3-20 お社の修理
その後も市街地を調べお社を作るための材料を探して回る。お金持ちの家にあった大きなテーブルや家具は朽ち果てておらず、ナビ子ちゃんのブレードによって切断されピカピカの木材へと変わりお社を彩る飾りも適当に見繕っておいた。
これだけあれば十分だろう。ナビ子ちゃんはカメラのセッティングもして僕たちは早速作業を開始する。お社を作るなんて初めての事だけどタコの神様のために立派なお家を作らないとね。
「ちゅるるー!」
「はは、応援してくれるのか?」
ヒロはノミと金槌で木材の細かい加工をしながら、チアダンスを踊るタコの神様に笑みを向ける。
「ほわほわデスー」
「こりゃあかんよ、作業の邪魔だな。可愛すぎて見とれてしまう」
「そだねー」
僕たち女性陣はやっぱりタコの神様にメロメロになってしまった。短い手足を懸命に動かす姿とか本当にかあいいよ。お持ち帰り~、したいね。
「揃いも揃って魅了のバステか。これがゲームの中ならパーティー全滅のピンチだな。この邪神もどきのタコのどこがいいんだか」
「仕方ないよ、かあいいものはかあいいんだから。ヒロはもう少し人間としての心を持とうよ」
僕はちゃんと仕事してくれるヒロに対してそんな苦言を呈した。こんな感じにだらだらしていたから作業は一向にはかどらず時間だけが過ぎてしまう。
「そうだ、ナビ子。あとで構わないからそのカメラのデータを俺のスマホに転送する事って出来るか?」
「あ、はい、出来ると思いますよ」
「なら頼む」
作業中ヒロはそんな事をお願いする。何でそんなものが必要なのか僕は少し疑問に思ったけど、思い出が欲しいのだと勝手に考えて特に深く追求する事はなかった。
さて、木材も加工出来たしいよいよ組み立てだ。鉄の釘はないから組木細工のように木材同士を合体させていく。下準備が大変だったけどここからは割と早めに完成し、なかなか見事なものが出来上がった。
「おー、いい感じ。じゃああとは細々したものを、と」
つるぎちゃんは材料置き場からガラクタを取り出しお社に飾っていく。そしてそれっぽくなったところで僕とヒロは顔をしかめてしまった。
「なんかこういうのサ○レンで見たわ」
「なかなか名状しがたい、独特なセンスのお社だね」
開運グッズや子供の玩具を寄せ集めて作ったオブジェはお社というよりも理解し難い芸術作品のようになってしまった。なかなか禍々しく触ると呪われそうだ。
だけどタコの神様が駆け寄り、
「ちゅるるー!」
と可愛らしく嬉しそうに飛び跳ねたので、何もかもがどうでもよくなってしまう。
「まあ気に入っているみたいデスしいいじゃないデスか」
「おう、あたしとしても会心の出来だ。文句は一切受け付けないぞ」
ナビ子ちゃんとつるぎちゃんからすればこれが完成形らしい。ヒロは少し苦笑しつつもこの有様を受け入れたようだ。
「ま、別にいっか」
「うん、これで完成だよ!」
僕は無理やり締めくくりミッションコンプリートの宣言をする。子供の工作のような出来栄えだけど、最善は尽くしたからね。