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二月一六日。京の都
そうして、二月十六日。
京に上がるまではまだ天候不良に悩まされて、何度も足止めを食らうことになったけど、私たちは無事に京の実家に着くことが出来た。
「貰い手がなかったら、俺がもらってやるよ。今から用意しておけ」
「私だって選ぶ権利あります」
時文様と私は、喧嘩はするけど、前よりずいぶん仲良くしている。
命をかけてまで大事に思ってくれる人だから、きっと私に一途ね。
(こりゃあ、たぶん、もう今後何も心配することはないわね。だから、私は私の今後を何も心配してない。侍女でも幸せ掴めそうだわ)
それから、私達はまた京での日常が始まった。
紀貫之様は醍醐天皇の陵に報告したあと、時の朱雀天皇から周防国守に任じられる。
その地で、貫之家歌合を開く。
都では藤原純友と平将門が討たれる乱もあったけど、御年七十を越えても紀貫之様は和歌を詠み続け、その年、紀貫之様は歌人として地位をさらに固められたのだった。
(了)