レイナの話
初めて投稿しています。
更新頑張ります。拙い部分も目に付くと思いますが、気長に見守って頂けると喜びます。
「男も女も賢すぎるとモテませんよ?」
ジト目でこちらを見る美しい声の人。
「大丈夫です。俺には心に決めた人がいますので。あ、そういえば申し遅れてました。俺は城と言います。残念ながら苗字は思い出せませんが…」
微苦笑しながらそう告げると…
「苗字は今の貴方には意味を成さないものでしょうから…私はレイナです。最初にお伝えしておくべきでしたね」
微笑みながら告げられた名にどこか懐かしさを感じた。
「綺麗なお名前ですね。それにとても素敵な美しい声をしておられます」
ほんの一瞬だけ驚いた表情を浮かべながらレイナは答える。
「そう言ってもらえるのは嬉しいです。1番最初にその言葉を贈ってくれた人を思い出してしまいました」
少し照れたようなその様子に反し、被った褒め言葉を伝えていたことに少し焦る。
「それで…すいません。俺のことなんですが…」
誤魔化し気味にそう続けると…
「そうでしたね。では、初めに。今は最初にお会いしてからどれくらいの時間が経過しているか分かりますか?」
「んー。それがほとんど現実感の無いまどろみのような感覚で過ごしていまして…気が付いた時からも少しずつ体は動くようになっていったのですが、具体的にどのくらいの時間だったのかはまるで分かりません」
「そうですよね。そうなるようにしましたから」
「実際のところどのくらいの時間だったのでしょうか?」
「99億9999万9900年です」
「は?えっ!?」
「精神力の回復に50億年。目覚めてから50億年弱といったところです。目覚めてからの学習はとても充実した物だったようですね。時間が経つのも忘れるくらいには」
(あれ!?なんかトゲトゲしい…慇懃威圧って感じがする…怖い)
「怖くなるようなことはお伝えしてませんよ?」
「そういえば、心の中でもお話出来るんでしたね」
なぜだろう…背中がびっしょり濡れている。
「で、でも いくらなんでも50億年も意識を保てていたとは思えないのですが…」
「それは私の祝福による効果でしょう。あなたが望んだことを全て叶えるための助力となるようにお渡ししました。起きてから50億年。私の事をただの一度も思い出すこと無く飲めり込んで知識を求めるとは微塵にも思いませんでしたけどね!」
(駄目だ!ついに語気まで荒くなっておられる。微塵の塵が怖い)
「考えてること…分かりますからね?」
(そのにっこりが怖い‼)
「はぁ…もう良いです。で、完全回復した精神力と火星の件がちょうど重なったんです。これは偶然でしたけど」
「なるほど…では、俺のこの力。無垢のエネルギーを思うままに操作して、あらゆる事象を叶える力はあなたに授けられた物だということですか?」
「間接的にはそうです。ですが、私の祝福はあなたが望む事を助ける力。遠くの物を素粒子レベルで分析したいとあなたが望めば、視覚を強化してそれを叶え、物質が起こす化学反応を知りたいと望めば、脳を活性化させ、それをイメージ出来るようになる。といったサポートツールの役割になります」
「な、なるほど…」
「なので、大いに誇って良いですよ。貴方が無垢のエネルギーと呼ぶ力は魔力なのですが、それを自在に操れるようになったのは全て貴方の研鑽の賜です。50億年分の…」
(駄目だ!また危険な方向に向かいかけてる! 回避!回避するんだ‼)
「そう言われましても…」
「…まぁ、そうですよね。でも、これは本当のことです。最初の頃は祝福で行っていた行動も、今は魔力を使って行っていることに自分では気付いていませんか?」
「そうなんですか?自分の感覚ではまるで同じ事をしているつもりなのですが…」
「私の祝福も元は魔力ですからね」
「ああ、なるほど。では、俺は何をしたら良いのでしょうか?何かを成すために祝福の力を授けられたのではないですか?」
「いえ、祝福は貴方が回復するのに良かれと思ってお渡ししたに過ぎません。世界を救え。悪を倒せ。なんてありがちな使命などは一切ありませんよ」
「えーと…では、俺はこれからどうしたら良いのでしょうか…?」
「私としては貴方に天寿を全うして欲しいという個人的な希望はありますが、それを強要するつもりはありません。でも、何も思い付かないのなら成したい事を見つけられるまでは地球で過ごしてみませんか?」
「人ならざる力を持ってしまった俺が住んで、地球の人たちに迷惑がかかりませんか?」
「人ならざる力も貴方の努力で得られた物ならばそれは人です。貴方は人なのですから…」
悲しそうに告げたレイナを見て押し寄せる先ほどの自分の言葉に対する後悔。
「失礼しました。分かりました。俺、地球に住みます。そして天寿を全うするまで生きてみます」
「そう言ってもらえて良かったです。ほら、私たちがこうしてお話している間に地球は人の文明になったようですよ」
言われ、地球に意識を向けると…とてもとても懐かしい人の暖かい営みの光が浮かんでいた
(あれ?…一体どれだけの時間話していたんだろう…)
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