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5-9 愛の餃子と放送事故

 イベントの途中、突如として画面に暗雲が立ちこめ不穏な空気が流れる。そしてハママツの色違いの料理人が現れた!


『クックック、茶番だな!』

『き、貴様は!』

『ミ、ミヤザキ先生! 何故前作で死んだはずのあなたがここに!』

「前作で? というかウツノミヤもハママツもこの人もデザイン使い回しだよね、色変えただけで」

「昔のゲームなんてそんなものさ」


 僕はなによりもこんなゲームに前作があった事に驚いてしまう。実は人気作品だったのかな。


『戦争をするように暗躍し、共倒れになったところで私が天下を取るはずだったのに使えない駒め!』

「ううむ、これはお家騒動なのデスか。衝撃の展開デス!」

「でも宮崎の餃子も最近注目されてるよなー」

「いや置いてけぼり感がパナいよ」


 僕は小休憩を取るためたんぽぽコーヒーを飲んでツッコミに疲れたのどを潤す。ラスボス戦だしどうせなら勝ちたいからね。


『俺たちは騙されていたのか……! 最早お前は俺の師匠ではない! このシュウマイ野郎め!』

「え、どゆ意味?」

『なんだと? 私を愚弄した罪は万死に値する! 地獄の大釜の油で揚げられ春巻きになるがいい!』

「いやだからね。シュウマイも春巻きもこの世界ではとてもひどい悪口だという事はニュアンスでわかるけど」

「香川に置けるうどんとそばの対立みたいなものなのでしょうか? そばを食べる人は異端者としてフルボッコにされるそうデス」


 とにかくラスボス戦スタートだ。僕は気合を入れたけど、ヒロは序盤で入手した塩コショウを装備し一気に間合いを詰めた!


「ホレホレ!」

『ぐッ!?』

「ありゃ、怯んだ」


 ヒロが塩コショウを使うとラスボスは怯んでくらくらしてしまう。その隙を逃さず僕らは通常攻撃の集中砲火を浴びせた。


「このゲームでの最強装備は塩コショウなんだ。一面でしか拾えずダメージは1しかないが、ボスキャラだろうと確実に怯ませる事が出来る。その隙に仲間でボコれば、わかるよな?」


 その時のヒロはとても悪い顔をしていた。本当に彼は騎士道精神の欠片もない素敵な親友である。


「うわあ、主人公とは思えない」

「お前って昔から躊躇なくハメ技とか使うよな」

「勝てばいいんだよ!」

「いいんでしょうか?」


 皆は呆れながらもひたすらボコる、ボコるったらボコる。塩コショウからのボコボコ、塩コショウをぱっぱとボッコボコ。野菜炒めになりそうなほどヒロはこれでもかとラスボスに塩コショウをかけまくった。


『ウボアーーー!』

「あ、死んだ」


 そんなハメ技コンボで、塩コショウの使用回数が残り少なくなったところでやっぱりあっさり撃破してしまった。ラスボスなのにノーダメージで。


『フッ……強くなったな……我が息子よ……よくぞ父を超えた……』

「この勝ち方で認めてくれるの?」

『先生……そんな……あなたはやはり私の父だったのですか! 私は何という事をしたんだー!』

『お前はこれからも美味い餃子を作れ……! 愛の餃子を作るのだ……!』

『父上ェ!』


 そして父をこの手で殺し、男泣きをするウツノミヤの肩にハママツはそっと手を置いた。


『泣くな。俺の餃子を食って強く生きてくれ。これからは餃子を愛する者同士、共に手を取り生きて行こう!』

『そうだな。愛してるぞ、ハママツ! 俺と結婚してくれ!』

「え?」

『もちろんだ、ウツノミヤ! 俺の愛を受け止めてくれ!』

「ええ?」

『『オウイェエエエス! ファンタスティィィィックッ!』』

「えええ!?」


 そして野郎どもが暑苦しく抱き合ったあと、画面は暗転しハートマークで埋め尽くされる。


 理解が追い付いていない僕を無視してとてもいい声なテノールボイスの第九とともにエンドロールが流れた。放心状態で見終わると、最後の画面には赤ん坊を抱いた素敵な笑顔のガチムチ料理人がツーショットで映っていたんだ。


「え……いや、色々ツッコみたいけど、どうやって産んだの?」

「生命の神秘じゃないデスか? まあ色んな愛の形がありますからハッピーエンドという事で」


 ナビ子ちゃんは優しい顔をしていたけど僕はそんな言葉しか出てこなかった。困惑しているのはつるぎちゃんも同じようだ。


「これってこんなにすごいゲームだったんだな……」

「このエンディングでこのゲームは伝説になったんだよ」

「うん。そりゃなるだろうね。このぶっ飛んだ終わり方なら。まあゲームとしてはそれなりに作り込まれているけど。エンディングだけじゃなくて諸々がそれ以前の問題だからね、男同士とかそんな事がどうでもよくなるくらいに」


 脳のキャパをオーバーした僕は撮影中である事をようやく思い出し、カメラ目線でどうにか引きつった笑顔を作った。


「えー、えーと! それではみなさん、良い終末を」

「みのりさん? まだもうちょっと収録しましょうよ。無理やり終わらせるのは駄目デス」

「察してよ、このCHAOSを。人類には何も出来やしない」


 僕は無理やり収録を終わらせようとしたけどナビ子ちゃんは逃がしてくれない。ああもう、どうやってこの混沌をまとめればいいのかな。

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