3-35 古文書の解読
そんなわけで俺は市立図書館で文献の解読作業を進めている。図書室には古文書の読み方に関する資料も多くあり問題解決のための材料は十分揃っていた。
俺はコピーした文献を読み解読した内容をノートに書き写す。だがそもそも天女伝説に関わる部分を探す事から始めないといけないのでなかなかしんどくはある。
「ほへー、御門君、すごいね。もうこんなに進めて」
「そうでもないですよ」
作業を見守っていたうみちゃんは俺の手際の良さに感心してしまう。
「言うても俺は天才もどきです。中堅国立大学の学生程度の頭脳はあると自負していますよ」
「もどきですかあ。でも私はちょっと、御門君は自分の事を過小評価しすぎだと思いますよ」
「うみちゃんは過大評価しすぎなんですよ」
俺は談笑しながら彼女が持ってきたコーヒーを飲みホッと一息つく。そして休憩も兼ねてスマホの動画サイトを立ち上げた。もちろんイヤホンをつけてな。
「どんな動画を見てるんですか?」
「都市伝説の調査です」
画面をのぞき込んだうみちゃんに俺は適当にそう言った。
「都市伝説?」
「俺の幼馴染の鈴木みのりって奴が並行世界から動画を投稿しているってあれですよ。そこそこ有名ですけど知りませんか」
「え、鈴木みのりって、あのタレントの鈴木みのりさんですか?」
先生は当然彼女の名前を知っておりひどく驚いていた。ちょうどいい機会だし話せる範囲で事情を話しておくか。変な人間と思われるかもしれないけどさ。
「実は……」
そして俺はかいつまんで事情を話す。
「信じてくれなくても構いませんが俺の見立てでは天女伝説と都市伝説は関連があるはずなんです。あいつをこっちの世界に戻す事が出来る方法を探すために俺は天女伝説を調べているんですよ」
「そうだったんだ」
その馬鹿げた話を先生は笑い飛ばす事なく真面目に聞いてくれる。そして、何も言わずに作業を再開したんだ。
「ならちゃんと調べないとね」
「……ありがとうございます」
その後、動画をBGMに俺達は黙々と作業を続ける。
俺が思っているよりもこの世界は少しだけ優しいのかもしれない。ここ最近ふとそんな事を考えてしまうよ。
……………。
………。
…。
けどなんだか眠くなってきたな……頭が……。
うみちゃんのほうを見ると彼女もまたウトウトとしていた。小西谷の一件で忙しいだろうに無理をさせすぎたかな……反省反省。
(ん……?)
ザ……ザッ!
耳元にノイズが走り、慌てて俺はスマホの画面を見る。
そこにはみのりとナビ子が楽し気に廃墟の街を探索している姿が写っており、俺の目は一瞬で覚めてしまった。
どうやら向こうの世界と繋がったらしい。とするとこの後は多分……。
だけどそれと同時に意識が遠のいてしまう。だが二度目ともなれば慣れたもので、俺はその展開をすんなりと受け入れてしまった。
それにいつ転移してもいいよう今回はちゃんと準備しているし。ま、何とかなるだろう。