「今、魔力の解析を終えました。信じたくはないのですが……」
「元国王を失っただけでもひどく悲しいのに、そのうえそんな仕打ちをするのか。」
「とにかく、人ではない存在を相手にしている以上アキレアを危険にさらすわけにはいきません。ここはスノウ国の元女王として国民を守るために私が」
「私に任せて。」
気がつくとドアを開けてそう言っていた。母と重臣たちの視線が、白いワンピースの寝間着姿の私に集まる。
危険、という単語が出たときは母が危ないと思った。これ以上誰かを失いたくない。あまり話はよくわかっていないが、私にできることくらいあるだろう。
「アキレア、今の話を聞いていたの?」
「ええ、お母様一人に危険を背負わせるのは、嫌です。」
重臣たちはオロオロと私と母を交互に見ている。母は大きくため息を付くと、鋭い視線を私に向けた。
「何の話か本当にわかっているの?」
「詳しくはわからないですが私にも」
「魔王よ。」
その場が凍りついた。ガラスの破片のように鋭く突き刺さる言葉だった。重心の一人が息を呑む音が聞こえるほどにその場が静まり返り、誰も口をきこうとしない。詳しく聞こうと思ったが、それも無理そうだった。
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