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3-29 白壁土蔵群の戦い

 市立図書館とうみちゃんの神社はそんなに離れていない。自転車を適当に十数分漕げば辿り着く程度だ。


 あれやこれや調べまわったせいで日没も近いし今日中に話を聞くのは無理かもしれない。しかしせめてアポイントメント程度は取り付けておきたい。あと、ついでにこの前の謝罪も。


 くどいようだが何事もなければすぐに辿り着く。これはいわゆるお使いイベントだ。ただの作業になるのでゲームとかでは嫌われがちだが現実世界ならば楽なので大歓迎である。


 でもやっぱりイベント戦闘とかがあると楽しいよな。ゲーマーの俺はすっかりゲーム脳になっていたのだ。


 ズドンッ!


「ッ!?」


 だが白壁土蔵群エリアに入ってすぐ、待ち構えていたかのように耳をつんざく発砲音がすぐ間近で聞こえる。


 それは田舎に住む俺たちにとっては割と聞き慣れた音ではあるが、山の中ではなくこのような場所で聞くのはあり得なかった。


 まったくこんな事思うんじゃなかった。やっぱりヌルゲーが一番だよ!


「い、痛い、痛いィッ!」

「ぴーひゃら、ぽんぽん。ぴーひゃら、ぽんぽん」


 そして自転車を急停車させしぶしぶ右側に視線を向けると、そこには猟銃を持ってへらへら笑うジジイがいた。やはり例の如くぴーひゃら、ぽんぽんと実に幸せそうに呻いている。


 すぐ近くにはスーツを着た男性が下半身から血を流して泣きわめいている事からおそらくいきなりこいつに撃たれたのだろう。男性の周囲には血だまりが出来ていてかなりヤバい状況である事はわかる。


 ジジイは二発目を発射しようとして男性に銃口を向ける。生き残る事が目的なら巻き込まれないうちにとっとと逃げるという一択しかないだろう。


「ああもう!」


 だが無謀にも俺は立ち向かう事を選んだ。自転車を全速力で漕ぎ、ジジイが発砲する直前に体当たりをぶちかます。


 ガン、となかなかの衝撃が俺にも襲い掛かりジジイは勢いよく後方に転倒してしまった。腰の骨が折れたとしても正当防衛だからセーフだろう、うん。


「よっと」


 念には念を入れ俺は落下した猟銃を拾って屋根の上に放り投げる。これでもう大丈夫だな。


「んで、大丈夫ですか!」

「痛い、痛いよぉ~!」


 泣き喚く男性が撃たれた場所は太もものあたり。かなりの量の血が流れており脈がやられているかもしれない。早めに手当てしないといけないだろう。


「今救急車を呼ぶので我慢してください!」

「な、何があったんですか!?」

「って、その必要もないですか」


 周囲からは銃声や悲鳴を聞いた住民たちがわらわらと湧いて来る。これだけ人がいればどうとでもなるだろう。


「そこのじいさんが猟銃でこの人を撃ちました。誰でもいいので警察と救急車を呼んでください! あと応急処置が出来る人はいますか。ついでにこのじいさんも何かで縛ってください!」

「わ、わかった!」


 俺は集まった人に指示を出しスマホをポケットにしまう。だが流石にこの状況で本来の目的である神社に行くという目的は達成出来そうになかった。


「止血するものを持ってこい! 早く!」

「もしもし警察ですか! 今人が撃たれて……!」


 住民たちはすぐに行動を開始し、余裕が出てきた俺はジジイに視線を向けた。


 ぐったりとしているが死んでないよな。百パーセント向こうが悪いとはいえやはり今後の事が不安になってくる。自転車系は賠償が多額になりがちだからなあ。


「結束バンドしかないわ。これで縛れなくはないけど」

「俺、普段から荒縄と手錠持ってるけどギャグボールも必要かな? ついでに真っ赤なろうそくもあるよ」

「いや、結束バンドだけでも大丈夫だ。後ろ手で親指だけを縛れば絶対に抜け出せないよ。俺仕事で慣れてるからするよ」


 色々と町の今後が心配になるやり取りが聞こえてきたが無視しよう。安心しきった俺は警察にどう言いわけをしようか考える事にした。

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