教会の食卓
「ふんふふ~ん♪」
「…機嫌いいな、メル」
フライパンで刻んだ玉ねぎと豚肉を炒めていると、メルが茹でたジャガイモをへらで潰しながら楽しげに歌っていた。
「お料理が楽しくって〜」
「ふぅん、そりゃ良かった」
「ふふ~ん♪じゃがいも潰して~マッシュポテト~♪」
「そうだな」
ご機嫌なメルを適当に対応する。
「ねね、カミラちゃんは何作ってるの〜?」
レイチェルがカミラに問いかけた。
「コンソメスープですよ、軟骨とその周りについているお肉とを一緒に煮込むんです」
「へえ〜、そうなんだ~」
レイチェルは、興味深そうに鍋を見つめる。
「なあレイ兄、ソースってこれでいいんだよな?」
今度はハチが俺に問いかけた。作ったものは、牛乳とサワークリームと炒めた野菜を使ったソースの様なもの。
「…お、上手くできたな、んじゃあ次はこっちを手伝ってくれ」
「りょーかい」
丁度炒め物が完成してメルがジャガイモを潰し終えたので、潰したジャガイモに水と小麦粉を混ぜる。そして、メルとハチとの三人で炒めた物を包んでいく。
…と、玄関の扉が勢いよく開けられる音が鳴った。
「いいにおーい!」
「ごはーん」
見ると、子供たちがドタドタと音を立てながら廊下を走っていた。
「こらー!さわがないの!」
次に入ってきた少し年上の少女が、小さい子供たちを叱りながらこちらへ向かって来た。
「もうすぐ出来上がりますから、手を洗ってきてくださいね」
カミラは子供たちに向けて、手を洗うよう促した。
「「はーい!」」
子供たちは返事をして、洗面所のほうへ向かった。
◇
「では皆さん、神に感謝して頂きましょう」
「「いただきまーす!!」」
子供たちは楽しげに、次々に料理を口に入れてゆく。
「おいしー!」
「おいしいねー」
二人の子供達はそう言って、満足気に笑い合っている。
「じゃがいもの中に肉団子を入れるなんて、中々凝ってるね〜」
レイチェルが肉を詰めたじゃがいもをフォークで刺しながら言った。
「メルが詰め物が好きなんで、子供たちも喜ぶかなとか思って」
「…あれ?私、子供扱いされてる…?」
「うん」
「もー!隠す気くらい見せてよー!」
俺の二の腕をしっかりと掴み、片頬を膨らませながら怒る威圧感の欠片もないメルが、俺の体を揺らす。
「はいはい、ごめんごめん」
それをなだめながら、肉を詰めたじゃがいもをメルの皿に一つ置く。
「はい、お詫び」
「いいの?!」
「おう」
「やった!」
凄く喜んでフォークを手に取るメル。
…そういうところなんだけどな。
「なら、俺のを一個レイ兄にやるよ」
次はハチが俺に肉を詰めたじゃがいもを渡そうとする。
「いや、良いよ。たべとけ食べとけ」
「えっでもよ」
「いいんだよ、お前らがたくさん食べる方が俺は嬉しいぞ」
「…そっか」
「大人だね〜レイくん」
からかうような笑みでレイチェルが言う。
「その笑みムカつくんでやめてれませんか」
「……そういう所は子供っぽいんだね〜」
落差に可笑しくなったようで、レイチェルは軽く笑い、横にいたカミラもそのやり取りを見て、微笑んでいた。