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あるヒロインの休日。ヒロイン?実は...〜美人な彼女で羨ましい?違います、親子です。代われるものなら代わりますが...〜

作者: 福士夜鳥

「新しいパソコン欲しくない?」

と言われ、しぶしぶ、明日の祝日、午後からの親の買物に付き合うことになった。


ワタル、17歳。高校二年生。

本当は、新しいゲームを買ったので一緒にやろうぜ!と、高校のクラスメートに誘われていたので、今回の親の要求は断固として断るつもりだった。

最初は鼻息荒く、明日は絶対に無理、と言い張ったが、敵は己の性格を一から十まで知っている。

最初は、え〜っ、と困惑した顔だったが、ふと何かを思いついたようにニヤニヤし始め、冒頭の言葉が投げかけられた。

それで、あえなく、「新しいパソコン」というエサに、パクっと食いついてしまった。



次の日の祝日、13時半過ぎ、マンションのエントランスで待っていると、マンションのロータリー入り口から運転手付きのリムジンが滑り込んできた。車寄せで止まる。

後ろのドアを開け、乗り込む。午前中に仕事に行ってた親が先に乗って待っていた。

満面の笑みで両手を広げ、お待たせ〜、と言って抱きついてくる。川口春奈にそっくりだが、身長は本物よりも高く、177cm。バストもたっぷりと突き出しており、腕に当たる柔らかい感触に加え、華やかな香水の匂いに、本能が(うず)くが、理性が違うとフタをする。

親の遺伝か、俺も身長は185cmあるので、一緒にいると、傍目(はため)にはちょっと年下の彼氏に見えるらしい。

俺の顔は(川口春奈に似ていると言われる)福士蒼汰に似ていなくはないものの、目は細く切れ長、鼻は団子鼻なので、南海キャンディーズの山里がちょっと入っている。ま、中の上程度。親に似たのだ。

親からことある毎に、整形してあげようか?と言われるが断っている。

そう、親の職業は美容整形外科医。美容整形クリニックを全国の主要都市に展開、7つのクリニックを抱える辣腕経営者でもある。なので、収入は億を軽く超えている(俺は詳しく教えてもらってないが...)。歳は40歳だが、整形しまくっているおかげで、見た目は20代にしか見えない。

自身が病院の広告塔の役割を担っており、本人からビフォーアフターも交えて説明を受けると、誰もが安心して整形するので、病院は思った以上に繁盛しているようで、本人もそれもあって全国を飛び回って忙しい。

その合間の偶の休日には、なんだかんだと溺愛している息子を引っ張り出して、散財し、ストレス解消を図っている。


一時期ビンボーな時期があったらしく、大金持ちの割に俺にくれる毎月の小遣いは、これ以上は教育に悪いという理由でちょっと渋く、一万円しかもらってない。本人曰く、これでも大甘、だとのこと。普通の高校生よりかは多いとは思うものの、おぼっちゃまの多い私立男子校に通う身には、友達付き合いの中で肩身が狭い場面がしばしばあるのが現実だ。

なので、パソコンにすぐ釣られて、修行僧のような半日を送るハメになったというわけである。


エルメスやルイヴィトンなどの高級有名ブランド店が並ぶ表参道。

今日の、というか、何度か付き合わされたことのある定番の買い物コースのひとつだ。

そしていつものことだが、わざわざ、国道246沿いの国連大学あたりで車を降り、腕を組まれて歩く。


肩どころか、両方の二の腕がはっきり見えるくらいの大胆なオフショルダーのファーのついた黒のコート。下にオフホワイトのカシミアのVネックのセーターを着ているが、ボリュームのあるバストのせいで、胸の谷間が自己主張している。コートに隠れているがこれもオフホワイトのカシミアのミニスカート、コートの裾の合わせから見え隠れするのは黒のブーツと白のストッキングといういで立ちだ。

美人は見慣れて、1週間で飽きると言うが、見慣れた息子の俺からみても、これが親じゃなければなぁ、と思う。

いや、親だから俺でも相手になるのか...

いやダメだ、完全に当てられて思考がおかしくなっている...


