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囚われの姫

雨崎琴(27)

ブラック企業に勤めるOL。両親は幼い頃に事故で亡くし、施設育ちでありながらも、明るく前向きな性格。であったが、入社して働くようになりブラックな職場環境に汚されてしまい、落ち込みやすい内気な性格になってしまう。仕事に対しては“しなければいけないこと”として恐怖心を植え付けられたものの一つである。一方、出会いを求めていたがことごとく全敗。相手からの恋心に気づく頃はいつも相手が冷めた後で手遅れというものだった。


ジル・ラプス(17)

魔法属性は氷と風。物事に対して明るく前向きであるが、失敗してしまうとガラリと変わり、落ち込みやすく内気なところは前世から変わっていない。

白髪にスカイブルーのような透き通った青い瞳を持つ。白髪であるが故に神の子だと称され、町や地方では浮いていた。だが、おじいさんだけはずっと味方をしてくれて、拾ってくれた恩もこんな私を側に置いてくれている恩をいつか返したいと思っている。

自然の風景が日本に似ているため、風景を眺めては両親を思い出している。


ゼルド・ラプス(56)

魔法属性は炎と雷。元々は冒険者だったが、ミリーア国の魔物暴走の際に真っ先に立ち上がり、仲間と部隊を指揮して立ち向かっていき、無事に収めたことで勇者と呼ばれるようになった。最後に倒した魔物暴走を指揮していた魔族の呪いによって、歳を重ねても見た目が老いることはないため、姿が26のときのままである。

真面目で一生懸命な性格で、汚れることは決してしない良心的な人。そのため、呪いによって老いることがない体を下心などを含めて使ったことがなく、むしろ日々鍛錬で鍛え、いつかまた人の役に立つことを、と思っている。

日課の鍛錬のときに、ジルを拾った。呪いによって老いることがない体をこの子の成長のために使うのも良いと考え、呪いの解ける日までジルの成長を見守ることにした。


リンネ(?)

四大天使の1人、魔法属性は光と炎。輪廻転生の担当をしており、輪廻の輪によって転生する者を導いている。転生を嫌がる者や無理矢理にでも転生しようとする死者を正しい方へ導くのが主な仕事内容で、たまにルーテの手伝いもする。

見た目は20代後半辺り。歳は本人曰く1000年以上は生きているとのこと。

その他、秘密。


ルーテ(?)

四大天使の1人、魔法属性は光と闇。生々流転の名の下に、死を担当する。天国か地獄に行くかの死者を導き、たまに極悪人に対しての恨みが強い者を見つけては残酷な死に方で魂を取り、その者に対しては死者を地獄へ導いている。

リンネとは似たような仕事柄、タッグを組んで仕事に向かうことが多い。

現時点でその他秘密。

 奴隷商に売り出され、オークションに出される。

狭い檻の中に囚われ、人々は白い髪色の私を見て、口々に神の子だと、生まれるべくして生まれる子なのだと、そう言っていた。中には私を見て崇める者もいた。



「10億からスタートです!」



 そう、司会者が言うと、驚愕の値段が次々と上がっていく。11億,14億,16億,20億,30億,40億,50億……とんでもない額であるが、私の目は淀んだまま、光を灯すことはなかった。


 この世界で、白い髪色の人は貴重なのだ。過去の転生者が、「白は神の使い」であると広め、その言葉が異常なまでに膨れ上がった。

 私は、森の中で暮らしていたことを幸いに、人目につかないうちから白い髪色であることを隠して、“前世”の記憶を頼りに、森で採れるものから染料を抽出し、髪を染めて隠してきた。この世界での育手の親はおじいさんが1人だけだった。


 神と転生の話を終えて、この世界で赤ちゃんから始めたときに、森の中で泣いていた私を拾ってきてくれたのだ、おじいさんは冒険者で、死に際に女神と会ったことがあった。そのため、驚きはしたが、この世界についてたくさん教えてくれた。異常なまでに子供の頃から発達が早かった私に驚きはしても受け入れてくれた。


