3-27 情報収集・犬井書店
――御門善弘の視点から――
情報を求めた俺はまず自分一人で市内の犬井書店を調べる事にした。しかし俺は普段の癖でついつい漫画本のコーナーに行ってしまう。
「お、新刊出てる」
俺は早速埼玉を舞台にした某ゆるーりまたーりな作品を手に取ってみた。この主人公たちも十年くらい高校生活をやっているよなあ。いつ完結するんだろう?
他にも地元出身の新進気鋭の漫画家、関長松久という作家の特設コーナーも出来ている。そういえばこの人なんか賞獲ってたなあ。趣味じゃないけどちょっと読んでみるのもいいかもしれない。
ちなみに彼女たちは元々星鳥漫画王国という同人サークル出身の四人組の作家で、メンバーの名前を一文字ずつ取り関長松久というペンネームの漫画家になったそうだ。BL、百合、ケモナー、おもらしと、様々な性癖の持ち主の彼女たちが生み出す作品は少々青少年にはよろしくないが、その作品は高く評価されている。
「違う違う」
いかんいかん、今日は漫画を探しに来たのではない。俺はそっと棚に本を戻した。
しかしどこを探すべきだろうか。郷土のコーナーかな。普段は気にも留めていないから全く見当もつかない。
「よいしょっと」
お、ちょうどいいところにもふもふした店員がいる。敏腕アルバイターの彼は山陰を中心に展開するこの書店でもアルバイトをしているのだ。緑のエプロンがよく似合いいつもにも増してチャーミングである。
「おーい、もふもふ君、仕事中すまん」
「ん、どしたのー?」
彼は本を整理する仕事の手を止め俺の対応をしてくれる。仕事の邪魔になるのも悪いし手短に質問しないとな。
「白倉の天女伝説について調べているんだが、どこにあるか分からなくて。一般に知られていないような部分まで記載されているような奴がいいんだが」
だけどもふもふ君はうーん、と困ったような顔になってしまう。
「そういうのはうちよりも、としょかんやしりょうかんにいったほうがいいとおもうなー」
「あ、そういうものなの?」
「うん。それにここにあるのはおかねをはらわないといけないし。きんたいしゅつのやつとかにはのっているんじゃないかな」
「成程な、ありがとう」
書店員でありながら彼は売り上げの事を考えずに正直に役立つアドバイスをしてくれる。こういう所が町の人々から慕われる理由なのだろう。
「助かったよ、それじゃあな」
「うん、がんばってね。またのおこしをおまちしておりますー」
俺は店を出て図書館を目指し自転車を走らせた。市立図書館は六時くらいに閉まってしまうから禁帯出の本を調べたいなら早めに行動しないとな。
けど空が曇ってるなあ。折り畳み傘かレインコートでも持ってくりゃ良かったかな。まあしばらくは図書館にいるし関係ないか。