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6-19 かつての仲間の助け

 アタシは店内を探し回りようやくそれらしい人影を発見する。うつぶせに倒れていて顔はわからないけれどその金糸の様な金髪ですぐに彼女だとわかった。


「クリス! 生きてるカ!?」

「う、うぅ……ごほ……助け……」


 声をかけて肩を貸すと彼女はフラフラだったけれどどうにか立ち上がる事が出来た。だけどもう時間はない。すぐにアタシは一緒に脱出を試みる。


「ひぃ、ひぃ……」

「うぅ……」


 けれど煙が充満した店内は一メートル先も見えなかった。自分が今どこにいるのかもわからず、まるで深海の中にいるようだ。


(どこ……出口はどこなんダ)


 クソ、考えなしに突っ込むんじゃなかった。


 息が苦しい。意識がもうろうとしてくる。


 はは、これじゃあ犬死にじゃないカ……こんなの嫌だ。


 これじゃあ一花に合わせる顔がない。それにまだ真壁家の人間に恩返しもしていない。アタシはこんなところで死ぬわけにはいかないのに……!


 ――こっちっす。


「誰……?」


 けれどその時声が聞こえた気がした。クリスは声の聞こえた方向に向かい、ゆっくりと歩き始める。


 そこには光があった。橙色の柔らかい光はアタシたちを導く様に先へと進んでいく。


 ――ファイトっす! 諦めちゃダメっす!


「わかってるって……」


 それが死神だったのか極限状態が生み出した脳の錯覚かどうかはわからない。けれど確かにその声は聞こえた。それはとても優しく、絶望の中にいたアタシたちを勇気づけるものだったんだ。


「そうか……助けに来てくれたのか……我が戦友よ……」

「クリス……?」


 煙を吸って頭がおかしくなったのかクリスはわけのわからない事を呟いた。だけどアタシにはそれを気にする余裕なんてなかった。


 もう、アタシは限界だったから。


 ガクン。体力を使い果たしたアタシはその場に崩れ落ちてしまう。同時にクリスも。


「……ったく、世話の焼ける奴だなァ。今回は放っておくつもりだったのによ」

(誰……?)


 再び誰かの声が聞こえる。今度こそお迎えが来たのだろうか。天使か悪魔か知らないけど。


 その眼鏡をかけた男は繁華街のチンピラのようで、冥府からの死者にしては少しばかりチャラチャラしている。


 でもアタシにとっては神様そのものだって思えるくらい、それは無条件で安心感を与える存在だった。


「○○○、お前はマルクスを頼む」

「ああ、わかった」


 アタシの身体は宙に浮く。そいつの背中はとても頼もしく、幸せ過ぎてだんだん眠くなってしまう。


 ああ、やっぱりこいつはやっぱり神様なんだ。何があってもアタシを助けてくれる……優しい神様だ。


「……生きてくれ、グアンヂィー


 神様は私の本当の名前を口にする。今ではすっかり呼ぶ人間もいなくなった懐かしいその名前を。


 アタシの身体は光に包まれる。これは天国への扉なのかな。空気も澄んでいて青空が見える、とても素敵な光景だった。


「山口さん、天神さん、無事ですか!?」

「だいじょーぶ?」

「ちー」

「おう、後任せるわ。俺らは野暮用があるから」

「え、ええ!」


 あれ、どうして天国にうみちゃんたちがいるんだ? でも……どうでもいっか。眠いし……。

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