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3-12 VS擬態ハザマンダ

 べちょん!


 そして、建物の影から音の主である巨大な何かが現れた。


 そいつはオオサンショウウオの様な見てくれをしていたがその大きさは小型トラックほどある。その巨大な口を開けば人間なんて容易に丸呑み出来るだろう。べちょん、べちょんという音はこいつの足音だったみたいだ。


「オロロロロォン」


 オオサンショウウオの怪物は口を大きく開けてまるで喜んだような表情になる。粘り気のある唾液は糸を引き、生臭い吐息を吐いてごちそうを前に興奮しているようだ。


 あれは何だ。混乱して頭が正常に働かない。だがとても恐ろしいものだという事はわかる。


「なあ、つるぎ」

「うん」

「逃げるぞ!」

「ああ!」


 無力な人間にはそんな選択しか出来ない。俺達は即座に背を向けて全力で折れそうな足を無理やり動かした。


 とにかく追いつかれる前に少しでも遠くに逃げなければ!


「オロロロロ!」

「こっちくんな!」


 オオサンショウウオの怪物――それは昔、とある世界で魔獣ハザマンダと呼ばれていたらしい。


 見た目に反して意外と素早く人間が全速力で逃げればなんとか振り切れるが、残念ながら今は空腹と渇きでまともに動けない。元々無尽蔵のスタミナを持っているつるぎはともかく引きこもりの俺なんかは格好な餌食なわけで。


「ヒロッ!」


 追いつかれ、ハザマンダが大口を開けたところでつるぎはたまらず叫ぶ。


「のおッ!?」


 それを合図に敵が食らいつく直前、俺は横っ飛びをして緊急回避をしたが受身をうまく取れず、叩きつけられるように着地し全身に鈍い痛みが走った。


 狩りゲーでは日常的に行う動作だがこうした行為をするとガッツが減ったりする。そしてガッツがなくなるとコマンドが実行出来ずに攻撃を食らい俺はその度にイラついたものだ。


 だが今なら心の底から思える。酷使してスマンと。今後はもうちょっと優しい気持ちでゲームをプレイしよう。その機会があればだけど。


 何故かハザマンダはすぅ、と大きく息を吸い込み、近付いてこない。だがこれはいわゆる強力な攻撃の前のモーションだ。急速に空気を取り込むという事は多分アレだよな!


「オボボボボッ!」


 俺がすぐに立ち上がり逃げ出すと同時に、予想通りハザマンダは燃え盛る火炎の息吹を吐き出す。周囲の雑草は瞬く間に黒焦げになり痛みを感じるほどの熱さが襲い掛かった。


「うぁ熱ちちッ!?」


 あと一瞬でも遅ければ黒焦げになっていた。その事実に俺はパニックになりまともに思考も出来ない。


 俺の体力は弄ぶように奪われ、捕食者は再びのしのしと俺目掛けて近付いてくる。間近に迫る死の恐怖に俺は身体がすくんで動けなかった。


「うおりゃあッ!」

「ゴバァッ!?」


 だが次の瞬間俺の頭上をつるぎが跳躍した。彼女は倒れた道路標識を武器にして斧で薪を割るようにハザマンダの脳天に一撃を浴びせたのだ。流石の怪物もこの強烈な攻撃には怯んでしまう。


「逃げるぞッ!」

「あ、ああ!」


 つるぎは俺の手を引っ張り、我に返った俺は慌てて逃げ出す事を選んだ。この化け物が昏倒している間に早くこの場を離れよう!

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