4-15 古文書の解読・続
ともかく、後片付けを終えた僕たちはその日の活動を終え思い思いにバスの車内で寛ぐ。ヒロは色んなアナログゲームをお土産で持ってきてくれて今はオセロをしている最中だ。
「どうして……四隅を取ったのに負けるんだッ!」
ヒロが真っ白な盤に絶望すると、ナビ子ちゃんはしてやったりとほくそ笑む。
「あはは、あんなのハンデに決まっているじゃないデスか。ワタシが楽しむための」
見ての通りナビ子ちゃんはあらゆるゲームで無双し人間たちを蹂躙する。こうしてロボットはやがて人類を支配するのだろうか。
「クソ! モヤシ野郎、このまま負けるわけにはいかないヨ! 次の玩具を持ってこい!」
「おうよ、光姫! 人間の意地を見せるんだ!」
共通の敵を前に光姫ちゃんとヒロは互いに手を組んで共闘する。最初は仲が悪いようにも見えたけど案外いいコンビなのかもしれない。
「ん、ありゃ」
だけどリュックをガサゴソと漁っていたヒロはあるものに気が付く。彼はそれを一旦外に出し、それ以上気にせず玩具を探し続けた。
「おや、それは何デスか?」
「ああ、古文書のコピーだ、気にするな」
「ちょっと天女伝説について調べていて。資料もこっちの世界に持ってきちゃったみたいです」
うみちゃんは補足で説明をしたけど僕はそこまで興味がなかったので、取りあえずふーん、と適当に相槌を打った。
「笛と鼓の音と、天女伝説か」
「ああ、あたしたちは向こうの世界で調べてたんだよ。正直手詰まりだったけど」
つるぎちゃんは芳しくない進捗状況を教えてくれる。出来ればこのままわからないままでいてほしかったけど、僕のために頑張ってくれている二人にそんな事を言えるわけがないし……。
「で、俺が自力で解読しようとしたんだがよくわからなくてな。古文書が読める知り合いなんていないし。いや、伝手はあったんだが断られてな」
「ワタシなら多分読めますよ?」
「え」
だけどさも当然かのようにナビ子ちゃんがそう言ったのでその場にいる全員が驚いてしまう。もちろん、僕も。
「ほ、本当か!?」
トンネルの出口を見つけヒロは歓喜する。ナビ子ちゃんもまたいつになく張り切ってしまったようだ。
「はい、早速解読しますか? みのりさんが元の世界に戻れるヒントがあるのなら協力は惜しみませんよ!」
「ああ、頼む!」
つるぎちゃんもそう言ったので遊びの時間は強制終了となる。光姫ちゃんたちはいそいそと片付けを始め、僕が望まないままシナリオは進行してしまった。
「こいつはラッキーだナ」
「本当ですね、みのりちゃん! 向こうに帰れるかもしれませんよ!」
「そ、そう上手くいくかなあ」
光姫ちゃんと先生も喜んでいたけど、それでも後ろ向きな僕につるぎちゃんはガハハ、と笑って言った。
「まずは中身を見てからだ。けどもしかしたら、があるかもな」
「う、うん」
もしかしたら。そのニュアンスはみんなと僕とでは大きく違っていた。僕にはただ、自分にとって望ましい内容であるように祈る事しか出来なかったんだ。