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4-7 水浸しの海浜公園

 次は少し移動して僕らは人工的に作られた海浜公園に向かった。ただまあ、そんなものが長い年月に耐え切る事なんて出来るはずもなく、砂浜はすっかりえぐられ周囲の建物もあちこち水浸しになってしまっている。


 でもこれはこれで素敵な風景だ。モーターボートを見つけたナビ子ちゃんはオールを使って手動で動かし、彼女の代わりに僕がカメラを持って周辺を探索する事になった。


「ゴンドラ通りまーす。イタリアのベネツィアはこんな感じなのでしょうか?」

「建物もそれっぽいし、うん、いい画が撮れるよ」


 かつて道があった場所をボートで進み、僕は浸水した建物にカメラを向ける。洋風の建物の下のほうにはフジツボがびっしりついていて、人間の代わりに小魚がひっきりなしに訪問していた。


 海鳥は施設の屋根で羽を休め簡単に食事にありつけるためかどこかだらけている。ここもまた野生動物のコミュニティが構築されているらしい。


「いやあ、何だかいいデスね、この風景」

「そだねー」


 ボートはゆらゆらと波で揺れまるで自分の身体が海の上に浮かんでいるみたいだ。ミャアミャアという海鳥の鳴き声と波の音を聞いていると、次第に眠くなってきてしまう。


「よいしょっと」

「おっと」


 不意にボートががくんと揺れたので半分眠っていた僕は驚いてしまう。どうやら建物内部にナビ子ちゃんが侵入を試み、ドアがあった場所を通過出来る様にガレキを利用して方向転換したようだ。


「すみません、びっくりさせてしまいました?」

「いや、大丈夫、おかげで目が覚めたよ」


 僕は寝ぼけ頭をしゃんとさせて建物内部を撮影した。


 なかなか豪華なその施設は格式の高い場所である事はすぐに理解出来る。奥の方はガラス張りになっていて海が一望出来、左右対称のいくつも並んだ椅子の列から僕はここがどんな場所であるのか推理してみた。


「ここは結婚式場だったのかな」

「多分そうなんでしょう。こういう場所で結婚式が出来れば素敵デスね。また結婚式をしてみますか?」

「お金がかかるだろうけどね。財布と僕の心が持たないからやめておくよ」


 僕は以前ナビ子ちゃんと結婚式の真似事をしてドキドキしてしまった事を思い出してしまう。別にそういう人を否定するつもりはないけど、僕はナビ子ちゃんと友達でいたいから、もう勘弁してほしかった。


「むー、ナビ子と結婚は嫌デス?」

「結婚式はそう何回もするものじゃないよ。ご祝儀を払う人の気持ちも考えなよ」

「残念デス。では一本締めだけさせてください。いよーお、パンパン! もひとつ、パンパン! いよーさん、パパンッパン!」


 美しい式場には不釣り合いな景気のいい拍手の音が響く。何だか福岡を愛する岡崎さんの姿が見えて、ムードが台無しだった。


「あれ、僕の知ってる一本締めと大分違う気がするけど。っていうか一本じゃないじゃん」

「それは言わない約束デス。追及したら福岡人にぼてくりこかされます」

「そっかー」


 ナビ子ちゃんは何で福岡の事にこんなに詳しいのかな?

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