第13話 好奇心
「ロナルド・クレイブ……」
「そう。彼に会えればアマリリスの様子やシェイブの犯行の動機がわかると思うの」
決意を秘めた瞳で母はそう訴えた。私は快諾したが、何をすればいいのか全く分からない上にジュナを巻き込んではいけないという条件付きはかなり厳しそうだ。一応似顔絵と名前の情報をもらえたので、街を探すようにと言われた。母はアマリリス様に関する文献の解析にあたるらしい。
そんなこんなでたどり着いたのがここというわけだ。ところどころ苔の生えるこぢんまりとした家。一階建てで、入り口は正面のみといったところか。見慣れない家をつい観察してしまいながらも、私はドアをノックした。
「すみません、どなたかいらっしゃいますか?」
静かだ。わざわざ偽名まで考えてきたというのに。聞こえなかったのかもしれない、今度は声を張り上げてみようと息を吸いかけたその時だった。
「どちら様ですか……?」
吸い込まれるような紫色の瞳。彼は自分はロナルド・クレイブだと名乗った。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「わ、私はリカと言います。クレイブさんにお聞きしたいことがありまして」
案内されたのは地下だった。普段はここで生活しているのか、通って来た一階はがらんとしている。
「そうですか。すみません、来客なんていつぶりか分からなくて……。今お茶を淹れますね」
「い、いえ、お気遣いなく」
早く用事を済ませてしまいたいのもあり、軽く引き留めたが直ぐにいなくなってしまった。
(仕方ない、少し観察しようかな…)
外観とは裏腹に広めのリビング。壁には無数のアクセサリーが飾られている。それもどこか禍々しさを纏って。他にも見たことのないようなものが陳列された棚もある。
「お待たせしました。それで、話というのは?」
小さなカップを机に置きながら彼が問いかけてきた。嗅いだことのない良い香りだ。
「は、はい。あの、クレイブ様の弟さんについてなのですが……」
沈黙。お茶を飲もうにもまだ熱く飲めないので、気を紛らわすこともできず。
「弟…」
焦点の定まらない目で下を向いている。
「それは、シェイブについてという事ですよね。いつかは来ると思っていましたが……」
何も言えずにいると、彼は小瓶を机上に置いた。
「これが、シェイブの持っていた”薬”です」
「”薬”……」
「はい。……これまで手紙などは来ましたが直接聞きに来たのはあなたが初めてですよ。本当に覚悟はありますか?」
ごくりと唾を飲む。もう戻れなくなるような気はした。どこかで引き返すなら今だという声がしたような気もする。それでも私は正体の分からない飢えともとれるような好奇心に突き動かされていた。
「はい。」
読んでくれてありがとうございます!