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3-18 仲直りしたヒロとみのり

 ――鈴木みのりの視点から――


「とまあ、そんな事があって僕はこっちの世界に来たわけさ」


 ヒロがそんな葛藤をしている事なんてつゆ知らず僕はナビ子ちゃんと海を眺める。震災の事とかも含めてひとしきり話せる事は話したので何だかどっと疲れてしまった。


「成程。でもワタシは知っています。それは年頃の男の子にはありがちな話デス。先ほど再会した時の反応を見る限りヒロさんはずっとみのりさんの事を思っていたように感じます。おそらくみのりさんに言った酷い言葉はヒロさんの本心ではなかったのでしょう」

「……だろうね」


 ああだこうだ言われなくてもあんな顔を見てしまえば一発で納得してしまう。ヒロはずっと僕の事で苦しんでいたんだって。


「でも……」


 でも。その後に僕は言葉を続ける事が出来なかった。罵倒の言葉も、赦しの言葉も、何も言えなかったんだ。


「ぶすー」

「どうしたの、ナビ子ちゃん。そんな天○源一郎みたいな顔をして」


 それはとてもキュートな天○源一郎だった。不満げな彼女はとうとう怒り出し地団太を踏んでしまう。


「なんだかとってもプンプンデス! しゃらくせーデス! 女だったら正面から向かってこいデス!」

「え、ええ~」

「というわけでとっとと仲直りしてください! 可及的速やかに! いつかじゃなく今デス!」


 ナビ子ちゃんは甲高い声で叫びやや強引に僕を動かそうとする。だけど僕も内心そうすべきだと思っていたし、一瞬躊躇ったけどその提案をすんなり受け入れてしまった。


「……わかったよ。でもどうすればいいかな。悪いのはどちらかって言うとヒロだし」

「つべこべ言わずに! こういう時は美味しいものを食べて仲直りしましょう!」

「え、うん?」


 それは少しずれた発言だったけどその時のナビ子ちゃんの目はとてもキラキラしていて、何となく半分くらいはそっちが本命の目的なのだと僕は理解してしまった。


 だけどきっかけは何だっていい。


「そうだね。僕もつまらない意地で親友を失いたくないから」

「はいデス! それじゃあ今日のお昼ごはんは腕を振るいますよ~!」


 ナビ子ちゃんはいつになく気合が入っていた。僕はほんの少し緊張していたけど勇気を出してバスに戻る事にしたのだった。



「あっ」


 バスに戻った僕はちょうど車内から出てきたヒロたちと鉢合わせしてしまう。向こうも気まずそうだったけどすぐに僕は頭を下げる事を決意した。


「「ごめん!」」


 だけど同時に謝罪したので、一緒に驚いた表情になって顔を上げ見つめ合ってしまう。


「え、えと、そっちから」

「いや、みのりのほうから」


 遠慮しあっている僕たちにつるぎちゃんは何を思ったのか、こんな事を言った。


「じゃああたしが言うよ」


 これはもしかして?


「じゃあ俺が」


 うん、空気を読もう。


「じゃあ僕が」


 そして最後にナビ子ちゃんが、


「ではワタシがやります」


 と言ったので、みんなで一斉に、


「「どうぞどうぞどうぞ」」


 と言っておいた。やっぱり幼馴染、見事な連帯感だね。


「って何してるんデスか?」

「なんだかついボケたくなって。今は反省しています」


 ナビ子ちゃんはちょっと呆れたようにそう言うと、事の発端であるつるぎちゃんは肩をすくめて謝罪した。


 だけどおかげで場の空気が和んだ。僕らは全員で照れ笑いをして、まず先にヒロが口を開いたんだ。


「ごめんな、あの時あんな事言って。ずっと謝りたかったんだ。それと……瓦礫から俺を庇ってくれて、ありがとう」

「ううん、もういいよ。ヒロも、ずっと僕の事を気にかけてくれてありがとね」


 やっぱりヒロはあの頃と変わらない、優しい友達思いの親友だった。長年のしこりはこんな感じであっさりと融解してしまったんだ。


「よかったな、ヒロ、みのり」

「はいデス! めでたしめでたしデス!」


 つるぎちゃんと新しい親友のナビ子ちゃんもその和解を祝福する。だけどその余韻に浸る間もなく、ナビ子ちゃんは笑顔でこう告げた。


「というわけでお昼ごはんにしましょう! ちょっと遅めデスけど!」

「どういうわけで?」


 この腹ペコロボットの食欲を知らないヒロは苦笑するけど、つるぎちゃんは全く気にせず嬉しそうな顔になってしまう。


「まあいいじゃないか、腹減ってるし。流石に固形食糧だけじゃ味気ないしな」

「うん、一夜干しも完成した事だし早速料理を始めようか」

「はいデス! ウキョキョ、ご馳走が待ってますよ~!」


 さあ、今回のお昼ごはんは再会と仲直りの記念を祝したご馳走だ。いつも以上に頑張らないとね!

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