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6-25 VS擬態ヤマタノオロチ

 オオオオン!


 だけどその時地の底から響いてくるような咆哮が聞こえる。まるで壊れたコントラバスのようにひどく耳障りで恐ろしい音だ。


「ねえ、ナビ子ちゃん、この声は何かな」

「何でしょうね?」


 ナビ子ちゃんは引きつった顔で人型免疫機能の群れを撃破する。僕にも大体この後の展開がわかったため即座に身構えてしまった。


 オオオオン!


 そして奴は大地を割り、恐怖の権化とも言えるその姿を僕たちに見せつけた。


 その免疫機能は僕たちが今まで戦ってきた敵とは比べ物にならないくらいほど禍々しく、同時に神々しさを放っていた。誰に言われずとも自然と畏怖の感情が生まれてしまう程度に。


 それは山ほどの大きさはあろうかという大蛇だった。複数ある頭には裂けた口があり、一目で人を食らう怪物である事がわかる。


 僕はこいつの名を知っている。日本神話最強の龍神、ヤマタノオロチだ!


「ふむ、ヤマタノオロチに擬態しましたか。悪くないチョイスデスね」

「で、どうするの、ナビ子ちゃん!」

「さすがのワタシでも大きすぎてあれは倒せません。無視しましょう!」

「だね!」


 ヤマタノオロチの頭の一本が触手のように伸びて僕らに襲い掛かる。すぐに回避しナビ子ちゃんは去り際にガトリングの弾丸を撃ち込み頭部を破壊するけど、不定形の怪物にはあまり効果はなくすぐに再生してしまう。


 うねうねと動く首は大蛇というよりもタコっぽいなあ。何にしたって強敵には違いないけれど。


 ヤマタノオロチは首を鞭のようにしならせ広範囲に攻撃し僕たちに襲い掛かる。廃墟の建物は木っ端みじんに破壊され、一瞬にして瓦礫に変わり土埃が舞った。


 オオオオン!


「ッ!」


 大蛇の首の一本が横方向に一撃を放ち僕は咄嗟に地面に倒れ込む。背中を風が切り、建物や廃車は薙ぎ払われ周囲はとても綺麗になってしまった。


「みのりさん! 大丈夫デスか!?」

「わわッ!」


 ナビ子ちゃんは倒れた僕をお姫さま抱っこして全力で走り出した。ジェットコースターのように、急加速して。


 シートベルトも何もないからなかなかの恐怖である。ナビ子ちゃんは廃墟や泥の塊を足場にして、重力など存在しないかのように町を縦横無尽に駆け回った。


 物凄く早く移動出来るのはいいけれどこの方法は怖い以外にもう一つ問題がある。それはナビ子ちゃんの両手が塞がってしまうという事だ。


 オオオオン!


「クッ!」


 ヤマタノオロチはチャンスとばかりに攻撃を激化させる。ナビ子ちゃんが廃墟の屋根から飛び降りたそのコンマ数秒後、建物は真上から振り下ろされた大蛇の首によって粉砕された。


「ナビ子ちゃん!」

「大丈夫デス! 信じてください! とにかく急ぎますよ!」


 僕はたまらず叫ぶけどナビ子ちゃんには勝利の道筋が見えているようだ。ならば僕があれこれ口出しする必要はないのかな。


 リスクを承知で行動した彼女は素早く移動する事を優先させ、人外の身体能力でほぼ一直線に白倉山に向かう。その間一切反撃出来ず免疫機能がどんどん追いかけてくるけれど、ナビ子ちゃんはあまりにも速くのろまな連中には到底追いつく事が出来なかった。


 そしてナビ子ちゃんは白倉山のふもとにある白倉市庁舎の屋上に着地した。そこまで来たところで僕はようやく大地を踏む。


「ふひー、何とか撒きましたね」

「う、うん、おえっぷ、吐きそう」


 とんでもなくデンジャラスなジェットコースターだったからちょっぴり足元が覚束ないけれど。ただヤマタノオロチは撃破したわけではなく攻撃範囲の外にいるだけなので、まだまだ油断は出来ない。


「我慢してください! あと少しの辛抱デス! さあ、白倉山を登りましょう!」

「うん、わかった!」


 あと少しでゴールなんだ。ここが正念場だからこれくらいの乗り物酔いは耐えないとね。さあ、ラストスパートだ!

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