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武人とゲーマー  作者: 亜麗(あれい)
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始まりの国の幼馴染

▶レイ


 目を開けると、そこには文字通り異世界が広がっていた。

近世的な街並みに線路の上を走る列車、剣や槍などの武器を携えた者やフードを被り杖をついている者など、本当に異世界に来たのかと思うほどだ。


「…すげー」


 その現実と変わらない風景グラフィックに思わず感嘆する。


「見惚れてる場合じゃねえや、あいつらと合流しないと」


 確か、念じたら出るはず。


(メニュー)


 よし出た

 スマホのチャットアプリを開き、メッセージを入力する。


「ログインしました、灰色髪のやつです。と」


 これでよし

 チャットを送信した後しばらくすると、こちらへ駆けてくる一人の少女の姿が見えた。


「レイくんお待たせー!」


「おう、名前は…サクラか。別にいいよ」


 お互いにそのまんまの名前だな。

 サクラも、髪の色を淡い桃色にしただけで他は弄ってないように見える。あ、一つだけ違うところがある。


「あれ?その耳って…」


「気付いた?このエルフ耳」


 そう言って、サクラは自身の耳に触れる。


「ちょっとびっくりした」


 違和感がまったくなくて驚いた。

 そんなこんな話しているとふと、後ろから声が聞こえる。


「あれ、先生?」


 振り向くと、楓と思わしき少女がこちらを覗き込んでいたいた。


「お、ログインしたか。…ってなんだその名前」


「かわいいかなと思って」


「メルメル」って…。ぬいぐるみとかにつけるような名前だぞ…。

 顔や髪の色は変わっていないが、おろしていた肩まである髪は後ろで縛っていて、瞳の色は緑色にしている。


「………」


「どうしたの?」


 相変わらずのくせ毛な茶髪を揺らしながら、首を傾げるメルメル……


「メルと呼ぼう。うん」


「えー!なんで!?」


「ちょっと荷が重い」


 しかめっ面で頬を膨らませるメル。わかってくれ、無理なもんは無理なんだ…。


「なんだよ、皆んなログインしてんじゃんか」


 不満を漏らしながらこちらへやってきたのは「ハチ」と言う名前を頭上に浮かべている、連と思われる少年だった。


「ハチは獣人にしたんだな」


「おう!猫獣人ってやつでよ」


 赤い髪に、赤い毛の猫耳を頭に生やしたその姿は、よく様になっていた。


「これで全員揃ったな」


「これから何する?」


ずは色んなところを見て周りたいです!」


「おっ、いいんじゃねえか?」


「んじゃあ、ぶらぶら周るか」


 ここにいてもしょうがないので、この街をぶらぶらと周ることになった。

 サクラが、はっと何かを思い出したのか口を開く。


「あ、その前にフレンドになりましょうか」


「フレンド?なんだそりゃ、フレンドになるとどうなるんだ?」


 ハチが、頭に疑問符を浮かべている。


「フレンドになると、連絡が取りやすくなったり何処にいるのかがわかるようになるのよ」


「へえー便利なもんだな」


「でしょ?…じゃっ、申請しまーす!」


 サクラがメニューを操作すると、「ピコン」という効果音とともに『フレンド申請が届きました』と書かれたウィンドウが現れた。

 メニューからフレンド申請を承認する。


『サクラとフレンドになりました』


「これでよしと」


 横のメルとハチも、うまくできたようだ。

 先程と同じことを、残りの三人でも済ませる。


「終わったみたいね。じゃ、今度こそ街を回りましょう」


 サクラはそう言って先導し、そして振り返る。


「見せたいものもあるし?」


「…見せたいもの?」


 三人揃って、首を傾げた。





「ここよっ!」


「何処ここ」


「鶏肉おいひい」


 串焼きの入った紙袋を片手に、物々しい雰囲気を漂わせる建物に入った。


「冒険者組合っていうの」


「はんあほへ?」


「へんふえへふへ!」


「お前ら行儀が悪いぞ」


 串に刺さった鶏肉を頬張りながら喋るハチとメル。サクラはちゃんと聞き取れたらしく、質問に答えた。


「冒険者組合って言うのはね、個人的なものから色んな業者さんの依頼を取り持ってくれるとっても便利なところなのよ。

メルちゃんの言う通り、ファンタジー作品じゃ結構テンプレな場所ね」


「へえー、なるほどな」


「やっはりほうはふは!」


「いつまで食ってんだお前」


 メルは口いっぱいにものを入れて、ハムスターみたいになっている。


「まずは席に付こうかな」


「あそことか良いんじゃないか?」


 サクラの言葉に、俺はめぼしい席を提案した。

 席につくため、施設を歩く。


「にしても物々しいな…、イベントが近い影響なのか?」


「ご名答!すごいねレイくん」


「お、まじか」


 席に付き辺りを見回す。受付けから見える忙しなく働く人たちや、周りのテーブルを囲む人達の雰囲気が凄く重たい様に思える。その中に少数だが、楽しく談笑している人たちもいて、水と油を混ぜた感じの空気になってしまっている。

 ハチが、あることに気づいた。


「そういえばさ、すたんぴーど?ってやつから国を守るんだったよな?でもどうやってそんなこと判るんだ?」


「いい質問だねえ、実はこの世界に漂う"エーテル"っていうエネルギーから読み取るの。エーテルは全ての物質に宿るエネルギーなんだけど、このエネルギーの周波数を読み取る装置を使って予測してるのよ」


「なるほど、この世界は結構進んでるんだな」


「そうね、魔導列車とか魔力で動く機械なんかもあるくらいだし」


「へえー」


「んぐっ」


「おいメル……喉に詰めてんじゃ世話ないぞ。ほら水」


 俺はそう言ってメルの水筒を取って渡した。


 …そして当のメルは、飲み込むのに夢中で話を聞いていなかった。

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