侵略者の行方
初めて投稿しています。
更新頑張ります。拙い部分も目に付くと思いますが、気長に見守って頂けると喜びます。
とても美しい声の人には軽く別れを告げて火星と地球の最短距離の進路へと意識を向ける。
そういえば…
まだ姿もろくに見ていなかったな…
この後また会えるだろうか?
そんな事を思いつつ、意識を空間に飛散しているエネルギーの粒子へと向け、先程の場所への距離と座標を確認し、自分自身の体組成を素粒子単位までエネルギーで保護した上でエネルギーを利用し、超高速移動させてその座標へと移動した。
事象を具現化できる純粋なエネルギー…か
そんなことを考えながら思考の海に沈んでいると…
とても華美な装飾を施された船が近づいて来た。
ホワ〇ト〇ース?
まるで機能美を感じないデザインにばかり目が行って暫し呆けてしまった。
その船はこちらを認識したようで、デッキの中には見てはいけないものを見てしまったかのような顔で慌てるクルーであろう者達がいる。
少し不愉快な気持ちになったのでエネルギーを船の中へと伸ばし、中の様子を探るように意識する。
「おい! なんだあれ‼?」
「知るか!!宙海に生身で浮かぶ生物なんているわきゃねぇ!」
「気持ちわりぃ…」
という、予想通りの会話が繰り広げられていた。
…言われっぱなしもなんだな。
繋げたエネルギーで船内に声が届く様にする。
「あー。聞こえるか?」
「………」「………」「………」
あれ? 言語は合ってると思うけど、駄目かな? なら…
エネルギーを相手の頭に響かせるように調整しなおして語りかけるように再び問いかける。
(聞こえているか?)
「「ひー」」
その瞬間にデッキも機関室も食堂も全てのクルーが足を震わせながらへたり込む。
(お前たちが何を目的としてこの空間を航行しているのかは把握している。何故、自分たちの手で自分たちの星を再興しようとしない? そういう状況を招いたのは全て自分たちの判断だろう?)
ほぼ全てのクルーがへたり込む中、ただ1人だけ立ち上がる者が口を開く。こいつの顔は知っている。
忘れられようも無い。火星を破壊した号令を出した男だ。
「黙れ!!我らはずっとこうして生きてきた!」
(あぁ…それも知っている)
「ならば理解出来てもよかろう! 我らがより優れた種族となるために優秀な我々がー」
(…優秀?)
言葉を遮るようにひどく冷えた声が出た。
(お前の優秀の定義はなんだ?)
「き、決まっている! 優れた頭脳を持ち、それを実行に移せる屈強な肉ー」
(お前は自分の号令1つで消し飛ばした同族達が何を考え、何を想い、行動していたのかを知っているのか?)
またも食い気味に言葉を被せた俺の言葉に即答する男。
「劣等種の有象無象が何を考えていようが、それを儂が把握する必要がどこにある!儂が導く答えが全てで。それが現状だ!!」
それを聞いた俺はひどく悲しい声いろで必死に言葉を紡ぐ。
(…彼らは諦めていなかった…あの星がどんなに極寒の嵐が吹き荒れる荒野であっても。大気は薄く、重力の軽さは世代を重ねる度に進化の方向をマイナスへと強要するような環境であっても…必死に…必死に生命体としてより良い方向へと向かうために尽力していたんだぞ!)
「…だからなんだと言うのだ! 結果が全てだ! ここにいる者が正しい‼ 儂は今、生きている! この先もお前の先にみえる星で儂は結果を残してみせる‼」
【…悲しい……】
(…そうか…その主張を続ける以上は結果が全てなんだろう。ならばこの先も結果で語ると良い…)
【ただ…悲しい…】
「言われ無くてもそうしてくれるわ!! おい。主砲の陽電子充填率は?」
「はっ。間もなく60%になります!」
「構わん! あんな者にそもそも陽電子砲など勿体ないわ。撃て!!」
脳内物質をエネルギーで調整して脳が身体保護のために無意識に制御しているリミッターを強制解除し、知覚速度と神経伝達速度を高める。
同時に神経伝達から動作に至るまでの神経、骨格や筋繊維の保護もエネルギーで行う。
視覚はスローモーションになり、その中で普通に動けるようになった中で思考する。
流石に大気の無い空間なら的が小さくても狙いは外さない。
か…
【なんで分かり合えないんだろう…】
胸の中に様々な思いが込み上げて来る。
陽電子の元になるエネルギーの存在をお前達は知っているか?
純粋な…ひどく純粋なエネルギーなんだ。
それを一方にベクトルを傾けただけのエネルギーへと劣化させて使ってるのがお前たちなんだよ…
知っているか?お前たちが放ったエネルギーにはこの射線上にある目的地だって悪影響を受ける物質が含まれているんだぞ?
【只々…ひたすらに悲しい…】
放たれた陽電子の光に対して目の前に無垢のエネルギーの薄い壁を全ての素粒子を反射させる指向性を持たせて構築する。
あらためて見ても星の光を全て凝縮したような輝きなのに、変な色に混ざりあって濁ったりしていない…
本当に例えようのない美しい色をしている。
吸い込まれる様に壁に当たり、そのまま跳ね返る陽電子の光は狙ったようにブリッジすれすれを通過して通り過ぎてゆく。
「な、ななな…なんだ」
力無く床にへたり混んだ男に優しく語りかける。
(残念ながらこの先は行き止まりらしい。死にたくは無いだろう?安心するといい。俺が道を示してやる)
【まるで…心を引きちぎられてるみたいだ…】
そう言った俺は船へとゆっくりと近づき、船体に手を触れる。
船の推進に使われている陽極のエネルギーを無垢の物へと変質させ、その質量の減少加減に少し驚きながら、それを推進口へと流しつつ、舵も動かせぬようコーティングしてしまう。
(さて、行くといい。行先は木星の衛星だ。お前の言う結果がどうなるのかはそこでまた答えが出るのだろう)
そう言って俺は遠ざかる船を悲しげな顔で見送り続けた。
胸に穴が空いたような痛みを抱えながら…
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