第12話 大事な話
「美味しかった〜」
私は用意された部屋のベッドにごろんと横たわった。どれも本当に美味で、ほっぺたが落ちそうとはまさにこの事!と言った風だった。
ジュナはお腹いっぱいになってしまったのか隣の部屋で戻ってくるなり寝ている。私が少し城を散歩でもしようかと起き上がった時だった。
「入るわよ」
ノック音とともに母が帰ってきた。食事は結局あんなに美味しそうに頂いていたのに今では表情一つ浮かべていない。
「どうしたのですか?」
「アキレアに、話しておきたいことがあるの。……城の中を歩きながら話しましょうか」
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「アキレア、こんな話を聞いたことがあるかしら。
ある国に、それはとても美しい王女がいました。彼女は幼い頃から人を惹きつける不思議な魅力の持ち主で、彼女の周りにはいつも人だかりができていました。そんな彼女の魅力は日に日に増し、10歳の頃には本人もその事を感じ始めていました。そして、15歳の春に決定的な出来事が起こります。その日は丁度戴冠式の日でした。ある一人の少年、ロナルド・シェイブというのですが、が城の衛兵によって殺されたのです。毒を持ち込もうとしていたからでした。城に毒を持って侵入しようとした不届き者がいたとあって国中は大騒ぎ。だけども、中傷を受けていたシェイブは鶴の一声によってたちまち英雄のようになったの」
ここで母は言葉を切った。
「犯罪者が英雄に、ですか?」
私が聞くと母は頷いた。
「そのとても美しいとされている女王がね、はねられた首を目にして一言言ったそうよ。『可哀想。』と。」
そこで母は先にあるきれいな花畑の前で立ち止まるとまた口を開いた。
「その一言が引き金となって国中で彼を擁護する声が上がり始めたの。ここは、彼の葬式が執り行われた場所。全人口の5分の4が集まったそうよ。結局、その出来事が主なきっかけとなって国民はみんな彼女に心酔するようになり、今では最も安全な国と言われるほど治安が良く…」
「待ってください、オリーブ国の話だったのですか!?」
「そうよ。……今のはアマリリスの話。アキレア、急なんだけどあなたにお願いしたいことがあるの」
急展開に頭を混乱させている私をよそに母は真剣な目つきで私を見据えた。今の話が嘘とは思えない。母のお願い。私は小さく頷いた。
「ロナルド・シェイブの兄、ロナルド・クレイブという人に会うのを手伝ってくれないかしら」
お久しぶりです。