 この世界にも、ラノベやなろう系でよくある、魔法や剣などが存在する。


 私は日本から来たのもあって、前世で磨いた空手や剣道などの武術や忍術は通用する。だが、この世界では大きく分けて魔法か剣術かだった。有力な魔法があるからなのか武術はない。そのため、神が与えた魔法のスキルを学ぶことにした。

 奴隷商に攫われたときも、護身術を使うのをどうするか考えているときにその隙に攫われてしまった。おじいさんにも前世の両親にも無害そうに見えても決して油断するなと言われていたのに、肝心なところで油断してしまった。


(おじいさんは元気かな…、寂しくなってないかな…。きっと心配してるよね…。………帰りたい…“おうち”に。)


 そんなことを思いながら、光を何も宿していない瞳を俯かせて、ただひたすらにこの状況が嫌でしかなかった。


(せっかく転生して、自由な生活が手に入ったのに…。また、捕らわれるなんて……。いい人に買われることはないと思う。だからこそ、今世こそは幸せにって思ったのに。良い人の一人でも作って、おじいさんにもう大丈夫だよなんて言えるようになりたかった…。)


 私は、自分の手錠を眺めながらぼんやりとただふけっていた。



ーー『 眠りなさい。 』 



 ふと、脳内に優しい声が響いた。眠りこそはするものの、声は聞こえる。前にもこんなことがあった。


 前世で高熱に魘されたときだった、優しい両親が側にいてくれて、夜中も高熱で苦しくて、迷惑をかけないように、と。私は我慢して両親の眠りを妨げないようにしたが、あるとき、脳内に子守唄を口ずさんでいる声が響いてきた。

 とても優しい声で、安心するような声。男の人の声ではあったけれど、美声というか、それを聞いているだけですっと心が軽くなった気がした。


 そして翌朝、自分でもあまりの高熱と治りの悪さに死期を悟ったが、無意味だったようだ。ふっと重みが取れたように体が軽かった。魔法にでもかかってしまったのではないか、そう思えるほどに。

 そのとき、お母さんとお父さんが中々治らなかった私を心配して、良かったと涙を浮かべて泣いてくれた。


ーもう、思い出の中にしかないけれど、大切な時間だった。



□□□



「〜〜♪〜、天使は道しるべとなり……〜♪」



 懐かしいことを思い出していると、額に温かい手が置かれ、子どもの頃と同じような子守唄が聞こえてくる。導かれるように、そっと目を開ける。


 私の目の前に真っ先に飛び込んで来たのは、大きな羽だった。


(……ん?天国にでも来たの…?)


 そう思えるほど、真っ白で綺麗な羽が見えた。その羽は翼となり、私の体を優しく包み込んでくれていた。



「おっ、目が覚めたか。この翼を褒められるとはな、見る目あるじゃねーか…♪やっぱ、俺サマが見込んだ人間に狂いはなかったな…!」



「まあ、天国ではありませんが。っ、貴女からみると、ここはまだ地獄ですね。」



 歌声が止み、先に話しかけてきたのは先ほどまで歌っていた男が私の心の中を読んだらしく、気さくに話しかけてきた。どうやら、天使のような翼の生えた赤髪で綺麗な赤と黒の瞳のオッドアイの男がいた、その男に私は膝枕され、綺麗な翼で体を包み込まれていたようだ。

 そして、もうひとりの翼の生えた水色ぽい灰色の髪色と黄色の瞳を持つ男が手を血に染めながら先ほどまでオークション会場だった会場の参加者や司会者などの関係者を全員真っ赤な血に染め上げ、屍で山を作っていたところだった。

 よく見ると、どれも心臓の部分が欠けていた。そして、その“掃除”をしている男の手には心臓が握られていて、私がちょうどその男を見た途端、ブシュっとまるで果実でも潰れたように心臓を握り潰した。そのおかげか更に血で床が汚れていた。

