あと始末
初めて投稿しています。
更新頑張ります。拙い部分も目に付くと思いますが、気長に見守って頂けると喜びます。
さて、後始末をしておかないと…
俺はそう呟き、火星に目を向ける。
そのまま意識を火星の比較的被害の少なかった地域に拡大させながらどんどん寄せていく。
この辺りだと思う…
そう呟き、無垢のエネルギーを波紋を広げるように薄く優しく広げていく。
すると…数十人の反応を感じた。
良かった。まだ無事だったか。
そちらへいきなり移動しては驚かせて警戒させてしまうな。
近場に意識を移して移動する。
そしてゆっくりと歩いて近づいて行くと…
こちらの存在は認識出来ているだろうに、反応が無い。
よく見てみると…誰もが生気の無い目をしており、諦観の表情を浮かべている。
その様にかける言葉も見当たらず、ただ悲しげな表情で見守っていると、不意にこちらを意識した子供がいた。
目が合ったことで穏やかに微笑みかけると、とても驚いた様子でこちらに向かってくる。
「お兄ちゃんは誰?どうして私たちとは違う見た目なのにここにいるの?」
「俺はこの星の成り立ちから今日までを見てきた者だよ。君はとても驚いた様子だったけど、なんで見た目の違う俺に話し掛けてくれたのかな?」
「お兄ちゃんが笑ってたから。笑った人なんてもうずっと見てないよ?」
胸がズキっと痛む。
しかし、それを気取らせないように必死に表情を作り再び話しかけた。
「そうだね。この短い間に悲しいことがあり過ぎたよね。でも、おとぎ話みたいに聞こえるかも知れないけど…またみんなで笑える時は必ず来るよ」
「嘘!!!」
それはとても強い否定の感情。
おそらく10歳にも満たないであろうこの子の絶望の深さに胸が締め付けられる。
「嘘じゃ無いさ。この星では嘘を付いた人はどうなっちゃうんだっけ?」
「宙海に放り出されてずっと暗い海を彷徨うの」
「そうだね。それにこういうのもあったはずだよ」
そう言いながら俺は手を差し出す。
おずおずといった様子ではあるがその子もまたその手を取ってくれた。
「本当…なの?」
「もちろんさ、君には感じられただろう?」
「うん…」
この星で言葉が発達する前から存在した意思疎通方法。
掌を重ね合わせて思いを伝えるこの方法で俺の思いは伝えられただろう。
掌は重ねたまま、言葉でも伝える。
「ただし、それは何もしなくて良いわけじゃない。みんなが1人1人それを望み、それに向かって行動して初めてみんなでまた笑いあえる日がやってくるのさ」
「うん。みんー」
そう言って他の人達を呼ぼうとするのを俺は止める。
「大人達はね…いろいろな事を知り過ぎてしまうんだよ。
言葉やこの思いを君に伝えたのと同じように伝えても、それを実現出来るようになるにはどうしたら良いのかを考える前に、その大変さを考えて諦めてしまうんだ」
「じゃあ、どうしたらいいの?」
「君がみんなを導くんだ」
「わたし、そんなこと出来ないよ…」
「難しいことじゃないさ。君が今想像している、みんなが笑いあっている光景を見せて…わたしはこうなりたい。と強く思いをぶつけてやれば良い」
「それなら出来る!」
「じゃあ、あとは行動するだけだ。みんなのところへお戻り」
「うん!…でも…お兄ちゃんは誰なの?」
「俺はただのお節介焼きさ。幸せな人達を見ているのが好きな。ね」
そう言って俺の元からみんなの所へ戻る姿を見送りながら宙海へと移動する。
「さてと」
先ずは、星に僅かばかり残るエネルギーへとアクセスする。
繋げたパスに外宇宙を含めた同質のエネルギーを引き寄せるようにパスを繋いで行く。
これでこの星は再びエネルギーを使えるようになるだろう。
次に、大気に拡散した宇宙線、汚染物質を大気に干渉させたエネルギーパスを用いて大気圏外へと排出する。
あとは仕上げか。
今度は地殻の奥深くへとアクセスし、太陽…恒星との引力を計算する。
そして火星自信の重力バランスをも計算に加え導き出した答えに沿って地殻の構成物質を除去し、宙海から引き寄せ、構築していく。
よし。これで地球と同じ太陽との距離と公転周期をずらした位置になっていくだろう。
良き隣人としてお互いの星がある様に。願いを込めて少しずつ太陽の元へと移動を始めた火星を見つめていたその時ー
「やはり貴方はそうするのですね」
ー美しい声が聞こえた。
「はい。思うままに行動していたらこうなっていました」
「別に責めるつもりで言ったわけではありません。貴方とお話する時が来たと思い、こうしてここに来ただけです。…ただし、その前に…」
そう言って俺の胸に手を置くと…とても悲しそうな表情を浮かべつつ微笑みを向けてくれた。
「やはり…また精神力を消耗してしまいましたか…
何故ですか?何故あなたは木星へと送った人達にまであんなに強い慈悲と悲しみを向けたのです」
「思うままに行動しました。それに…」
「それに…何ですか?」
心なしか怒気が含まれた気がする…怖い。
「あなたは俺にこう言いました。〖私の愛し子達を守ってくれますか?〗と」
「可愛くない…」(ボソッ)
この美しい声の人は、あの彗星の動きも認識出来た俺の目にも止まらぬ速さで一瞬だけ顔を背けながら何かを呟いた…
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