因みにコートはプラ○の最新作。カシミアセーターとミニスカートはオーストラリアのどこかに特注したもので、ブーツはジルなんちゃら、ストッキングもグッ○だった筈。

多分、服や靴だけで、三桁万円は軽くする筈だ。腕時計やアクセサリーを合わせると、ちょっとしたマンションでも買えるくらいの金額だ。

なんで知ってるかって?そりゃ、そうした買い物に付き合わされてるからね。


ぱっと見は、黒と白の地味な配色だが、いかにもな服装に、ヴィト○のバッグを提げていれば、そりゃ目立つ。

行き交う男のほとんどがチラチラ見てくる。中には立ち止まって、ガン見する奴すらいる。

長身のカップル、芸能人に間違われて、誰?って仲間に聞いている人もいる。いずれにせよ、注目の的だ。親は、その他大勢からの熱い視線を思い切り楽しんでいる。このために、わざわざ表参道の500mくらい手前で車を降りて歩くのだ。

俺は、ナンパ避けを兼ねての同行でもある。が、衆人環視の中、もの恥ずかしくて、ホントに穴があったら必ず入る、くらいの気持ちだ。


親の、お前は芸能人か、って突っ込むほどのヒロイン振りに比べれば、俺はMOBと断言できる。こういうシチュエーションに開き直ることも、一緒になって楽しむことも出来ない。いつも、忸怩たる気持ちと(おそ)れる気持ちのない混ぜで、やるせない心地がするため、意識してできるだけ心を無にして、早く時間が過ぎてくれ、と心で祈りながら過ごしている。

親とは出来れば、離れて歩きたいが、それも難しい。


なんて思考していたら、ようやく、表参道交差点。

横断歩道を渡らずに左折。するとまず、グッチから始まり、アルマーニ、コーチ、Boss...と有名ブランドが並ぶ。それらのお店のハシゴが始まる。

表参道交差点から神宮前交差点までの500mちょっとだが、5時間以上かかることもザラだ(ザラだと言って神宮前交差点の先にあるZARAまでは行かないけどね、ごめん、オヤジギャグで)。

どの店も、顔見知りの店員がいて、お得意様のような扱いなので、余計に時間がかかる。

本人は、ある意味、それで美人だ、スタイルが抜群だ、何を着てもお似合いです、とか褒められて、満足しているんだろうけど、俺にとっては、ハラハラのし通しだ。というか、一人だけだが、某店員は、同じ種類の人のようだから、明らかに感づいているぞ。


今日は、何故か、いくつかの店には入らなかった。それでも2時間近くにはなったが...

途中、あれっ、って顔をしたのを気づいたのか、友達が表参道の裏通りに今度新しい店をオープンするので、4時から関係者を集めてパーティだからちょっと顔見せないと、とだって。

ちょっと嫌な予感、ただホッとするところもなくは無い。


午後4時前、親に腕を取られて、スゴスゴと並んで歩く。道路を渡って甲状腺治療専門で有名な伊藤病院の角を曲がる。右に左に何回か曲がって、路地裏だけど、小綺麗な5階建のビルの前で立ち止まる。

あぁここだ、と隣から漏れてきた独り言を聞いた後、ビルに一緒に入る。エレベーターで3階で降りると、胡蝶蘭が10鉢以上並んで出迎えてくれた。


店に入ると、すぐに声がかかる。

「ドゥルガじゃない、ありがとう、忙しいのにわざわざ来てくれて。」

周りを見渡すと、案の定、その手の関係者オンリーのパーティだった。

「あらぁ〜ん、ワタルちゃんも連れてきたのぉ。」

声のした方を見ると親の親友で自宅にもよく来るカーリーさんだ...



さて、これでわかったと思うけど、親と言ってたのは親は親でも、戸籍上の父親でした。

戸籍上の父、の本名はアマノヒカル。関係者の間ではドゥルガと呼ばれている。戦の女神の名前が由来らしい。

父は、ある地方の結構大きな病院の理事長の長男に生まれ、上に三人の姉がいる。幼い頃、三人の姉から可愛がられ、というよりおもちゃにされ、どうもそれで、そういう性的性向が植え付けられたらしい。

それを脱するためか、小中では空手を習い段持ち、高校では、親友に誘われ、柔道を始め、メキメキと上達、高三の時に個人戦でインターハイに出たほどになった。

親、特に父(俺にとっては祖父)の期待を背負い、一浪ながらも、国立大の医学部に合格。

順風満帆な人生だったのだが、大学の時に、思わぬ落とし穴が待っていた。


父は、大学では柔道はやめて、ナンパなテニスサークルに入っていたらしい。国立大の医学部生、しかも金に余裕がある。もう入れ食い状態だったそうだが、本人は薄々自分の本来の性向に気づき始めていて、逆に、それをそうじゃないと否定するがために、そのナンパサークルに入れ込んでいたそうだ。

