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1-12 小豆島を目指して

 さて、僕たちは今瀬戸内エリアの海沿いにいる。


 岡山の南部、見知らぬ港町の潮風は心地よく、バスから降りた僕は胸いっぱいに澄んだ秋の空気を吸い込んだ。


 町を訪れた僕たちはひとまず観光客用の土産物屋を活動の拠点にし、とりあえず周囲の風景を眺める。


 それにしても何とも殺風景だ。終末だという事を考慮してもあまり発展しているようには見えない。


 岡山は鳥取のお隣さんで最も身近な都会だけど郊外はこんなものなのだろう。僕はその現実をすんなり受け入れて取りあえずのんびりしていた。


「うむむ、いい仕事をしています。この壺をお土産にもらっていきましょうか」

「あんまりガラクタをバスに積まないでね。そうやってすぐ色んなものを拾って来るんだから」


 ナビ子ちゃんはお土産屋さんで見つけた焼き物を手に取り、鑑定士の真似事をしてくるくる回し調べている。


 ロボットの彼女なら容易に真贋を見抜けられるだろう。美術的な評価は難しそうだけど。


「ガラクタじゃないデス。旅先での思い出を手に入れるのは大事デス!」

「そっかあ。僕はそういうのにこだわらないけどね。ナビ子ちゃんって木刀とかペナントとか買うタイプの人種なの?」

「そもそもワタシは人ではありませんが、世界滅亡前に生きていたならきっと買っていたでしょう。みのりさん、お土産に役に立つとかそういうものを求めてはいけませんよ!」

「はは、そっか」


 ナビ子ちゃんは熱心にお土産論を展開し僕は適当に受け流す。まあ価値観は人それぞれだよね。それとも僕がドライ過ぎるだけなのかな。


 いや、そうでもないか。僕はこの景色を見て多少なりとも感動している。それは疑いようのない事実だ。


「僕は取りあえず、こうやって素敵な風景を見て美味しい空気を吸う事が出来れば一番かな。インスピレーションがどんどん湧いていい詩が書けそうだよ。思い出が必ずしも形のあるものである必要はないとは思うけどね」

「チッチッチ」


 だけど僕のその発言に彼女は不敵な笑みをして指を振った。


「美味しい空気は確かに良い物デス。そのご意見も至極真っ当で素晴らしいとは思います。しかしそのようなものではお腹いっぱいになりません! ワタシがなぜここにやってきたのか、お伝えする時が来たようデス!」

「はあ。それは一体何なのさ。どうせ食べ物関連だろうけど」


 僕はもったいぶるナビ子ちゃんに付き合ってあげる。考えるよりも先に食欲で動く彼女はそのすべての行動が食べ物に繋がっていると言っても過言ではないのだから。


「そう、ワタシはオリーブオイルを入手しにやってきたのデス!」


 案の定、ナビ子ちゃんの目的は食べ物だった。本当に彼女はわかりやすい。


「ふーん。とすると小豆島しょうどしまにでも行くの?」

「はい、そのつもりデス!」


 小豆島は香川県の島で瀬戸内海に存在する割と大きな島だ。しかし当然ながら移動には船が必要であり、訪れるにはその手段を見つけるところから始めないといけない。


「うーん、でも海を渡る必要があるしなあ。一応この辺りにもオリーブ畑はあった気もするけどそっちじゃダメなの?」

「ええ、それはワタシも把握しています。ただ損傷はしていますがワタシのメモリーにはかつてあの島を訪れた記録があるので、昔の事を思い出すためにも行ってみようかなと」

「成程。なら何とかして行かないとね。ナビ子ちゃんの思い出を見つけるために僕も手伝うよ」


 どうやら今回は食べ物の事だけではないらしい。だったら友達として頑張らないとね。けれどナビ子ちゃんは少し苦笑してしまった。


「まあ実際、本音ではオリーブが欲しいだけデスけどね」

「うん、知ってるよ」


 僕はいつものように笑ってナビ子ちゃんにそう返事をした。さて、今日もゆるゆると頑張るとしますか。

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