新しい暮らし
初めて投稿しています。
更新頑張ります。拙い部分も目に付くと思いますが、気長に見守って頂けると喜びます。
レイナが去った後、未だ自分の過去と上手く向き合えない俺に現実が襲って来た。
「あ、お腹すいたかも」
レイナから聞いた話を振り返り、思えば宙海にいた頃は祝福のおかげでエネルギーを直接体内に取り込み循環させていたんだと思い至る。
そして、自分で無意識に出来ていたことが祝福のサポートの無くなった今は出来なくなっているという程度には困惑しているんだ。ということも客観的に受け入れられた。
「別にこのままでも良いと言えば良いけど…この星で生きて行くならこの星の人達に倣って生きたいな」
ということは、まずお金を稼いで安定した生活基盤を整えるか、自活した生活を送るか…
よし!両方にしよう。
じゃあ家を建てようかな。
周囲を見渡し結構な大きさの森であることに改めて気が付いた。
少なくとも少し探索の意識を進めた程度では森の終わりは見えず、大きな山がいくつも森にのみこまれている。
この周辺の成木から素材を頂いて開墾して畑や果樹園も作って行こう。
問題は方法だけど…
うん。魔法にしよう。これは自分の気持ちとちゃんと向き合って決めたから問題無い…はず。
というか、魔法無しで開墾やら、建設やらは出来る気がしない。
湖畔から100mほど距離の離れたこの草原の地面に手を触れ、魔力を流して土中の成分の分析、地盤の調査を始めたその時…
〖何をしているの?〗
可愛い声に周囲を見渡すが、何も居ない。
〖こっちだよ〗
呼ばれたのでそちらを見るとフェアリーな生き物がパタパタと飛びながらこちらを見ていた。
目が合ったので話しかけてみる。
「ここに住む所を作ろうと思って調べていたんだ」
〖そうなの?でもその魔力があれば住む所なんて必要無いと思う〗
純粋無垢な言葉のナイフに地味に傷つきながらも答える。
「俺は人間だからさ、人間らしい暮らしが好きなんだよ。むやみやたらに荒らしたりはしないからここに住む所を作ってもいいかな?」
〖この森は誰の物でも無いから大丈夫。そんなことよりあなたの魔力すごい綺麗‼ねぇねぇ、みんなも呼んできていい?〗
「構わないさ。俺も1人なんだ。仲良くしてくれると嬉しい」
そう言うと妖精さんはどこかへと飛んで行った。
寂しい…
気を取り直して魔力を地面に流して調査してみると地質の上質さに驚いた。
これならしっかりとした家が建ちそうだ。
そのまま魔力を流して地盤からの組成を均質に歪み無く敷き詰め直し、織り成して行くとあっという間に基礎が出来た。
さて、後は木を用意しないとな。
頭の中で畑、果樹、井戸、倉庫などの場所の構想を作る。
それに必要な材質と予定のスペースに生えている木を照合しながら効率的に伐採を進め拓いて行く。
伐採といっても根から抜いてしまうんだけどね。
原木に手を触れ、一瞬で水分を飛ばし、製材の準備を整えた後は切り出した板や杭、端材などに分類した後、組み立てる。
もちろん根の先ほども無駄にはしない。頂いた命と素材には敬意と感謝を忘れてはいけない。
すると、あっという間に家が完成した。
間取りはリビングの大きな3LDKの2階建て、地下にも収納スペースを設けてみた。
感慨深く眺めていると大小様々な気配が近付いて来るのを感じたのでそちらに目を向け…
「え?友達ってそんなにたくさんいたの?」
驚いてフェアリーちゃんに尋ねてみた。
〖うん まだ全員って訳じゃないんだけど。ねぇねぇ、みんな。この人!凄いでしょう?〗
〖確かにこりゃあ凄い〗
〖ああ大したもんだ〗
〖本当に綺麗〗
〖恐ろしいもんじゃのぉ〗
と、様々な感想を伝えてくれる。
「みんな遊びに来てくれてありがとう。まだ暮らしの準備をしている所で、何もおもてなし出来ないんだけど…来てくれてとても嬉しいよ」
と、伝えると。
〖儂らに人間のもてなしなんて不要じゃぞ〗
〖あぁ、その魔力の近くに居られるだけで最高だ〗
〖本当ね。私たちの眷属達もあんなに喜んでるわ〗
そう言われたので、そちらに目を向けてみたら驚いた。
色とりどりに光る球体がはしゃぐように飛び回っていた。
「自分が意図した覚えの無いことでそこまで言われると困惑してしまう…喜んでもらえてるのは俺も嬉しいんだけど」
〖とても居心地の良い場所に招かれた気分だよ〗
「そっか。居るだけでくつろげるなら何時でも気軽に遊びに来てくれ」
〖〖うん。ありがとう〗〗
「じゃあ、俺は作業に戻ろうと思う。好きに過ごしていてくれて構わないから」
〖ちょい待ち。あの家はお前さんが建てたのか?〗
呼び止められたので振り返って答える。
「そうだよ」
〖凄いことが出来る存在もいたもんだな…お前さんは気が付いちゃいないみたいだが〗
「え?」
〖素材への愛に溢れてる あの家に使われた素材の全てが喜んでるよ〗
「!?本当?素材が何を言っているのか分かるってことかな?」
〖いや。感情が伝わって来るんだ。俺は木の精霊だから木材の事が1番読みやすい。土や水、風や光なんか相性の良い素材の感情も伝わっちゃ来るが漠然としたものになっちまうな〗
「いや本当に驚いた。そして感動だ。もし良かったら、また素材の気持ちを教えてくれないか?」
〖そんなら俺たちをここに置いてくれ。この星の中でここ以上に快適な場所は無いと断言出来る。みんなもそうだろ?〗
みんなこちらに笑いながら首肯を返してくれている。
「歓迎するよ。君たちのために俺は何が出来る?住む所、食べたいもの。遠慮なく言ってくれ」
〖住む所はそれぞれが1番居心地の良いところを勝手に探すから大丈夫だ。他のヤツらで希望があったら叶えてやって欲しい。食べ物も…そうだな。俺たちにとってはエネルギーとしての食事は必要無い。食べ物を食べるのは完全に嗜好品としてになるから、それも希望するやつがいたら叶えてやって欲しい〗
「分かった。とりあえず過ごしてもらって、必要になったらその都度考えていこう」
記憶の復元やら別れやらで急降下した気持ちは、突然の同居人達のおかげで少し紛らわしてもらえた気がする。
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