そして、運命の大学四年生。ナンパサークル主催の花見パーティで、酒に酔って、初めて会った女子大生と一晩を過ごしたところ、俺が出来たのだ。

この女子大生(俺にとっては戸籍上の母親に当たるが)、ミッション系の小学校からエスカレーターで高校に上がり、大学は国立の女子大に合格し、上京して来たばかり。つまり、中学校からこの花見まで、父と兄以外の男性と会話したことがないと言うくらいの箱入り娘だった。

母の父は(俺にとっては祖父、会ったことは無いが)名古屋の開業医で、兄も私立の医大生。なぜ父が一晩過ごせたかと言うと、その兄(俺にとっては伯父)に背格好に、その柔らかい雰囲気が似ていたためらしい。

因みに、伯父の名誉のために言っておくが、柔らかい雰囲気ではあるが、父とは明らかに方向性が違う。父の場合、いわゆる女性同士の柔らかさで、伯父は、レディファーストの柔らかさだ。伯父は唯一母方で〜父には内緒だが〜何回も会ってるので間違いはない。


その俺が誕生した夜だが、母は女子寮に入っていたが、中学からの親友宅に何人かで泊めてもらうことになっていたそうだ。


その花見パーティは、父も含めたサークルメンバーで、ふところの暖かい医大生が金を出し合い、ある一軒家レストランを貸し切って開き、シャンパンに、高級ワインに、カクテルと、贅を尽くした内容で参加者のほとんどが記憶が飛ぶほど飲みに飲んだ。

その雰囲気に当てられて、母も口当たりの良いカクテルを飲んだところ、元々アルコールに弱い家系に加え、初めてのアルコールだったので、気づいたら朝だった。母は箱入りだったので、俺が誕生していたとは気づかず、また、薄々気付いても、父や兄にはなかなか言えず、わかったときには、もう()ろせない状態だった...

とは、高一の時に、伯父に懇願して教えてもらった話。


そこからは、父方、母方、どちらの家族も全員を巻き込んでのスッタモンダの大騒動。

父はこの一連の騒動もあり女性に対する苦手意識が芽生え、大学四年生のときは学業に真面目に打ち込んだ。医大の四年生がパスしないといけないCBTなどの試験も軽くパス。父に言わせると、その時は人生で一番何も考えなかった時期だったそうで、この時期のことはほとんど覚えていないそうだ。


人生万事塞翁が馬、禍福は(あがな)える縄の如し...


母は、俺を妊娠中、どうも精神的に参ったらしく、俺が出来たのが不幸の原因だと思い込み(俺はそれを聞いたときはショックだった。後で客観的に考えると、まあ、言ってみればその通りかと思うことは思ったが..)、結局、生まれて何ヶ月かで、母から直接父の手に、半ば強引に渡された。

母はこの後、父親の関係で、名古屋の医者と見合い結婚をし、一男一女の幸せな家庭を築いていると聞いている。


父は強引に赤ん坊を渡され、一時は途方に暮れたそうだが、俺がそれ以上に可愛かったらしい。

父は俺を何とか自分で育てる、と心に決め、育て始めたが、何せ、経験もあるわけでもなく、周りの助けも無いなか、臨床が始まった大学五年生で、途端に行き詰まった。

そのとき手を差し伸べてくれたのが、さっき挨拶をくれたカーリーさんだ。

カーリーさんは、当時、父が住んでた四谷三丁目近くのマンションの同じ階に偶然住んでいて、偶にすれ違い挨拶を交わす父に、同じ種類の匂いを感じていたらしい。

母が押しかけてきたときも、母がマンションの玄関で赤ん坊を抱いてインターホン越しに話していたところに、偶然、カーリーさんは買い物から戻ってきた。カーリーさんがマンションに入る後ろをついて来て、なんだろう、と思っていたら、同じ階に降り、父の部屋前に俺を置いて、何も言わず、帰っていったそうだ。

カーリーさんによると、俺を置いて振り返った母の顔には、満面の笑みがあり、事情を知らない人間にも、それは(おぞ)ましい笑みに見え、背筋が寒くなった。だから、俺が、母とはそれ以来会ってないのはかえって良かったのよ、と、父と酒を飲んでぐでんぐでんに酔っぱらって、俺を慰める目的か、語ってくれたことがある。

そういうことで、カーリーさんはほとんど俺の育ての親だ。

父は、カーリーさんとの付き合いの中で、自分を見つめ直し、本来の性向を見い出した。

父は大学六年生になり、自分本来の性向に向き合い、将来をどうすべきか悩む中で、カーリーさんの助けもあったものの、俺を育てるのに精一杯で、なんと国家試験に落ちてしまった。

