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6-18 どろぼうはだめよー!

 ――山口光姫の視点から――


 階段から二階に向かったアタシは周囲を包む黒煙に恐怖してしまう。煙は意思を持っているかのように逃げ遅れた人間を探しているようだった。


「派手にやられてるナア」


 アタシは様々な有害物質を含んだその煙を吸い込まない様に、濡らしたハンカチで口元を覆いながらクリスを探す。これでもう逃げてるとかだったらシバくぞ。


「オロロロォ」

「うお」


 火災の原因であるハザマンダが現れたのでアタシは即座に物陰に身を隠す。奴はこちらに気付く事なく我が物顔で店内の通路をのしのしと歩き、その場を去っていった。


「もふもふ、テメェデカいんだからついてくんなヨ。見つかるダロ」

「ごめんねー」

「ちー」


 あたしはすぐそばで縮こまるもふもふ君に文句を言った。というか完全に見えてたはずだけどあの怪物もバカなのか?


 ジャラジャラ……。


「まあいい、とっとと先に……って?」


 その時小さな金属がぶつかり合う音が聞こえ、アタシはすぐに音が聞こえたほうへと急行した。もしかしたらクリスかもしれないし。


 けれどそこにいたのは避難民でも怪物でもなかった。


「うっほ、大漁大漁!」


 その中年の男は店の腕時計や宝石といった貴金属をリュックサックに詰め込んでおり、タオルで口元を隠していても嬉々とした表情を浮かべている事がわかる。


 早い話が火事場泥棒だ。虫唾が走るけど今のアタシにはこんな奴を相手している暇はない。とっととクリスを探しに……。


「なッ!」


 けれど奴はアタシたちの存在に気が付いてしまった。そしてショーケースを割るのに使ったであろうネイルハンマーを装備し血走った目でこちらを睨みつける。


「見たなあ~!? 見ちゃったねぇ! ね、ね、ねぇ!」

「チッ」


 まったくこんなところで時間を食っている暇はないんだけど。でも戦わなければいけないようだ。


「どろぼうは……」

「もふもふ君、お前は、」


 アタシは戦いが苦手なもふもふ君を後退させようとする。だが彼はメラメラと闘志を燃やし、


「どろぼうはだめよー!」


 と叫ぶと一瞬で姿が消失し、その直後にとてつもない爆音が聞こえた!


「へ?」


 呆気にとられたアタシは急いで火事場泥棒の姿を確認したけど、さっきまであいつが立っていた場所には誰もいなかった。


 そこに小さな何かの破片がパラパラと落ちる。唖然としながら見上げると火事場泥棒は天井にめり込んでいて、しばらくしてから落下し床に顔面をビタン、と叩きつけたのだ。


「も、もふもふ君、お前こんなに強かったのカ?」

「うん。おもいだした。ぼくはとってもつよかった。ぼくはおみせとしょうひんをまもらないといけない。それがぼくのしごとなんだ」

「ちー!」


 そしてもふもふ君はまたしてもバシュン、と消滅しその辺にいたハザマンダにアッパーカットを食らわせ一撃で仕留めると、すぐにまた瞬間移動をしてどこかに消えてしまった。


 ボコスカボコスカ! キュイイイイン!


「オロロロ!?」

「ギョエエエ!」


 姿が見えなくなってもギャグアニメのような破砕音と怪物の悲鳴が聞こえる事から無双をしているのだろう。煙の向こう側ではどのような惨劇が繰り広げられているのだろうか。あと最後のドリルのような音は何だ?


「まったくすげぇもふもふだナ。お前はもふもふの皮を被った悪魔ダ」


 その異次元の強さにアタシは呆れて笑ってしまったけれど、すぐに自分のすべき事を思い出して我に返る。


 今はクリスを探さなければいけない。火の手はさらに勢いを増している。時間もないし早いところ助けないと!

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