 まさか、目を覚ました途端にショッキングな場面を見るとは思わず、咄嗟に近くにあった翼にぎゅっと掴まってしまった。


 そんな怯えた仕草をする私を見て、膝枕をしてくれていた男は優しく微笑みかけてくれた。


「ったく、ルーテはこういうのあるからいけねぇな。ごめんな、怖がらせちまって。見ての通り俺たちは天使だ。あいつは死を担当する天使だからよ、死に躊躇がねぇんだ。ちなみに俺は輪廻転生を担当してる。おまえが転生してきたのも、本来ありえないことだ。俺の仕業って思ってもらっていい。実際、そうだからよ。」


 そして、その男は今の私の状況を説明してくれた。

私が前世にいた頃に動物に化けて現世調査をしていたところ、幼い私と偶然会って遊んだことがあり、それから私が社会人として働くうちにえげつない仕事量を押し付けられ、ハードスケジュールの中耐えきれなくなり、過労死して、冥界に行ってしまったが、輪廻転生を担当するという男に転生させられ、転生して、勇者であったおじいさんに拾われて、油断して攫われて今の状況になるまで天国の世界から見ていたという。

 そして、悪行しかしていなかった客やオークション主催や関係者に少し早めの裁きを下しに来たという。実際、このまま買われていたら買い手に暴行され早死するところだったのだという。


 私を眠らせたのは喚き散らしたりする状況を見聞きさせたくなかったからであると話してくれた。

 ここまで聞くと、恐らくこの2人に助けられたと思う。



「…ところで、私はおじいさんのところに返してもらえる…のかな……。」



 と、ずっと疑問だった質問を投げかけてみた。



「ん、ああ。帰りたかったらから帰すが、ちょっと俺が無理矢理お前を転生させたで、しばらくは早死イベントが盛りだくさんだな。」



 そうにこやかに話す男を前に、私はひゅっと何かが引っ込んだ気がする。



「こら。リンネとはいえ、怖がらせすぎですよ。事実ではありますが、俺たちがジル…いいえ、雨崎琴さん。貴女を気に入ってしまったのがそもそもの原因ですから、1ヶ月に3日程度でしたらお返しできますよ。けれど、それ以上は俺たちの庇護下にいてもらいます。何年かかるか分かりませんが、きっと守ります。そして、振り向かせてみせますので。」



 しれっと前世の私の名前を口にしながら、こちらもにっこりと爽やかな笑顔で話した。



「ルーテ、てめぇ、抜け駆け禁止っつったのてめぇだろっ?!何、約束破ってんだよ!!?!……っ、はぁ、ともかく、こうなったのは俺の責任でもある。雨崎琴、いきなりで驚いてるかもしれねぇが、守らせてほしい。ルーテみてぇに、口達者じゃねぇから、乏しいけどよ、第一にお前のことを想ってるから。」



 サラリとイケメンなセリフを言いながら、真剣な目でこちらを見ていた。こんな状況でNOなんて言えるわけもなく。



「…こんな私ですけど、よろしくお願いします…。」



 戸惑いつつも、か弱い声でそう返事をする。

こうして、私の二度目の人生は新しい物語を描き出すのだった。

 これも、まだ始まりにすぎないもので波乱万丈の人生になるとはこの時点で思いもしない。そして、この出会いが私の人生を変えたのもまた事実だった。

初めまして。天蜜らとと申します。星屑のごとくたくさんの数の作品の中からこの作品を読んでいただきありがとうございます。

天使×人間というのも面白いのではないかとの興味本位からこの作品を書いてみました。作者は普段恋愛より日常系に走るのですが、内心は恋愛の方がとても美味しく召し上がれます。気乗りしないのがそもそもの原因です。

皆様にとって気乗りしやすい・続きをまた読んでみたいと思えるような内容でしたら幸いです。

続きも絶賛制作中ですので、ぜひ楽しみにしていただけましたら幸いです。

ではまた続きのお話にてお会い出来ればと思います。



追記

※作中のリンネの口ずさむ歌詞は作者の今後に繋がるセリフの1つですので、著作権等に触れていないことを予め明記しておきます。

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