医師国家試験の合格率は91.7%。 新卒者の合格率は95.0%。 国立が92.2%...の高い合格率なだけに、本人も、期待していた祖父も、相当大きなショックを受けたのは想像に難くない。

それで、父と祖父の間で一悶着あり、それで俺を育てていたこともバレて、大喧嘩。挙げ句にカミングアウトし、絶縁となった。

そのため、物心ついてからこの方、今に至るまで、祖父に会ったことはない。

父は国家試験に落ちて、すっかり変わった。カーリーさんと一緒に新宿ニ丁目で働き始め、男っぽい振る舞いから、完全にその業界の人になった。因みに、今日の新しいお店を出すって人はそのときのお得意様のひとり。


父が新宿二丁目で働いていた当時の様子は、カーリーさんからというより、消息を定期的に確認していた伯父(母の兄)に聞いた。

伯父は妹が赤ん坊を渡して関係を絶ったのは気付いたものの、その血を引く俺の状況は常に知っておくべきだ、との考えで、父の消息を定期的に確認していたそうだ。

国家試験を落ちたところまでは簡単に知れたが、その後、ぷっつり消息が途切れ、全く手がかりがなく半年。最悪なことも考え、探偵事務所に依頼し、新宿ニ丁目にいるのを見つけた、という訳だ。依頼した探偵が持って来た写真では信じられず、当時、研修医の2年間を終え、レジデントとして、都内の母校の大学に戻ってきた伯父は、忙しい合間を縫って、わざわざ新宿ニ丁目の店に行ったらしい。

勿論、姿形は良く似ているものの、振る舞いや雰囲気が全く異なり、別人の疑いが拭い去れず、何度も本人かどうか、父に確認したそうだ。


カーリーさんから聞いた話だが、父が新宿二丁目で働き始めた前後が、一番お金に苦労したそうだ。実家と絶縁され、仕送りが無くなり、ボロいアパートに移り、だけど、俺というまだ二歳の子供を抱えた生活。金に困らない訳がない。ただ、父はそのとき、生まれて初めての解放感に浸り、苦労を苦労と感じてなかったようでもある。

何とか新宿二丁目の職場に慣れ、貧乏ながらも何とか暮らせるようになり、何も起こらなければ、父はそのまま新宿ニ丁目で終わった筈だ。

だが運命と言うのは、気まぐれで皮肉なもの。

その新宿二丁目の店に、父のいわゆる「初恋の人」が偶然来店したのだ。

初恋の人、仮にAさんとすると、Aさんは中学校、高校の同期で、当時は親友と言っていいほどの仲で、父を柔道に誘ったのも、Aさんだった。

Aさんは、高校を卒業後、現役で関西の私大に進学。大学卒業後、ある京都の大手半導体メーカーに就職。東京の取引先の人に連れられて来店した。父は最初から気づいていたらしいが、Aさんは何か昔の同級生に似ているなぁ、程度で、当然、高校の友人は医者になっているもんだと思い込んでいて、まさか同一人物とは思わず、最後まで気づかずじまい。

Aさんはどノーマルだったみたいで、父が盛んにアプローチするも、父に対して完全にシャットアウト、閉店がらがら状態。で、Aさんは店に偶然来ていた近くの美人のチーママに言い寄る始末。このチーママ、同じ種類の人で整形美人だったそうで、それで、父はショックを受け、自分もそうなれば、と思ったらしい。

そこで一念発起。元々、医者には未練があったので、国家試験を受け直し、美容整形外科医へ一直線という訳。



さて、ヒカルちゃん(本人のものすごい要望によりいつもはこう呼んでいる)と同じ種類の人達が50人くらいのパーティ。

一部の例外を除き、パッと見は、普通の人達に見えるが、生まれたときの性別とは、真反対な人だけしかいない。

でもこういう業界の人だからか、または、その種類の人はご多分に漏れずいろいろ苦労しているからか、外見も内面も魅力的な人が多い。


ヒカルちゃんと一緒に、ヒカルちゃんの知り合いに挨拶をして、話してたら、あっという間に2時間が経っていた。

6時過ぎに店を後にして、歩いて、個室を予約している某高級レストランに行く。

なんだかんだで、久しぶりの親子水入らずの食事となる。

他愛もない話をして、なんだかホッとするひとときでもある。

いつもは俺はどノーマルだと思うも、ヒカルちゃんと一緒にいると、確かな血の繋がりを感じる時があり、感じると同時に、なんか違うかも、という恐れにも似た気持ちが間欠泉のように心の底から湧き上がってくる。

