第10話 秘密
「凄い……!きれいなお部屋ですね」
私は思わず感嘆を漏らした。連れてこられたアマリリス様の部屋はガラス細工の小物の沢山置いてあるきらびやかな仕様となっていた。
「ありがとう、アキレアさん。実はこれ全部セバスが作ったのよ」
「そうなんですか!」
アマリリス様は得意げに言った。セバスさんがそんな特技を持っていたなんて驚きだ。彼女の部屋には他にも可愛らしぬいぐるみなどが整頓して置かれていた。
「ところで、アマリリス様はオリーブ国の女王様なのですね。母とも旧知の仲なのですか?」
私は冷めた顔をしている母を横目にそう聞いた。先程あんなに親しげに話しかけられていたのに母は全く仲良くしようともしていない。
「ええもちろん!クレマチスには幼い頃からよく世話になっているわ。それなのにクレマチスときたらあんな感じで……」
「お二人は幼い頃からの親友なんですね!」
ジュナがうらやましそうに言った。まさかそんな昔からの知り合いだったとは、と驚いているとアマリリス様が不思議そうに尋ねてきた。
「二人はここにつく前にクレマチスから何も聞いていないの?」
私とジュナは首を振った。聞いていないどころか、オリーブ国の話さえ全く話されなかった。アマリリス様は母の方に向き直った。
「クレマチス!なんで何も話しておいてくれなかったの!」
「アマリリスが話せば良いことでしょう」
母がそう言う。呼び捨てに違和感を覚えながらも、私とジュナはアマリリス様が話し始めるのを待った。
「全く、どこから話したら良いのかしら……。実は、私とクレマチスは双子なの」
「双子……!?」
ジュナが目をしばたかせた。
「そうよ。私とクレマチスは元々二人で同じ国を治める予定だったの。私達が生まれたのはアイオリア国という、今のオリーブ国とスノウ国がつながった国なの」
(まさか母とオリーブ国の女王様が双子だったなんて)
驚きのあまり言葉を失っている私を見て、アマリリス様は申し訳なさそうに目を細めた。
「ごめんなさいね、急にこんな事を言ってしまって」
「い、いえ、大丈夫です」
「アマリリス様は何故クレマチスさんと一緒にいないんですか?」
ジュナが不思議そうに聞いた。アマリリス様が答えようとすると、
「その話はやめて。」
初めて母が口を挟んだ。首は下に向いているが、上目遣いでアマリリス様を睨んでいる。
「でも、もういいじゃない。過ぎたことなのだし……」
「やめてと言っているの。」
低く冷たい声で母がはっきりと言い放った。
「……分かったわ」
部屋の中には重々しく気まずい沈黙が流れ、私とジュナは為す術なくそこに立っていることしかできなかった。