俺には、そういう素養があるのだろうか、と自問する。

はぁ〜、ま、なるようになるか。


2時間ほどして、レストランを出る。歩いて数分の神宮前駅に向かう。人通りは少なくなっているとはいえ、やはり周りの注目を集める。ヒカルちゃんは嬉しそうだ。地下鉄に乗り、さっきの人は完全に川口春奈と間違えてたね、なんて言って来る。お陰で、俺は格闘家と間違われることもしばしば(理由はネットで「川口春奈 彼氏」で調べてください)。

新宿三丁目駅で降りて、二丁目へ向かう。


あっ、それっぽい若者3人がこっちを見てる。金髪、茶髪に坊主の3人組。テンプレの発生か。

心の中で「来るな」と注意するも、聞こえる訳もなく、聞こえても余計に来るのが、この手の人達だ。

「ねぇねぇ、そんなヒョロヒョロはおいといてさぁ、俺たちと遊ぼうよぉ。」

「え〜、断然こっちの方が魅力的だよぉ〜。」と甘えた声を出して、ヒカルちゃんはぐっと俺にしなだれかかる。

あっと、行く手に二人回り込んだ。

「そんなことないぜ。」と、茶髪。

「ちょっと邪魔なんだけどぉ〜。」と、ヒカルちゃん。

「いいじゃん。」とおバカな金髪がヒカルちゃんの腕をとる...

電光石火で地面に投げ伏せられ、腕を決められてる。

「痛え。」「何しやがんだ。」

ヒカルちゃんがドスの効いた声で、「オメエらやるっていうなら、腕の一本は覚悟しろよ!」

その声に驚き、ビビったのか、3人組はそそくさと立ち去っていった。「なんだよぉ〜、オカマじゃねぇかよ。」との捨て台詞を吐いて。

笑えるのは、捨て台詞を吐いたのが、かなり距離をとってからだったこと。

ヒカルちゃんを見ると、ヒカルちゃんも苦笑いだった。


その後は何もなく、いつもの店、ヒカルちゃんが前に働いていた店に到着。時刻は9時過ぎ。

店に入ると「ワタルちゃ〜ん、いらっしゃい。さっきぶりぃ。」とカーリーさんが抱きついてきた。

カーリーさんは何年か前にこの店を引き継いでいて、ヒカルちゃんはちょくちょくこの店に顔を出す。たまには今日みたいに俺を連れて。

どうやら、カーリーさんが店を引き継ぐときにヒカルちゃんが、まとまったお金を出したらしく、この店のホントのオーナーはヒカルちゃんらしい。

まあ、でも、カーリーさんにはいろいろお世話になったので、その恩返しというのが、一番だろうけど...


30分ほどいると、ポツポツ、常連客が来店して来た。

そんなに広い店ではないので、ヒカルちゃんはそろそろ帰るね、ってカーリーさんに言ってる。俺の隣にいたガネーシャさんも、じゃまたね、と常連客の方に移っていった。

程なく、また新たな客が来たのを潮に、店を後にする。

タクシーを拾い、自宅マンションに向かう。

タクシーに乗ってヒカルちゃんをふと見ると、ため息ついていた。「忙しいの?」「まあね...ねぇ、肩貸して。」

しようがないか、と、ヒカルちゃんの腰に手を回し、引き寄せて、肩を貸す。

祝日の夜なので、道は混んでおらず、30分もかからず、自宅マンションに到着。

寝ていたヒカルちゃんを起こし、カードで支払って、タクシーを降りる。

「眠〜い、部屋まで抱っこして。」

「えっ、やだよ。」と真顔で言うと、

「パ・ソ・コ・ン♪」...脅迫された。

仕方なくお姫様抱っこで、家の玄関まで。

ヒカルちゃんは、そのままシャワーへ、俺は自分の部屋へ。

一時間もしたか、ガチャっとドアが開いて、バスローブ姿のヒカルちゃんが顔を覗かせる。

「お風呂入れたよ。入ってね。あ、それから明日は札幌。ちょっと早いからね。」

「わかった。じゃ、おやすみなさい。」

「おやすみ〜」

ということで、MOBな俺を巻き込んだ、ヒロイン?のヒカルちゃんのある一日が終わりましたとさ。


-to be continued?-

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